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1章 00話 プロローグ

はじめまして、しろたまぜんざいです。

拙い文章ですが、広い心でお楽しみください。


誤字脱字などなど、ご連絡よろしくお願いします!

 「どうしてこうなった……。」


 目の前の状況に、引き攣った笑いと冷や汗がこぼれる。

 定番と言えば定番。

 狼を大きくして牙を長くして目を赤くした上に角が生えている化け物が、こちらを睨みながら低いうなり声を上げているのだ。

 本当に……。


 「どうしてこうなった。」





 俺は所謂、一般的で平凡な事を売りにするしかない高校生。

 かっこよく自己紹介すると、(れん)天城 蓮(あまぎ れん)

 どんな事をさせてもコンスタントに普通である。見た目も勉強も運動も。

 幼馴染?いるぞ。男だけどな!

 女の子に優しくしても、気持ち悪がられる事はないが、それで惚れられる事もない。

 そんな普通な人間なのだ。

 そんな普通を愛しているし、日常という言葉は心のオアシスだとも思っている。


 「おい、蓮。戻ってこい。」


 おっと、男の幼馴染(ざんねんなやつ)がお呼びだ。


 「今、ものすごく失礼な事を考えただろう。」


 メタな発言をしているが、かなりの常識人であり、モテ男である。

 見た目はもちろん、大抵何をさせても天下一品な友人。伊吹 一希(いぶき かずき)


 「失礼じゃない。残念なだけだ。」


 「……? いや、よくわからん。いいから、ぼーっとしてないで戻ってこい。」


 「そうだな……。」


 二人で下校していた。二人で下校していたからって、怪しい関係ではない。

 怪しくないんだぞ。大切な事だから二度言いました。


 「ここ、どこだろうな!」


 今まさに思っている事を一希に元気よく言ってみる。


 「どこかの森……。だな」


 ノリの悪い奴だ。


 今、絶賛、遭難中である。下校中に遭難するほど、俺たち二人は耄碌していないし、ぶっ飛んだキャラクターでもない。

 気づいたら森の中にいた。何を言っているかわからねーと思うが。

 確認したわけじゃないから定かではないが、一希の認識も似たようなものだろう。

 ()を歩いていた筈なのに、今こうして森の中に居る。


 「不思議だな。」


 「あぁ……。ただ、恐らく原因はお前だな。」


 一希のつぶやきに返答してやる。

 一希(このおとこ)は、兎角、トラブルに巻き込まれやすい。


 「いや、お前だろ。」


 「なんでやねん」


 俺のせいにしようとしやがった、こいつ。思わず関西弁でツッコミを入れてしまった。

 とにかく、絶賛迷子中なのである。




 かれこれ、二時間は歩いただろう。

 山なわけでもなく、ただただ広い森らしいここから、抜け出せる気が全くしない。

 山ならまだ、山頂へ向けて! とか、麓へ向けて! と、目標を付けやすい。だが、このように目標なく歩くというのは、精神的にクるものがある。

 全く目標が無いわけではないのだが、漠然としている。

 道、もしくは川。および、森の終わり。この何れかにたどり着ければ良い。

 目印があるわけでもなく、遠くの川のせせらぎや、細い獣道が分かるけでもない。


 「なぁ、ちょっと休まないか?」


 軟弱ものめ!俺!


 「そうだな。しかし、全く何もないな。木しか。」


 そう言いつつ二人で真新しい切株に腰掛ける。


 …………。


 「ん?」


 「どうした、蓮?」


 なんとなく凄く違和感を感じた。

 その違和感の原因はもうわかっているのだが。


 「これ、どう見ても切株。」


 「あぁ、切株だな。森だし。」


 おぉぅ。こいつは頭良いくせに鈍感というかなんというか。


 「切株ってことは、切られてるんだろ。」


 「だな。切株だしな。」


 バカッ!敢えて言おう!バカッ!


 「ってことは、人里近いんだろっ!まだこれ新しいっぽいし!」


 一希の表情がぱっと明るくなる。反して俺の表情は暗くなる。

 くそう、なんで男なんだ、なんで!

 ここは、可愛い女の子の幼馴染に、蓮!頼りになる!みたいな展開だろ、常識てk……。


 「よっしゃ!人里出たらコッチのもんだな!」


 「あぁ。良かった。ほんとにな……。」


 テンションが下がってしまった。自分の雑念が原因なわけだが。




 それからしばらく休んでいた俺たち。

 そして、よく目を凝らし、何とか他の切株を発見した。それらを巡るように歩を進める。

 鬱蒼とした森の中、大変な作業ではあったが、生還(・・)の文字にやる気を漲らせて頑張った。


 「ほら、あっち! 蓮! あっちにも切株があるぞ!」


 「おぉ!」


 早歩きで歩をすすめる。

 前を行く一希程の体力がない俺は、何とか追いつかんと体力を振り絞っていた。


 ガサッガサッ!


 茂みが音を立てる。

 すっかりテンションマックスな一希は気付いていない。

 俺は気付いていたが、風か何かだと思った。

 その時である。


 ガサッ! ダダッ!


 一際大きく茂みが揺れたのとほぼ同時に、地面を蹴るような足音。

 そして、目にも留まらない勢いで大きな物体が俺の前を横切った。


 「ぐあっ!」


 くぐもった声。一希のものだ。

 その大きなものに衝突され、一希が近くの木に吹っ飛ばされて止まる。


 動きを止めた大きな物体。

 そして、冒頭である。

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