表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

テスト投稿

作者: 暗根

----帝国 皇帝の間----


普段人影の少ない皇帝の間に4つの人影があった。


「おはよう。よく眠れただろうか?」


ゆっくりと歩いてくる人物こそここの皇帝デュアダールヘクロその人であった。


「まあまあかな。…もう出発だろ?」


少年が…ゴウがそう切り返す。


「ああ。転移門の準備はできている。あとはそなたたちの準備ができ次第いつでも行けるだろう。」

「そうか。ならさっさと行こうぜ。」


そういきり立つゴウを女…クグノが止める。


「待つのじゃ。イリシアが居らぬ。」

「あ…?そういえばさっきから姿がねえな。」

「どこ行ったのかのう…ケリー?見ておらんか?」

「いや起きてから一回も見てませんね…」


と少女…ケリーが返す。


「しかたねえ探すか。ここまで来て3人でってのもおかしな話だしな。」


とゴウが言った瞬間、広間へとつながる大扉が音を立てて横へと開き――


「イリシア!どこに行っておったのじゃ!」


そこにいた少女…イリシアにクグノが駆け寄っていく。


「う…」

「どーしたんじゃ!具合でも悪いのか?」

「ち…ちが…早く…」


イリシアが一際荒い息を吐きながら――その腰の銃へと手を駆けた。


「っ…!クグノ!離れろ!様子がおかしいぞ!」

「え…?」


カチャリと乾いた引き金の音が響き―――


「…強制戦闘状態へ移行。対象を確認。…殲滅します。」


一瞬の静寂の後、辺りを吹雪が…イリシアの弾幕が支配した。


---------------------------------------------------------


「畜生!イリシア!どうしたんだよ!しっかりしろ!」

「…」


氷の弾幕をかいくぐりゴウが叫ぶがイリシアの目は人の者でない青に支配されている。

その眼は早速何も見ていない。


「くそ!こんなとこで時間を取られてる場合じゃねえのに…!」

「…ゴウ、クグノさん。先行って。私がここを食い止めるから。」

「!ケリー何言って…」

「何言ってじゃないわ!私たちが今からなにするか!忘れたの!」


ケリーがマジックシールドを展開し、氷の弾丸を一時的に押しとどめる。


「ほらっ!早く!早く行って!」

「…ケリー」


ゴウが素早くクグノを手を掴んだ。


「クグノ!行くぞ!」

「何を言うかゴウ!イリシアを助けるんじゃ!」

「俺たちが何しに来たか忘れたか!行くなら今しかない!」

「ふざけるでないわゴウ!皆で…皆で行くんじゃ!」

「ケリーを信用しろ!仲間だろ!…行くぞ!」


クグノをゴウが転移門へと引きずりこんだ。


「嫌じゃっ!嫌じゃああぁぁぁ!イリシア!イリシアアアアア!」

「…頼むぜ。ケリー。」


「…任せなさい。」


---------------------------------------------------------


ゴウ達が光となって消えていくのを私の目でしっかりと確認する。

…本当は別れたくはない。本当は死地へと飛び込む彼についていきたい。

…でもそれは叶わない。否、叶えてはいけない。

なぜなら、彼らにはやるべきことがあるから。彼の願いのためにも…やらねばならぬことがあるから。


「…ターゲット消失…変更。」


だったらば、私は彼らの、彼のために私のすべきことをするだけ。

――なら。今やるべきことは一つだ。


「イリシアさん!さっさと正気に戻ってもらうわよ!召喚!双剣…緋炎・蒼天!」


私の手に、剣の重みが乗る。

私の愛剣。敵を撃ち滅ぼすもの。障害を排除するための物。

…数日とはいえ、一緒に過ごした相手。敵として…攻撃するのは正直、辛い。


――それでも。


「はああああああああああああぁぁ!!!!」


それでも、彼のためなら、私は鬼になる。修羅になる。



ガキンと巨大な音が響く。

銃が私の剣を受け止める。


「近接戦闘に移行…」

「くっ…!」


銃の先現れた氷の刃が剣の刃のようになんども私の剣閃と何度も何度も交差する。

精密射撃のように正確な相手の剣閃が私の剣閃を打ち払い、

その度に私の腕へと強烈な衝撃が走った。


おかしい。ありえない。少なくともこの人は射撃は得意でもこんな近接戦闘についてこれるはずが――


「っ!」


彼女の腕に青い線が駆け巡る。

何か…来る!


