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信じれるまで  作者: 冴子
5/7

4:初デート

私は車に乗り、運転する昭人の顔を観察した。

昭人の見た目は25、6ぐらいで、背は170後半ぐらい。

細身で女受けのよさそうなその顔は私も素直にカッコイイと思った。

「写真と実物じゃ全然違うね」

慣れた手付きで車を運転しながら昭人は言った。

「違いますか?」

「全然違うよ。写真じゃ大人っぽかったけど、実際会ったら全然高校生だなって思ったよ」

誉め言葉のつもりなのか、相手の意図がよく読めないまま、返事を返す。

「がっかりしました?」

「全然。実物の方がかわいいよ。」

その慣れたお世辞で、昭人はだいぶ女慣れをしてるなと思った。

「聞いてもいいですか?」

「いいよ。」

「昭人さんは今まで何人の人と付き合いましたか?」

その質問の後、昭人の表情が微かに変わった。

「…正直に答えた方がいい?」

「はい。」

昭人は、少し間を開けて静かに答えた。

「2、30人かな。」

一般的なのかもしれないが、私はその数に驚いた。

虚しい意味の無い遊びを、そんなに回数こなすことに、何の意味があるんだろう。

「多いですね。」

「まぁすぐ別れたりしちゃうからね。」

相変わらず昭人は淡々と答えた。

「何でですか?」

「俺が浮気したり、向こうに浮気されたり、突然振られたり、音信不通になったり。」

私は、運転を続けながらそう無表情に答える昭人が、とても哀しく見えた。

「虚しくないですか?」

ふと出た、私の本音の質問だった。

「まぁ俺は恋愛なんてそんなものだと思ってるからね。誰と付き合っても終わりが見えちゃうんだよ。」

「結婚とかは?」

「俺、結婚願望とかないから。だから付き合ってる瞬間が楽しかったらそれでいいんだよ。その瞬間だけ満たされてたらね。」

瞬間だけ。

どこか私の考えと似ている。

私も瞬間だけ楽しかったらそれでよかった。

でも、昭人は私とはどこか違う。「寂しいんですか?」

昭人は、何でこんなに足りない部分を無理矢理にも埋めようとするんだろう。

「どうだろう。寂しいのかもしれないけど、いつか終わるって分かってても、終わらない相手を探してるんだと思うよ。」

寂しそうに、はにかんだような笑顔で昭人は答えた。

「いるのかな。」

「分からないけど。でもそういう点じゃ冴子ちゃんは好きになっちゃいけない気がする。」

昭人は静かに言い、私は返事に戸惑った。「何で?」

「多分、好きになっちゃうから終わりの時が辛そう。好きじゃなくても付き合えるけど、そういう相手は別れるときが楽だから気軽に付き合える。でも好きになった相手と別れが見えたら辛いから。」車のエンジン音が、静かに響く。

この人はどこか私に似ていた。

「辛いかな。」

「多分ね。」

「でも別れないかもしれない。」

自分でも意外な一言が口から飛び出した。

「どうかな。今まで別れなかったことある?」

初めての昭人からの質問だった。

「無いけど、瞬間が楽しかったらそれでいいなら、続いたら儲けもの。そういう考えで付き合っていったらいいんじゃないかな。少なくとも、私は好きになった人ととも、その瞬間はちゃんと恋愛してます。それに対して後悔したことはありませんよ。」

昭人は何も言わなかった。

ただ静かに時間が流れて、不思議とそれが心地よくて、多分昭人もおんなじように感じてたんだと思う。

「じゃあ、付き合っちゃわない?」

昭人の口調が、最初の明るい口調に戻った。

「誰が?」

突然の申し出に、私は驚いた。

「俺と、冴子ちゃん。」

昭人は相変わらず笑顔のままで、恋愛慣れしているのが伝わってきた。

私は車の窓から外を見つめた。

まだ朝の陽射しがまぶしい。

「いいよ。」

私は表情を変えずに淡々と返事を返した。


この時の私は、多分この人とは3ヶ月もたないだろうと思ってたし、すぐに別れると思ってた。

今から思えば、この時はまだ知らないことだらけの、恋愛初心者だったんだろうなと思う。

ただ一つ言えるのは、軽い気持ちだったとしても、昭人との付き合いを了承していてよかったということ。


こうして私達は、出会って数時間、付き合うことになった。

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