6:嫉妬
そのサイトは相変わらずの繁盛ぶりで、最初の時と同じように、メールがひっきりなしに届いた。
虚しいメールのやり取りをしたがる寂しい人は、相変わらず大勢いるようだった。
何通かをちらっと読むと、距離感の読めていない、ヤリたい目的のメールが大半で、私はすぐに気が重くなった。
とりあえずすぐには返信をせず、何通か来たメールのうちから相手を選ぶことにし、時計を気にしながら化粧をする手を早め、駅に向かって走った。
学校に着くと、ケータイには昭仁からのいつものモーニングメールが届いていた。
「おはよう。今日は学校遅刻してない?文化祭の練習頑張ってね。」
定型文のような昭仁のメールに、私は優しい彼女を偽ってメールを返し、友達との会話に没頭した。
そのままおざなりな昭仁とのメールを続け、6時間目が終わり、学校が終わった。
家に帰ると、夜にバイト仲間とご飯を食べに行くための準備を始めた。待ち合わせギリギリの時間に準備が完了し、待たせてはいけないと急いで出かけようとしたその時、ケータイが震えた。
光るランプの色は、昭仁に設定した、青だった。
「夜、何時でもいいから電話ください。」
何かいつもと様子が違った。
仕事で何かミスでもあったんだろうか。
いつも弱音なんか吐かない昭仁だったから、何か緊急の用事なのかと思い、折り返し、すぐに電話をかけた。
何回もコールしないうちに、すぐに昭仁は電話に出た。
「もしもし。」
「どうしましたか?」
優しい彼女の仮面をかぶり、優しく相手に諭すように問い掛けた。
「どうか、しましたね。」
昭仁の声は、聞いたことのないくらいに沈んでいた。
「当ててみて。」
怒るわけでもなく、ただ寂しくつぶやくように、昭仁は言った。
「夜、私がバイトの男の子とご飯を食べに行くことですか?」
「違う。」大学決まったら、海外に行くことですか?」
「違う。」
昭仁の声のトーンがどんどん沈んでいった。
「じゃあ、なんですか?」
私は、知らないふりをしながら、答えを知っていた。
相手から、その答えが言われないよう望みながら、返答を静かに待った。
「何で、書き込んだの?」
間を開けてようやく答えた昭仁の声は、今にも泣きそうだった。