表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ 避難

初めまして、夏野と申します。

よろしくお願いいたします。

ご意見、ご感想お待ちしてます。

 そのサイレンは突如僕の頭に響いた。僕はその音のするほうへ顔を向け、窓から外を見ると立ち止まって僕のように空を見ている人たちがいた。そのあとスピーカーから聴き取りにくい声がした。


『避難警報です。避難警報です。付近の方は至急避難して下さい。避難警報です。ーー』


 突如避難しろと言われても何をすればいいのか分からなかった。僕がテレビをつけるとテレビに映るアナウンサーがしきりに避難して下さいと言っていた。僕はこの緊急事態に危機感がしめせず、もう一度窓の外を見た。そこには僕と同じように惚けている人や電話している人ばかりで危機感などまったくなかった。

 その時遠くのビルから煙が立ち上り、少し遅れて爆発音が街に鳴り響いた。

 それに続くようにいくつもの煙が見え出した。


 人々の反応は速かった。車は急発進し、タクシーには人が群がった。車を持たない人は駆け出した。僕は財布と携帯を掴み取ると、玄関の扉の横にある棚からリュックを取り出し外に出た。

 マンションを飛び出すと目の前を軍の車が横切った。なにが起きているのは分からない。テロリストかもしれないし毒ガスかもしれない。すると今度は空を武装したヘリが飛んでいった、煙は近くまできていた。ヘリは煙の近くにつくとガトリング砲の音がしだした。小さく戦車の姿も見える。

 戦争だ。そう思った僕は煙から遠ざかるようにして駆け出した。戦争を経験したことはない。銃なんて触ったこともない。だけど聞こえた銃声と煙からは死を感じた。





 どのくらい走ったのかは分からない。ただ気づいたときにはあの嫌な音はなくなっていた。僕は走るのをやめ、ゆっくり歩いた。あの煙が追ってくるようすはない。

 数分歩くと僕のように歩いている家族を見つけた。なにも持たず歩いている姿はきっと僕のように忙しいで家から飛びたしたのだろう。話しかけると疲れきった顔の父親が言った。

「君はサンフランシスコから来たのかい?」

「ええ。そちらもですか?」

「そうさ。アナウンスが聞こえたと思ったらいきなり爆発音が遠くでしてね。今日が休日でよかったよ」

そう言って彼は息子を見た。

「これからどこへ向かうんです?」

僕はたまらず聞いた。もしなにか知っていることがあれば教えてほしい。

「さっき他の人から聞いたんだがこの先にある学校が避難所になっているらしい。そこへ行こうと思っている。君も一緒にくるか?」

「本当ですか?助かりました」

よかった。人のいる場所なら安全だ。彼は息子の手を握る女性に「彼も一緒に行くそうだ。」というと、彼女はこちらを見て「よろしくお願いします。」と微笑んだ。

「君、家族はどうしたんだ?途中で別れたのか?」

 その言葉ではっと息を飲んだ。携帯を取り出すと案の定着信履歴が実家からの着信でうまっていた。すぐにかけると母の声がした。

「もしもしかあさん?」

大丈夫だよと言おうとしたが怒声でそれどころではなかった。

『なんで電話に出ないの!心配したじゃない、いまどこにいるの』

「ごめんかあさん。いまはサンフランシスコの郊外にいるよ。ここは全然静かで安全そうだよ。詳しい場所はまだ分からないけど近くに学校があって避難場所になってるみたい。そこに着いたらメールするよ」

『本当に心配したのよ。ほんとは今すぐにでも連れ戻したいけどそっちに行く道はどれもダメなの。ごめんなさい』

「大丈夫だよかあさん。心配しないでまた連絡するよ。じゃあね」

電話を切ると男から、「お母さんを心配させるなよ」と言われた。


 避難所には思った以上に人がいた。てっきりこの近くの人は避難していないと思ったが、人がいるところの方が安全と感じるらしく、怪我人の手当てなどをしていた。

 避難所に入った僕は親子と別れ、知人がいないか探したがそれらしい人はいなかった。探している途中で目についたのはラジオを聴いている人だった。何人かに声をかけたが、なにも聴こえないらしい。テレビも映らないと聞いた。噂によると、軍による妨害電波が飛んでいるらしくそのせいで通信ができないらしい。

 おかしい。さっきまで電話ができていたのになんでテレビがつかないんだ。僕は携帯を開き、実家へかけようとしたが繋がらなかった。もしかしたらここら辺の地区だけで起こっているのかもしれない。それかさっきまではその妨害電波が弱かったのだろうか。

