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SnipeShot・Eagle《スナイプショット・イーグル》  作者: 檻鷹 鼓路
第一章 アイドル護衛
15/26

~鍋奉行に、メリットは無い~

「そこに寝かせて。傷は深くないからいいけど、毒の種類が分からない以上迂闊(うかつ)に行動出来ない。佑寧、毒の種類が分かったら教えて。私達で出来る事をするから。あとユカ、近くのドラックストアで適当に飲み物買ってきて。スポードリンクがいいわね、よろしく。あとは―――――――」

霧崎をマンションに運び、傷の手当てをして霧崎を看病していた。

吹雪の指示に従い、各自的確に行動していく。

俺は、「やれる事は無いか」と聞いた所「命令違反野郎は飯でも作ってろ」と有難い(有り難くない)暴言を頂き、キッチンを勝手に使って料理をしている。

霧崎用におかゆを作り、吹雪達用に簡単なキムチ鍋を作っている。

材料はさっき自分で買ってきた物で、道具は殆ど揃っていたから苦労せずに創ることが出来た。

「しっかし、一人暮らしなのにパーティー用鍋があるって中々すごいよな」

俺の家(応接室)にだって鍋はあるが、三、四人用の鍋しかないぞ。部員用だが。

よく部室に集まって晩御飯を食べる事があるので買っておいた物だ。

「孝浩ッ!!呼ばれたらさっさと来なさいッ!!」

隣の部屋から怒鳴り散らす部員の扱いが雑な乱暴部長様の呼び出しを食らう。

「な、なんだよ。今飯作ってる所なんだけど」

「アンタ、何か言う事は無いの?」

「霧崎の毒、ただ神経麻痺させるだけのやつだから、その内起きると思うぞ」

「それを先に言えバカ野郎ッ!!」

ドンッ!

「ひいっ!?」

前振り無しでM4を俺の頭があった場所に3点バーストで撃つ。

ま、またセメントで穴埋めなきゃならんのか・・・・・・。

この穴を埋める為のセメントも俺の財布から出てきた諭○さんで買っている。穴を埋める俺の立場も考えて欲しいものだ。

「はぁ・・・・・・。佑寧、ユカ、休んでていいわよ」

「うぃ~、あ~、だっっっっっっる。孝浩ごはーん」

「今日は色々な事が起こりますね・・・・・・」

「それについてはノーコメントで・・・・・・」

「俺も同意」

「喋るな」

俺の扱い、ひどくね?

さっきからこんなんばっかだよ。俺、霧崎助け出しましたよ?

なのになんでこんな仕打ちを受けなきゃならんのだ。全くもって不愉快だ。

部屋から佑寧とユカが出ていき、寝ている霧崎を除いて俺と吹雪だけになった。

ちょっと、佑寧とユカ。俺を助けようとはしないのね――――ちょ、そんな哀れみの視線を送るんじゃないッ!

「なにか、言う事は?」

「え、えっと・・・・・・」

「言わないと分からない?」

「お、おう」

「私は、見つけたら報告しろと言った。なのにアンタは自力でどうにかしようとしたでしょ。私達はチーム、一人じゃないの。連携を第一と考えなさい。私達は正規のボディガードじゃないし、本格的にクライアントを守るという事は出来ない。それでも、危険な目に合わせちゃダメ」

母が子に言い聞かせる様に、いや、程遠いな。

なんせ俺は土下座、吹雪は俺の後ろでM4を構えて後頭部に銃口を押し付けている。

今、紛争地域の拷問を高級マンションの寝室でリアルに再現されている。俺はその主役、吹雪は悪役と行った所だろう。たまに背中蹴られるし。痛いっす。

「お前、言ってる事とやってる事滅茶苦茶だぞ。言い聞かせるのか拷問するのかどっちかにしてくれ」

「じゃあ拷問―――――――」

「すんません、続けてください」

吹雪に拷問させたら情報吐く前に死にそうな気がする。というか、俺は世界中を脅かすような情報持ってないし、フラグじゃないし。

「で、お前が怒ってんのは俺が報告しなかったからなのか?」

「それ以外に理由が?」

「あんの?」

「ないわよ」

「じゃあ―――――――――」

この拷問をやめて下さい、と、言いかけた時、隣から二人の悲鳴が聞こえた。

「ちょっと見てくる」

「え、ええ」

立ち上がり、扉を開ける。

「何があっ・・・・・・・た?」

扉を開けると、佑寧とユカが仲良くあたふたしているのが一番最初に目に入った。

その次に―――――――

「うわっ、鍋吹いてやがるっ!?」

ダッシュでガス台に駆け寄り、火を止める。

「お前ら火ィ吹いてんだから止めろよっ!飯食えなくなるぞ!?」

「だ、だって普段キッチンに立たないし、火の付け方どころか火の消し方すら知らないんだぞ、私は」

「私、鍋を吹かした事ないし・・・・・・というか、鍋使ったことないですし・・・・・・」

うわぁ、すげえ役に立たねえ・・・・・・。

「・・・・・・お前ら、一生キッチンに近寄るな。俺が料理するから」

「い、一生って、まさかっ!?」

「孝浩君、ついにッ!?」

「はぁ・・・・・・・・・お前らを貰うお婿むこさんが非常に可哀想で仕方が無い・・・・・・」

「「・・・・・・・・・」」

「黙ってないで、はよ机を拭いて来いッ!!」

ダスターを佑寧に放り投げる。

こいつら、いつもこんなんなのかよ。いや、佑寧は知っとるが。

というか、ユカは部室のキッチン使ったことあるんだから火の消し方くらいわかるだろうが。

下らない愚痴を片手で○イッターに書き込みながら、鍋を監視し続けた。

「あっ、○ムられた」





「あ・・・・・・・・・」

白い天井、大きめの部屋、ここは、アタシの部屋?

