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SnipeShot・Eagle《スナイプショット・イーグル》  作者: 檻鷹 鼓路
第一章 アイドル護衛
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~依頼受諾当日の夜~

あの後、理事長は『霧崎遥』のマネージャーに連絡を取るという事ですぐに部室を出た。

マネージャーも物好きだ、学生ボディガードをアイドルに付けるなんて。

そう考えていると、ポケットの中が震える。電話だ。

「理事長か・・・・・・。はい、もしもし」

『ああ、柳瀬君かい?姫宮です』

「どうしたんですか?」

俺は理事長に色々恩がある。それも含めた理由でだいぶ前から連絡先を交換している。連絡の用といえば、依頼内容の補足だろう。

『マネージャーに連絡したところ、一度顔を合わせたいらしくてね。明日になるんだが、カフェで顔合わせ、という事になった。其方の用事や仕事が無ければ来てくれないかな?』

「そうですか・・・・・・・・・。一度他の奴らにも聞いてみます」

『お願いするよ。野外ライブという事は、その場に大勢の客も来る。通行人も増えるだろう。それに連れて危険も増える。その通行人の中に事件を起こしかねない者がいたり、なんてことも無いわけではない』

確かに、そういう事なら警察官も周辺の警備に就くだろう。

でも、その警備を抜けて、なんて事もあるわけだ。警備は完全ではないのだから、誰かがその穴を埋める必要がある。

なら、ライブが始まる数日前から護衛に付くのが得策だろう。

「その辺は吹雪の方もやる気出してますし、問題無いと思います」

『そうかい、では、よろしく頼むよ』

「はい」

『それと、』

紙を開く様な音がスピーカー越しに聞こえる。

『今月の携帯の通信料は払っておいた。そちらの何か生活に困る事は無いかい?』

さっきの音は、携帯会社からの領収書のようだ。

「は、はい!こちらもお世話になりっぱなしですいません」

『いや、いいんだよ。君達を拾ったのは私、つまり、私は君達の親の様なものだ。子を世話するのは親の務めさ』

「ほんと、すいません。この恩はいつか必ず返しますから」

俺と佑寧は部室、応接室を自分達の家として住んでいる。その生活に関わる金銭を理事長が負担してくれているのだ。

『いや、いいんだよ。君達、学生ボディガード部もまともな仕事が欲しいと部長さんが嘆いていたのをみてね。うってつけの仕事だと思ったんだ。慈悲で仕事を任せた訳じゃない、君達の実力を知って頼んでいるんだ。この仕事を、私への恩返しだと思って、一生懸命頑張ってくれ』

