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SnipeShot・Eagle《スナイプショット・イーグル》  作者: 檻鷹 鼓路
第一章 アイドル護衛
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~暗闇の狂気は嗤う~

暗い夜道、電柱の下で腹が血で染まった男、柳父が携帯を片手に佇む。

「霧崎遥は、順調に覚醒しています。『無差別浮遊の権限(ダイナモ)』は主のお察しの通り、凄まじい力です。あれなら、重量関係無しで物を運ぶ事も出来る」

折れた筈の左腕で普通に通話する柳父は、体育館に居た時の狂気の笑みでは無く、運転手の時の、柔らかい笑みを浮かべている。

「そうですか。期待通りです」

通話相手の声が横から聞こえ、通話を切る。

「これです」

そういって、柳父はポケットからスライド式のUSBを男に渡す。

全身黒尽くめ、顔も影で見えない、不気味な姿をした男は、USBを数秒見つめ、ポケットに仕舞う。

「ありがとう。これで、私達の計画を一つ上の段階に進める事が出来る」

「ええ。私は、主の為に、この力を振るいます」

立場をわきまえた美しい礼を見せる柳父。

「頭を上げなさい。K」

柳父、Kは、主である男の指示を受け、顔を上げる。

「次の指示を与えます。次からは、私も手を貸します。上の者が動かないのは胸糞悪い」

「有り難き幸せ、我が主よ」

「君もそう思いませんか、K」

相変わらず顔が見えないが、遠くにある高層ビルを見つめ、独り言の様に呟く。

「上の者が下の者、嬢王蜂がこまである蜂に、蜜を貢がせる事と同じ様に、私達も下の者に情報を集め回らせ、上の者がそれを受け取る。ああ、何と醜く汚れた世のシステムだろうか」

「しかし、それは私達『人間』という動物にも必要不可欠なシステム、抗い様が無いのでは?」

「そう、抗い様が無いのです。何故だと思いますか?K」

「この日本に、作り物の平和が蔓延はびこっているから、でしょうか」

「ふふ、実に的を得た回答ですね。そう、我々が生きるこの星、日本には偽物の平和、作られた平和が広がり、我々生命体を苦しめている、汚している、殺している」

生命体、この世の生き物全てを指しているのか、人を生命体と呼んでいるのかは分からない。

「しかし主。我々の目的は、それらを全て救済出来る」

「・・・・・・・・・ええ、確実に。実現する日は遠くない。我々はその為に存在し、行動している。実の親を殺し、友を殺し、自分を殺して」

男は、黒の革手袋を外し、深く大きな傷をKに見せる。

「K、貴方にも同じように傷が残っている。それは、我々革命思想結社、存在しない者(ゴースト)の証であり、呪縛」

手を血が滲む程の力で握り、コンクリートの壁を殴る。

「しかし、K。貴方は、世界を変える力を兼ね備えている。その力を私へ貸してもらいたい」

「私は、主の為の物、所有物です。主に死ねと命じられればこの命を散らし、国を潰せと言われれば、跡形もなく消しましょう」

「いいえ、貴方は私の所有物では無い。私の、盟友」

そう言い、革手袋を付ける。

「我々、特異者は日本から、特に政府関係者から迫害され、存在自体を隠蔽されている。存在しない者(ゴースト)として扱われている。その汚れた汚名を、返上するのです」

「世界に我々の存在を知らしめ、世界へ変革をもたらす」

「そう、それこそが我々の真の目的」

「・・・・・・ふふ、雑談が過ぎましたね。では、次の指示を与えます」

男は携帯を取り出し、メールで内容を送る。

「詳しい内容はメールに書いてあります。それでは――――――――」

そう言い、写真を渡す。

「今回の目的は二つ。前回に続き、霧崎遥の監視、能力の上限を確認後、我々の予想値を超えた場合、拉致し、私の元へ。そして、もう一つ」

携帯を触り、更にメールを送る。

「写真の男、学生の立場でボディガードをしているそうで。しかも、機械的特異者(メカニックキネシスト)。実に、目障りだ」

男は携帯を仕舞い、最後にこう言う。

「K。四日後の野外ライブ当日、全力を尽くし、彼。柳瀬孝浩を――――――――殺せ」

「―――――――承りました、我が主」

男は暗闇に消え、電光灯の光りが、夜道を照らす。

男が消え、柳父という偽名で呼ばれていた『K』は、狂気の笑みを浮かべる。

「決着を着けようぜ、ビリビリィ・・・・・・・キヒヒッ」

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