「がふっ!」


そんな思考がかき消されるように吹き飛ばされる。

素早く受け身を取って最小限のダメージに抑える。

それでも威力が殺しきれずに、体に衝撃が走った。


なんだ。今のは。

衝撃が段違いだった。

しかし、そんなことを考えている暇は与えてくれない。


「っ…シャイニングエッジ!」


素早く魔法を撃ち時間を稼ぐ。

…こんな時守ってくれたゴウは今はいない。

私が、私だけでなんとかするしか、ないん、だ。


魔法はあっさり躱された…だけどそれは予想済み。

―――本命はこっちだ。


「ジャッジメント!!!!」


光の上級攻撃魔法。

光の魔方陣が何重にも現れ彼女の動きを封じる。

次の瞬間、閃光が部屋を覆い尽くす。

魔を滅ぼす私の最大の攻撃。

いくらイリシアさんが固くてもこれをまともに受けて無事には…


「アブソリュートゼロ起動。」


そんな裁きの閃光は、私の望みと共に、

氷獄の世界へと消え去った。


---------------------------------------------------------


「な…何が起きて…」


刹那の時間、一瞬で辺りは氷の世界と化した。


私の目の前で、私の最大魔法ジャッジメントが凍って地面に落ちるのが見える。

ジャッジメントが盾になったらしい。私は無事だ。

―――魔法が凍る…?


「ふ…ふざけないで!魔法が凍るって…どういうことよ!」


ありえないありえないありえない。

だって…そうだ。魔法は現象を直接起こす奇跡の力だ。

特に光は何物にも囚われることはないはずなんだ。

現象も光も空間をも凍らせる。

そんな…そんなことって。


―――――絶対零度(アブソリュートゼロ)


青白い冷気が彼女の体から放たれる。

それと共に感じる―――圧倒的で絶対的な、力の差。

ゆっくりと、こう言い放った。


「アブソリュートゼロ起動完了。殲滅開始」


っ殺気!

