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信じれるまで  作者: 冴子
3/7

2:メール

学校に行って、バイトに行って、家に帰って勉強をする。

受験生にもなってバイトなんか…と友達に言われながらも生活費を稼ぐにはバイトをするしか無かった。

遊び人の母親に、このことだけは感謝出来ない。

弟もまだ中学生で、バイトをして家計を助けることが出来るのは皮肉にも私しか居なかった。

しかし辛いとも嫌だとも思わない。

これが私の変わらない日常なのだから嘆いていても仕方ない。

その合間をぬって、昭人とはメールを続けていた。

相変わらずお互いに敬語で、名前に

「さん」をつけながらの他人行儀な関係だったけど、それが私には心地よかった。

昭人は私より一回り以上年上の31歳。

彼女と別れて3ヶ月らしい。

昭人からのメールは常に長文で、読むのが面倒になることもあったけど、私からのメールが途絶えても次の日には忘れたように昭人からのメールが届くので、なんとかメールは続いていた。

メールを始めて一週間。

いつものようにバイト終わりにメールを見ると、受信ボックスにメールが入っていた。


「バイトお疲れ様。ところで冴子さんは受験生ですよね?バイトなんかしてて大丈夫なんですか?」


このメールに私は返信を戸惑った。

ただのメル友にどこまで喋っていいものだろうか。

余り親しくも無い相手に他人の家庭の話なんかされても重いだけじゃないんだろうか。

そこまで考えて、私は考えるのを止めた。

話を振ってきたのは向こうだし、それで引かれるようならメールを止めてしまえばいい。

私と昭人を繋いでいるのは所詮、この淡白なメールでしかないんだから。


私はあまり深くは触れず、母親が遊び人で父親は事業に失敗し、私が生活費を稼いでいることを言った。

メールを送り、服を着替え、帰る準備までに約10分。

その間に早くも昭人からの返信が届いていた。

どうせ当たり障りのない励ましの言葉なんだろうなと思いながらメールを開く。

でも内容は思ったのとはだいぶ違った。


「俺も似たような境遇です。」


意外だと思って詳しくメールを読めば読むほど、昭人と私の境遇は似ていた。

お互いの、誰にも分からなかった部分の話が、常に私達の間では共通で、私はなんとも言えない不思議な感じだった。

まぁ世の中日本には1億3千人。

こんな人もいて当たり前なんだろうなと思い直し、メールを読み進めていくと、最後に1つ、質問が書かれていた。


「冴子さんは恋愛をどう思いますか?」


私は素直に、私の理解されないだろう持論を伝えようと思って、メールを打った。


「恋愛には永遠性は無いし、所詮は終わりあるものだと思います。」


打ち終わり、いつもながらの素早い返信を待っていると、すぐにケータイが震えた。

「俺と同じ考えでビックリです!良かったら今度会いませんか?」


その返信に、私は結局話を合わして会いたいだけの雰囲気を感じとり、地雷を踏んだなぁと思った。

それでもシフト表を見て、休みの日を探す。


「夏休み入ってからなら空いてます。」


そう返すとケータイはすぐに震えた。


「了解です。夏休み、迎えに行きます。」


私は、ああ面倒なことになったと返信後すぐ後悔した。

でも空いてる日を教えてしまったあの時の私は、年も住所も離れたこのメールの相手に何かを感じたんだと思う。


デートの日取りは1ヶ月後に決まった。

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