2.5次元恋愛~そんなことって本当にあるんですね~ vol.2
2.5次元恋愛~そんなことって本当にあるんですね~ vol.2
すっごいつくねとゆたーりさんの日常は一般的な世間の日常からはかけ離れている。
ゆたーりさんの仕事は時間帯が読めない。入った仕事を黙々とこなしていく音楽関係の仕事だということもある。朝帰ってきたと思ったらSkyphoneで通話しながらおやすみーと昼まで寝て次の仕事へと旅立っていく。はたまた帰ってきて1時間ほどで仕事に出発する日もある。かと思えば今日は夜からだーとか言う日も。大概すっごいつくねが朝おはようの挨拶をスマホ向け無料通話ソフト(Skyphone的なやつ)LinKで送り、そこから「すかいぽしませうー」って言う感じに朝が始まる。
ここで疑問に思った方がいると思う。すっごいつくねは普段何してるの?
実はすっごいつくね、ぶっちゃけニートである。正確に言えば厚労省の定めによるとニートではないんですけどね。すっごいつくねは所謂躁うつ病で精神障害者である。これは今に始まった話ではなく、病歴としては中学生の頃に精神科に連れて行かれてからなので、10年も経つだろうか。それでもすっごいつくねは大学を卒業するとまではこぎつけた。しかし、就職もできず、バイトをしても施設で就労しても体調の不安定さから結局続かず今は通所施設に行ったり行かなかったりといったところだ。
つまるところ昼も夜も暇なことが多いつくねはゆたーりさんが帰ってくるタイミングを見計らって起きては通話をしているというわけである。
そんなすっごいつくねとゆたーりさんは通話をしているときいつも2.5次元動画を見ている。ゆたーりさんが大好きなゆったりゲーム実況動画を二人で見ながらまったりしているのが常である。ゆたーりさんは「付き合ってるのにこんなんでいいいのかなー」ってよく気にしているが、私としてはゆたーりさんの声が聞けるだけでわりと満足している。ゆたーりさんと通話できる時間は少ない。それはゆたーりさんの仕事がとてつもなく忙しいという点もあるし、とてつもなく忙しいゆえに帰ってきた時も疲れている。だからゆたーりさんの声が聞けるだけでも、寝息が聞けるだけでも貴重な幸せな時間なのである。
え?じゃあどうしてすっごいつくねはゆたーりさんと仲良くなったの?
それはすっごいつくねが大学最後の年、ゆたーりさんが30歳のときのことである。すっごいつくねとゆたーりは2.5次元動画のライブ配信のとあるジャンルで知り合う。それはネット演劇である。Skyphoneを用いて、共通の台本を読み、ライブ配信で上演するという2.5次元動画のライブ配信でもコアなジャンルである。
すっごいつくねはネット演劇を始めたばかりで、色んな配信に凸(Skyphoneをかけて配信者と交流したりすること)をしてネット演劇を楽しんでいた。そんななかで見つけたのは特殊な配信。「配信主は音響など裏方に回りますので、演者様のみ募集」というものだった。これがゆたーりさんの配信である。ゆたーりさんは普通の人が募集してもこない時間帯を好んで配信し、配信中はBGMとコメントのみという徹底したスタイルで配信していた。このジャンルのリスナーから見たら、不思議な配信である。が、しかし、すっごいつくねはネット演劇初心者でそんなことは知らず普通にSkyphoneIDを聞いて劇に参加した。どうもゆたーりさんは配信が終わって裏に回ると話し始めるということがそのときわかった。ゆたーりさんはサクサクと劇のまとめ役をし、裏でBGMを用意し、上演配信のときのみ最初と最後だけ話すといった感じだった。
このままだとただ演劇やって、はいさようなら!またの機会があれば!といった感じなのだが、意外にもその時ゆたーりさんに気に入られたようで「劇始めて二週間なんですー」っていうつくねを指導してくれたのがことの始まりである。
私はネット演劇始めたてで、ゆたーりさんみたいないい声の人、後に演技も上手いと発覚するのだが、そんな人に指導してもらえるなんて夢のようだった。そしてその時に私が発した第一声「ゆたーりさんみたいなお姉様に教えていただけるなんて感激です!!」……ゆたーりさんはその当時ハスキーなお姉さんかな?って感じの声をしていた。私は女性だと思っていたのだ。完璧に。そして返ってくるチャット「私、男です」。そして返すチャット「え?ほんとにですか?」。ゆたーりさんは本来高めの声が地声ではあるが、演技では所謂ロリボイスからかなり低い熱血バトルものの主人公みたいな声まで出せる人だったのだ。これを2.5次元動画では両声類、多声類という。
そんな誤解もありながらもその時期はゆたーりさんの仕事が忙しくない時期で毎日のように通話やネット演劇をしていた。ゆたーりさんの仕事は依頼がたくさん入ってる時こそ毎日食べず寝ずに働くような仕事だけども、仕事の依頼がこなければ休みが多いときもあり、その時期はわりとゆったりしていることが多いのだ。要はその時期に知り合ったわけである。