月が綺麗ですね
遠くで光る江の島の灯台。ぽつりぽつりと見えるコンビニエンスストアや家の光。日が暮れて間もない海沿いの住宅街を照らしている。
しかし、それよりも街を眩しく照らしているものがあった。それは、雲の隙間から見える月の光。そして、その光を歓迎しているかのように秋の虫たちが明るい夜空に楽譜を描き、歌っている。
時折、風が道端の金木犀の香りを運ぶ。その甘さが胸をくすぐる。切なくて、懐かしいような、不思議な気持ちだ。
ふと隣に目をやると、月明かりに照らされている横顔が見えたような錯覚に襲われる。声をかけても返事がなく、触れようとしても手には空気を切る感覚が虚しく残るだけ。
「月が綺麗だね」
そんなことを囁かれた満月の魔法仕かけの夜は夢だったのか、幻か。どちらにせよ、もう戻らないということには変わりはない。
にわかに月が雲に隠れた。それと共に、記憶の箱は閉ざされた。
そして、ふと明日はテストだという現実に引き戻された。このような月を見ないなどひどく勿体ないような気がしたが、私は、仕方がなく再び勉強机に座り、問題集を開いた。
こんにちは。九谷友理です。
『月が綺麗ですね』を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今日、テスト勉強中に空を見上げたら月が本当に綺麗だったので、思わず書いてしまいました。
感想など頂けたら嬉しいです。
これからもどうぞよろしくお願い致します。