第14話
2話同時投稿。1話目です。
【異世界を渡りし者】
それは、俺の推論を裏付ける決定的な証拠であり、俺の僅かな希望を打ち砕き否定する結果でもあった。
俺は震える指先をその称号のカーソルに合わせタップする。
【異世界を渡りし者】
種別:不明
備考:異世界へと渡った者だけが手にすることが出来る称号。****への挑戦権を得た証。
効果:異世界補正 ???
称号を表示した俺の脳内に、突如聞き慣れたアナウンスが流れ始めた。
———所有者の閲覧を確認———
ザザッ…
———融合を開始します———
それは聞いたこともないアナウンスと砂嵐の様な音間を挟む。
———融合を完了しました———
ザザッ…
条件を満たしました———制限Ⅰを解除します———
条件を満たしました———制限Ⅱを解除します———
条件を満たしました———制限Ⅲを解除します———
立て続けに響き渡る何かの解除を促すアナウンス。
———完了しました———
そして直ぐに完了を知らせるアナウンスが流れると、そこでアナウンスは終わった。
そして開きっぱなしだった称号画面に変化が生じる。
【異世界を渡りし者】
種別:不明
備考:異世界へと渡った者だけが手にすることが出来る称号。****への挑戦権を得た証。
効果:異世界補正 解除Ⅰ:全ステータス補正値(極大) 解除Ⅱ:装備アイテム補正値(2倍) 解除Ⅲ:スキル全状態異常無効 ???
「…おいおい」
なんだよこのぶっ壊れ仕様。もはやチートじゃねえか。
ゲームバランスの崩壊どころじゃないぞ。
いや、もうゲームじゃないから良いのか……?
この効果欄に増えた奴は、さっきのアナウンスで解除された物なのか。
それに後ろにまだある???はさっきの制限~解除って言っていた所から察するにまだ何かあるのだろう。
これ一つあれば他の称号なんて要らないんじゃないか?
そんな事を考えてしまうほどに、この称号はとてつもない代物だった。
だが、どうやら代償もあったようだ。
「称号が無くなってる……?」
一瞬過った想像が形となって現れた。
称号の消失。
いや、全ての称号が無くなっている訳ではない。
さっき確認した称号でバグっていない状態だった奴は普通に残っていた。
だが、
先ほどまで間違いなくスクロールが出来たの筈なのに、そのスクロールバーがなくなってしまっている。
膨大な———バグっていた称号が、消えているのだ。
「これは一体…?」
そこには数える程の称号しか残っていなかった。
原因は予想できる。
間違いなくさっきの融合というアナウンスと関係しているだろう。
融合———ってそういう事かよ!
———っと。思わず効果に驚いて本題を忘れる所だった。
この称号、つまりそういう事だよな?
異世界を渡りし者って……マジかよ。
……勘弁してくれ。
そういうのは漫画とかラノベとかアニメとか———創作物の中だけにしてくれよ。
こういうのは第三者視点で楽しむのが良いのであって自分が経験する様な物じゃないんだ。
というより経験できるとは微塵も思ってなかった。
まあ自分が———とか妄想したことが無いとは言わないが、実際自分が経験してみた感想を言うなら———嬉しくも、ましてや興奮なんて物もしない。
ただ迷惑なだけだ。
こういうのは、異世界に行きたい奴に行かせろよ。
こっちはあっちの世界でも満足しているんだ、おいコラ責任者出て来い!GMコールは———無理か。
こちとら明日バイト入ってんだぞ!生活掛かってんだぞ!バイト先のスタッフ皆に迷惑が掛かるだろうが!大学だってあるんだぞ!単位落としたらどうする!
そんな益体も無い事を考えて———まずどうやって帰れるのか、そこだよな。
そもそも帰れるのか?
こういう創作物で帰還できた物なんてそうそう無いんだよな……。
大抵は皆あっちの世界に絶望した奴が焦点となっている為か、まず帰還を望まずにその世界で生涯を終える。主人公はヒロインと幸せになってめでたし、めでたし———ハッピーエンドだ。
だが、俺は違う。
———帰りたい。
向こうには友が、家族が———大切な人たちが居るんだ。
こちらの世界にそんな物は一つも無い。
誰にも会えぬまま孤独に死んでいくなんて嫌だ。
異世界?剣・魔法?ファンタジー?
ふざけるな!
俺はそんなモノ、どうだっていい。
「絶対に帰ってやる」
方針は決まった。
帰還方法を探す。
その為にはまず———
「ボスを倒して迷宮を出る」
幸か不幸か……経験は豊富だ。
ゲーム時代と同じ様に出来るのなら問題ない。
その経験を生かしてここをさっさと出る。
そして———
「情報を集める、か」
その後は、時折り感知範囲に魔物の気配を捉えるが近寄ってくる奴は一匹もいなかった。
俺はエリスが起きてくるまで今の情報整理に勤しんだ。
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