 その夜は寒かった。避難所では暖かい飲み物と軽食が渡された。体育館では一人一枚毛布が手渡され、少しでも暖まるようにと近くの人と集まって寝ることになった。リュックは枕として頭の下に置いた。これなら誰かが触ってもすぐに気づくだろう。

 僕はなかなか寝付けなかった。どうしても今日の出来事が気になってしまったからだ。親にはもう自分は安全なところにいると伝えたが、きっと心配しているだろう。

だがそれよりも気にかかっていることがあった。

 それはあの爆発と戦車やヘリのことだ。電波が繋がるところと繋がらないところがあるのも変だが、軍が市民が退避しきるのを待たずに攻撃を開始するのもおかしい。きっとあれはテロなんかよりも恐ろしいことなんじゃないか。そういう考えが頭から離れなかった。


 いつ眠りについたのかは分からない。気がついたら朝だった。体育館のまどからは陽射しがさしこみ、昨日のことが現実に起きたことだとあらためて感じた。

 朝食は飲み物とパンが配られペットボトルが一本渡された。どうやら私たちが食べているものは近くのスーパーから持ってきているらしい。

 この後はどうしようかとあたりを歩いていると昨日の親子に出くわした。

「おはようございます」

「おはよう。昨日は眠れたかい?」

男は昨日の疲れ顔が嘘のようににこやかだった。

「ええ、まぁ」

「とにかく寝れるところが見つかって良かった。私たちは何日間かここにいようと思ってるが君はどうするんだ?実家に帰るのかい?」

「いえ、僕も当分ここで過ごします。いきなりあんなことが起こってよくわかんないですし、電話やテレビもつかえない状態じゃ迷子になった時に困りますから」

「きっと2、3日でテレビもつくようになるだろう。そうしたら私たちもこれからのことを考えるつもりだ」

そういって親子は歩いていった。

 昼過ぎ、僕がグラウンドに出てそれを見上げていると、校門から何人かの子どもたちが入ってきた。ざっと20人はいるだろう。

「すいません。あの子どもたちはどうしたんですか?」

近くの水道に座っている女性に聞いた。

「あの子達かい?わたしの聞いた話だと近くの小学校の子らしい。昨日も来たらしくて歌を歌ったみたいだよ。ここらへんの学校はもう授業ないのにえらいね」

そういうと女性はポケットからタバコとライターを取り出し火をつけた。タバコの紫煙が空へ登った。その光景は昨日の煙を思い起こさせた。

「みんな住む場所がなくなって環境も変わって動揺してるんです。いい気分転換になりますよ」

「そうだといいけどね。わたしはタバコがあれば充分だよ」

彼女は吸い殻をすて新しいタバコに火をつけた。


 すると、子どもたちの後ろから車が二台入ってきた。軍用車にしか見えない。車は校門に入ったところで止まり中から7人の軍人が降りてきた。

 彼らが軍人だとわかるや否や人が押し寄せ、彼らの困りきった顔しか見えなくなった。彼らのうちの一人は小太りの男性と話していた。ここの校長だろう。軍人は手に持っているボードに何かを書きながらしゃっていた。男性のほうも必死でなにかを伝えているのがわかる。

「君はアメリカ人なのかい?」

女性はいつの間にか横にきていた。手にはまだ吸っていないタバコが握られている。

「はい。けど両親は日本人です。なに人だと思いました?」

「そうだな・・・・・・。アジア系としかわからなかったな。わたしにとってはみんな顔が一緒なんだ」

「まぁそうですよね。僕は小さい頃日本人に住んでいて14歳になったときこちらに移り住むことになりました。でもアメリカにはしょっちゅう来てたので困りませんでしたけど。こちらに来てからは日本に頻繁に行くようになりました。」

「へぇ、じゃあ君は英語と日本語両方話せるのかい?」

「話せますよ。といっても英語は日常で普通に使える程度ですけど。やっぱり難しい話しだとわかりません」

「じゃあ何か機会があったら日本語教えてくれよ」

 彼女は立ちあがると吸殻を投げ捨て、校舎の中へ去っていった。

「ニューオーダー」を読んでいただきありがとうございます。

まだまだ序盤ですので何が何だかわからなかったかと思います。

この作品の世界観は、自分でいうのもなんですがかなり練っているつもりです。

読み進めていくうちに設定がわかるかと思います。

末永くよろしくお願いします。

ご意見、ご感想お待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