飛びのいた瞬間今いた空間が、凍った。

一瞬で形成された氷の柱が…否、氷の棺が、鈍く光る。

物が凍るんじゃない。彼女の行使するその力が、空間そのものを氷へと変えていく。

そこに囚われれば…死を受け入れる他は、無い。


私の魔法じゃ、私の力じゃ、及ばない。

魔法は凍った。剣で相対できる相手じゃない。

きっと私じゃ何一つとして勝てる要素なんか無いに決まってる。


絶望に等しい何かが私の中を駆け巡る。

思えば私はいつも中途半端だった。

剣の腕はすでにあいつに負けている。魔法だって一番と言い切ることはできない。

二つをうまく使うことで今まで戦ってきた。

その二つとも上回る相手に勝てるか…答えなんて、自明だろう。


ああ、青い氷獄の冷気が集まり始めてる。

きっともうすぐ、私に、否、私の空間にそれが放たれるんだろう。

…今の私に抗う術は、無い。


「嘗めるなああああ!」


…だからって、諦めて、なるものか。

私は任されたんだ。頼まれたんだ。

あいつに、あのバカでどうしようもなくヘタレで常識知らずな…

なのになんでか大好きな…あいつに。

だから、負けるなんてことは…


「絶対に…絶対に…あってたまるかああああ!」


炎を纏った剣閃が向い来る氷獄の嵐を切り裂く。


相手が絶対零度なら、こっちは何もかも焼き尽くす紅蓮の劫火に

―――――なってやれば、いいんだ。


誰かが言ってた。魔法は思いの力だって。

だったらこの思いは…負けない誰にも。


「滅焼尽双刃!!」


抗えるはずの無い絶氷の世界を私の剣が、私の思いが切り裂く。

…確かな手ごたえ。


「…武器損傷。使用不可能。」


砕けた双銃が中空を舞う。

――彼女に私の剣閃を防ぐ物は無くなった。


「っあああああああ!」


さらなる追撃。…いける今なら。今なら超えられる。

がら空きになった彼女の胴に向かって紅蓮の炎を叩き付け―――


「っ!」


――弾かれる。


「…対象の出力が増大。リミッター解放。」


彼女の周りに小さな青い機構が飛び交う。

集まったそれらが、私の攻撃を、弾く。

早速その数は…数えるのも面倒なレベルで、


「ふ…ふふ…あははは。」


どうやら、そういうことらしい。

今までのは…ただの小手調べ。

ここからが…本番だ。


なんて…無茶苦茶だ。生きてるのが不思議なくらいなのに、

まだ始まってすらいなかったって、

そう言うんだ。

早く、行きたい。彼を追いたい。

でもこれは、


「…骨が折れそうね。」


…それでも迷いはない。たとえどんな絶望であろうと、私が刈り取って見せるって決めたから。

それが彼の助けになるのなら。


私は、私の全てを賭けて、彼の邪魔になるものを


「…いいわ。今度こそやってやろーじゃない!」


―――穿ってやる。全部。


---------------------------------------------------------


「ふうっ!!はっ!」


襲い来る氷の…否、氷塊の弾壁を次から次へと切り裂く。


「…収束開始。ターゲット確認」


彼女の澄んだ――いや無機質な声といった方がいいかもしれない――

が辺りに響く。

その度に彼女の体を青い線が走り抜けていく。


有効打の無いまま時間が過ぎる中、一つだけ気づいたことがある。

彼女は、いちいち行動を口にする。そして、その通りに動く。


なんだか人じゃないみたいだ。そう思った。

そうそれはまるで…


「氷撃壊砲。出射開始。」


無機質な――機械のようで。


彼女は行動を違えない。

ならば…対処は容易。


一目散に場に残った壁の裏へと避難する。


彼女の力は絶対零度。しかし、逆を言えば、それだけだ。

空間を凍らせる冷気も、それを遮断する壁があれば対処できる。

良くも悪くも彼女は嘘は吐かない。なら、利用すればいいんだ。


積み重なる氷の棺に足を掛け、中空を飛び回る彼女へと突っ込んで行く。

彼女の攻撃に私の守りは意味を成さない。

ならば、守りを捨てるだけ。


「はあああああぁぁぁ!!!」


すれ違いざまに紅蓮の炎が彼女を焼き切ろうとする。

それを彼女の周りの小さな機構が守るのだ。


飛び込んだ先に壁に足を掛け、もう一度突っ込む。

――昔から風の魔法で遊んでた。これくらいならお手の物だ。


彼女を守った機構へと再び灼熱の火炎を叩き込む。

回路が焼き切れたのだろうか、いくつかの機構が地へと落ちていく。

…心なしか、周囲の小さな機構が減ってきた気がする。


「アブソリュートゼロ、損傷。損傷度は小。」


そう彼女が呟く。


無限にも及ぶ繰り返しのやり取り。

何度も何度も私の剣を叩き付けた。

このまま続ければ、勝てるかもしれない。

でもそれは私が望む勝利じゃないんだ。


―――どうやれば、彼女を助けられる。


元々彼女はほとんど感情を見せない人だった。

それでも私は、私たちは知っている。

彼女は不器用で、人見知りなだけ。

むしろ、彼女自身は人との付き合いを望んでいるようにも見えた。

怒ったり、呆れたり、笑ったり…表情には出さなくても、彼女にも感情は確かにあったんだ。


だが、今のあれは、なんだ。

全身から極寒の冷気を駄々漏れにし、

氷獄の世界を展開する、あれはなんだというんだ。


あれに、感情はない。

淡々と、決められた動作をその通りにしているだけ。


―――おかしいじゃあないか。


どうすればあそこまで感情を捨てられるっていうんだ。

彼女は望んでいなかったはずだ。

なのになんで今、それになってしまっているんだ。


答えは一つだ。

あれは、あの中空に居るあのただの『機械』は、

彼女であって、彼女じゃないから。


私の勝利は、彼女を助けて初めて成される。

彼女を操る何かがあるというのなら、私の狙いはただ一つ。それだけだ。

―――だが、それは一体どこにあるというのか。


「…想定戦闘時間をオーバー。対象、生存。アブソリュートゼロの再解放を推奨。」


『機械』がそう告げる。

彼女の体に青い線が走る。

先ほどからの戦闘で分かっている。

――何かの強力な攻撃の予兆だ。


周囲を飛んでいた小さな機構が一点へと集まり次第に大きな塊へと変貌していく。

それは巨大な青い砲身へと姿を変え、

私に、否、この空間全てを氷の地獄へと変貌させんと再びその破壊のエネルギーを溜めてゆく。


…再解放。確かな意味は分からなくても、

最初の攻撃に類似したものが来るということくらいの予想はつく。

私は『ジャッジメント』で再び己の身を守ろうとし、

―――魔法を紡ぎかけた己の口を閉じる。


巨大な砲身の中に出現した、青いコアのようなものへと

ゆっくりとエネルギーが溜まっていく。

コアから走る青色の光が、彼女の体をも駆け巡るのだ。


戦闘でのぼせた私の頭にとある記憶が呼び起される。

かつてゴウと共に、遺跡で戦った、魔道人形。

あれも、体中を、光が走ってはいなかったか。


…似ている。実によく、似ているんだ。

まるで感情がない所も、体中を走る光も、その圧倒的な力も。

そして、誰かに制御されて操られているところも。


魔道人形の弱点はそれを操るコアだった。

…もし彼女が、同じ状況にあるとしたら。


あんなにわかりやすい弱点も他にないじゃないか。


「…チャージ完了。アブソリュートゼロ、再解放」


力の奔流が、圧倒的な絶対零度の力が、今、再び私へと襲い掛かる。

私はそれに、

―――正面から対峙する。



すさまじい重圧が私の剣へと襲い掛かる。

その絶望的な絶対零度が、私の炎を容赦なくかき消しにかかる。


「はぁぁぁぁあああああああああアアアアアアアア嗚呼!!!」


―――それでも、負けるわけにはいかないんだ。


持てる力全てを足に込めて空中へと己の体を打ち出す。

今自分にあるのは二振りの剣だけ。

打ち消せきれなかった絶対零度が容赦なく私の体を蝕んでくる。

近づけば近づくほどに強くなる出力に…押される。

だが、それでも、それでも…


「あいつにっ!約束したんだああああ!!!」


私の振った剣閃が今、目の前の白銀の世界を、穿ちつくし、

その先の砲身を両断し、


「っ…あ」


今確かに響いた、『機械』でない、彼女の、本当の声を聴いた私は

共に地へと落ちていくのであった。

















テスト投稿なので内容は気にしない方向で…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