「目が覚めたようね。体調はどう?」

「吹雪・・・・・・・・・?」

ベットの脇に吹雪が座っていた。

「うん、大丈夫。普通に動ける」

「体調は良好、食欲もある。普通に健康体ね」

そう言って吹雪は立ち上がり、アタシが被っていた布団を取ってたたみ始める。

「孝浩にキムチ鍋を作らせたの。もし良ければ一緒に食べない?」

「・・・・・・・・・うん、食べる。って、あれ?材料あったっけ?」

フフン、と、胸を張って吹雪は鼻で笑う。

「勿論、孝浩に材料を買わせたわ。アイツは何故かしら料理が上手いの。まぁ、佑寧の世話を見ていたからかもしれないけど、私の舌を何度も唸らせてる。ハッキリ言って、孝浩がキッチンに立った時は、俺TUEEEE状態の孝浩と呼ばれているわ」

「俺TUEEEEって、ラノベの主人公じゃないんだから」

「あら、ラノベを読んでいるの?」

「結構読むわ。そこの棚、殆どラノベよ。その隣は薄い本、更に隣はギャルゲーとエロゲー。官能小説もあるわよ。あ、勿論男性向けね」

「ほ、本当っ?」

「ええ、アタシは日本、というか、日本文化そのものを愛しているから」

「全世界のオタクの言葉を代言したわね」

「これを国会議事堂の前で言いたくて仕方がないわ」

「勇者ね・・・・・・」

「二次元を愛する者に悪い奴はいない。これ名言よ」

「ただの馬鹿の妄言だと思うんだけど・・・・・・・・・」

「それ絶対に佑寧と孝浩に言っちゃダメよ」

「あいつらが言ったのね・・・・・・・・・」

呆れ顔で額を押さえる吹雪。部員達の態度に呆れている様子だ。

まぁ、あの三人組を平気でまとめるアンタも変人だけどね。良い意味で。

「あ、それと、脚の怪我は大丈夫?孝浩が結構深い傷になってるって言ってたけど」

「まだ痛むわ。――――――――ッ!柳父は?豆島はッ!?」

「豆島さんの遺体は、見つからなかったらしい」

「見つからなかった?何それ」

「警察に連絡したの。遺体は触れるなと言われたからそのままにしておいたんだけれど、その後に連絡が来て、血痕はあるけど遺体が綺麗さっぱり無くなっているって」

「無くなってるって、死体が動いたとでも言いたい訳?」

誘拐に関してもだし、豆島の死、色々な事が一気に起き過ぎて訳が分からなくなる。

それに―――――――――。

「あの、吹雪。アンタ、体育館の中見た?」

「ええ、酷い状態だったわ。壁に大穴が空いてるし、一部の壁は殴られた後みたいに崩れてた。ホール内のあちこちに瓦礫があるし」

「それ、アタシがやったの。柳父も色々と痕跡を残しているわ」

「・・・・・・・・・ええ、聞いたわ。特異者キネシスなんだってね。貴方と柳父」

「知ってるの?」

「ええ。この事はごく一部の人間にしか伝えられてない、国家機密」

「そ、そこまでの事なの?」

特異者が他の人間とは違う事は知っていたけど、そこまでの大事おおごととは知らなかった。

「そういえば、豆島も特異者だって柳父が言ってた。それと今日の事と何か関係はあるの?」

「無い、とは言い切れないわね」

「なんで柳父がアタシの能力の事を知っていたの?運転手としてしか会った事無いのに」

「そこまで細かい事は分からない。その内ハッキリしてくるでしょう。上の方も協力してくれるそうだし」

「上の方って?」

「政府のお偉いさん方」

「ええっ!?」

吹雪って、政府関係者と顔見知りなの!?

目の前の女が一瞬恐ろしく映った。なんでこんなに自由気儘じゆうきままなのにそんな偉い人と面識があるのか不思議だ。

「といっても、私達部員はその人達の事あまり良く思ってないの。人として嫌いなだけで、ちゃんと仕事はしてる人なんだけど。佑寧は、拷問に使う大きなスタンガン?見たいなのあるじゃない?あれの電力三十倍のスタンガン作って迎撃しようとしたわね」

その技術をもっと他の物に使いなさいよ。色々あるでしょう!?