理事長としてではなく、姫宮大善としての言葉に聞こえた。

『では、また明日。しっかりと睡眠を取るんだよ』

そう言って、電話を切った。

スマホの時計を見ると、七時になっていた。

「そろそろ飯か。なにを作るかな・・・・・・」

冷蔵庫を開けて中を見る。そこで気付く。

「俺のエクレアが無い・・・・・・・・・」

犯人はすぐにわかった。

冷蔵庫を閉めて走り出す。

応接室、俺と佑寧の部屋へと。

「おい佑寧ッ!俺のエクレア勝手に食べただろ!!」

「んぁ?食べてねえし」

「その手に持ってるものは何だ!」

「エクレア」

「それ俺の!お前の分は別で買っただろうが!」

「ギャーギャーうるさいなぁ。ほら見てみろ、私に食べられてこのエクレアも喜んでカスタードとクリームを溢れさしているだろ?」

手に持ったエクレアを潰さない程度の力で握る。そして、そのエクレアを一口で食べきってしまう。

「や、やめろっ!俺のエクレアがあぁ!」

「もう手遅れだよ、少年。済まなかった、君の恋人を助けることは、できなかった・・・・・・・・・」

そう言いながら、エクレアの袋に書いてある『カスタードの恋人』を見せつける。※チョコが関係していないが、そこに触れたら負けである。

「お前が殺したんだ!俺の恋人をっ!!」

「じゃあ私が恋人になってやるから、それで許せ」

「なっ、ば、バカな事言ってんじゃねぇ!俺はエクレアが食べたいんだ!」

そういうと、目線をパソコンから俺に向けて、ニヤリと笑う。

「じゃあ、私をエクレアと思って食べるか?」

ちょっと、想像してしまった。

それが頭の中で彷徨い続けるので、頭を振って考えを霧散させる。

「お前、それ冗談でも笑えねぇぞ」

「・・・・・・・・・冗談じゃ、ないんだけどな」

ボソボソと何かを呟いているが、声が小さくて聞こえない。

もうエクレアは諦める。諦めざるを得ない。

重い身体をベットに落とす。一日の疲れが一気に身体を襲う。

「あー、目が痛い・・・・・・」

目を擦りながら言う。

ストーカーのナイフを狙撃する為に『鷹の目』を使った、その代償だ。

それを見た佑寧が、どこからか濡れたタオルを持ってきた。

「お前、『鷹の目』使ったのか」

「あ、ああ。仕方なく、な」

『鷹の目』開発者、椿佑寧がそこに立っていた。

「今日は疲れたろ、しっかり休め」

そう言って、濡れたタオルを俺の顔に掛ける。もとい、投げつける。

「あづぅっ!!お前バカだろ、火傷するだろ!」

「ふん」

何、怒ってるんだ?

そのままパソコンの前に座ってゲーム、エロゲを再開させる。

スピーカーをオンにして。

女キャラのイヤらしい喘ぎ声が部屋の中で響く。

「お前の目、『イーグル・アイ』は私の最高傑作にして最後に作った物だ。すぐに身体に馴染むし、性能も馬鹿にならない。だからこそ、心配なんだ」

口ではそう言っているが、手はマウスをクリックしている。

画面で次々と文章が流れていく。それを俺はただ見ているだけしかできない。

「もう、『イーグル・アイ』はお前の身体の一部。しかし、それを受け入れるのも拒絶するのもお前自身だ。最強の力に身体を任せるか、力をコントロールするか。・・・・・・飲まれるなよ、力に」

画面の中の女性は顔を蕩けさせて喘いでいる。それを大音量で垂れ流す佑寧。勘弁してくれ。

キリが良くなったのか、セーブしてゲームを閉じた。

「さてと、点検をしようか。こっちに来い」

デスクに座り、ノートPCを開いて起動する。※このノートPCも俺の。

様々なアプリケーションを展開し、USBポートに機械を差し込む。

「さ、コレを付けろ」

ゴーグルのような機械を差し出してくる。『イーグル・アイ』点検装置だ。

言われるままに装着し、佑寧がキーボードを打つ音だけが耳に入る。

暫く待つと、点検装置が起動、視界が紅くなる。『鷹の目』が擬似的に発動し、異常が無いか確認する。

「・・・・・・・・・異常は無し、と。よし、外すぞ」

「あ、ああ」

佑寧が椅子から立ち上がり、俺の頭から点検装置を外す。

それと同時に凄まじい眠気が襲ってくる。

「ああ、眠い・・・・・・・・・」

「はぁ・・・・・・夕食は私が適当に作るから、お前は寝てろ。後で起こす」

珍しい、佑寧が自分でご飯を作るとは。

「すまん、頼むわ」

「別に、お前の為に作るんじゃない。ついでだ、ついで」

そう言いながら部屋を出て行った。

「じゃあ、俺はお言葉に甘えて・・・・・・っと」

ベットに飛び込み、息を吐く。

徹夜というのもあって、一度横になったら中々立ち上がろうと思わない。身体が言う事を聞かないから。

「おい、孝浩。後でコンビニにエクレア買いに・・・・・・・・・ふっ、もう寝たのか。おやすみ」

佑寧の声を聞いて、俺の意識はすぐに落ちた。




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