「ユカは理科室の薬品管理室から硫酸持ってきて顔に掛けようとしたわ」

想像しただけで鳥肌立つ様な事平気でやるのね、あの女。恐ろしい・・・・・・。

「私は扉開けて入って来た瞬間M4フルオートで歓迎するわ」

世間ではそれを銃殺って言うの、知らないのかな・・・・・・・・・。

「孝浩に限っては対戦車地雷を扉付近に大量に仕掛けて、体育館の天井上から狙撃しようとしたわね。あの時は流石に冷汗掻いたわ」

爆死・・・・・・・・・。学校の部室で爆死・・・・・・・・・。

というか、一番の常識人だと思っていた孝浩がそんな常識離れした事するなんて・・・・・・。

・・・・・・あれ、体育館?

「ねえ、吹雪。アタシって何処の体育館に居たの?」

「何、覚えていないの?姫宮学園の体育館よ」

「―――――――――――え?」

という事は、理事長、だいぜんパパのすぐそこに居たって事?

「そんな・・・・・・・・・」

家族に会うチャンスを失ったのが、ショックだった。

そこで、思い出す。

「孝浩、孝浩はどこなのっ!?」

「隣の部屋よ。テーブルに鍋持ってきたのかしら、アイツ」

それを聞いて、ベットから飛び降りる。

傷が酷く痛んだが、気にせず未だ痺れる手に力を入れて扉を開ける。

「霧崎、起きたか」

扉を開けると、すぐそこにテーブルに鍋を構え、馴れた手捌きで鍋奉行をする孝浩が居た。

「キッチン借りて作ったんだけど、食欲あるんなら一緒に食べよう。あ、お粥もあるけど、どうする?」

「・・・・・・・・・ううん、一緒に食べるわ。吹雪、ご飯出来たみたい」

部屋から吹雪を呼んで、テーブルを五人で囲んだ。

その後、チラリと孝浩に目を向ける。

アタシと、家族の事を全く覚えていないのだろうか。

きっとそうだろう。アタシを見て、何も感じていないのだから。





「よし、出来た。お前ら、最初に肉ばっかり食べるなよ」

「何上から目線で物言ってんのよ」

「あ~、豚肉が美味い・・・・・・」

「こ、この鍋辛いです」

「そりゃあ、キムチ鍋だもん。辛くなかったらキムチ鍋なんて言わないでしょ」

こいつら、人の話を全く聞かないな・・・・・・・・・。

最初から最後まで俺任せかよ。食器洗いはやってもらおうか。

俺の隣に霧崎、佑寧、反対側に吹雪とユカが座り、鍋を囲む。

吹雪と佑寧がお構いなしに肉をかっ攫っていくのを箸で制しながら、霧崎に声を掛ける。

「っと、霧崎、箸持てるか?ちょ、吹雪、佑寧っ。ざけんなよっ!」

毒で指が麻痺しているかもしれない。鍋から食べたい物が取れないなんて事があってもおかしくない。

そう言うと霧崎は手を握ったり開いたりして苦笑いを浮かべる。

「あ、あはは、動かしづらい・・・・・・」

「おし、俺の任せとけ」

霧崎の器と取り、鍋からネギ、もやし、白菜、肉、等を入れていく。

最後に辛味のあるスープをお玉で入れ、霧崎に渡す。

が、プルプル震える両手を見て俯く霧崎を見て留まる。

霧崎の箸を取り、白菜を掴む。

「ほれ。熱いから気を付けろ」

「え、えっ?」

「食べたくないのか、食べたいのか、どっちだ?」

「た、食べる、食べるからっ」

そう言って、箸に顔を近づけ、一気にかぶり付く。

「・・・・・・っ。出汁ダシが効いてて美味しい」

「だろ?俺特製だ」

俺がこの出汁を作った。これだけでも誇らしく思う。

吹雪は多少料理は出来るが、ここまでの料理は出来ない。

佑寧とユカは論外。ユカは紅茶淹れる位は出来るが料理は無理。

佑寧に限っては食材と調理器具を触らせる事すらさせたくない。食材は生で食べるし、調理器具に関してはいきなり改造して武器にしやがる。

「困ったら俺に言えよ。今日の鍋奉行は俺だからな」

ドンと胸を叩き、出来る限りの笑顔を霧崎に見せる。

「ふふっ、ありがとう。じゃあ、早速お願いがあるの」

「おう、何でも言え」

頼られるのは非常に嬉しい。特にこういう食事の場では。

「ジュース買って来て?」

「・・・・・・・・・」

前言撤回、き使われるのは非常に辛い。特に女共の集まりでは。

「困ったら俺に言えって言ったの、孝浩でしょ?」

「あ、私芋○酎」

「私はカ○ピスだ」

「あっ、私はリプ○ンのミルクティーでお願いしますね」

「アタシフライドチキンとレモンティーとサラダ」

「お前ら、遠慮ってものがないんですね・・・・・・・・・おい、最初と最後おかしいぞ」

そう言って、俺は遠過ぎるコンビニへダッシュで向かい、ダッシュで帰って来た。

その時にはもう肉が無く、俺の膝は鍋の前に崩れた。

女って、怖い・・・・・・・・・。


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