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SnipeShot・Eagle《スナイプショット・イーグル》  作者: 檻鷹 鼓路
第一章 アイドル護衛
12/26

~全機能開放~

「・・・・・・・・・・・・すまん」

「いや、アンタのせいじゃない」

吹雪は俺の頭を撫でてくる。

が、そんな事で事態に変化が起こる訳ではないのは明確だ。

あの電話以降、霧崎は俺達の前に姿を出していない。

このケースはよく見る。誘拐だ。

霧崎を守ると言ったのに、結局守れていない。虚言を吐いたのだ、俺は。

「・・・・・・・・・クソッタレッ」

また、なのか。俺はまた、守れないのかッ――――――――!

「落ち着いて、孝浩」

気付けば、俺は足元のテーブルの足を蹴っていた。テーブルはテレビの元まで移動してしまっている。

物に八つ当たりしても仕方が無いというのに、怒りが収まらない。誘拐した犯人にも、自分自身にも。

「佑寧、遥の携帯位置分かった?」

「いや、検索有効距離から出てしまっている。所謂いわゆる、圏外ってやつだ」

「そう・・・・・・・・・」

「私も何度か電話掛けてるんですが、出る様子は無いです。どうしているんでしょう、キリちゃん・・・・・・」

みんなが、頭を総動員して霧崎を探す手段を手当たり次第に使っている。

なのに、俺は何も出来ない。本当に、無力だ。

――――――――――待てよ、頭?

あるじゃないか、俺の切り札にして、佑寧の最高傑作が、俺の頭に―――――――!

「見つけられるぞ、確実に」

俺が宣言すると、全員が振り向く。

「何か、方法があるの?」

「ああ、これなら絶対霧崎の居場所が分かる」

そう言いながら、自分の頭を指差す。

「だ、ダメだッ!!」

佑寧が大声を出しながらテーブルから身体を乗り出してくる。これは、想定内の反応だ。

しかし、これなら確実に、正確に霧崎の居場所を特定する事が出来るんだ。

「お前は、リミッターをファーストまで解除するつもりか!?」

「リミッター?」

ユカが不思議そうに首を傾げる。

「・・・・・・ああ、孝浩の鷹の目、イーグル・アイは複数のリミッターを掛けている。それぞれのリミッターを解除すると、そのリミッターが封印していた能力が使用可能になる」

佑寧が頭を押さえてパソコンのキーボードを打つ。

何かしらのアプリケーションを起動し、俺達に画面を見せてくる。これは、鷹の目の能力を簡易映像化した物か。

「これが三つ目のリミッター、サード、タキオンだ。神経を一千倍まで加速する能力だ。これを使えば一瞬で小隊規模の敵を一掃する事だって可能だ。ミサイルを撃墜する事だって出来る。タキオンⅡはそれの改修版で、性能も確実な物になっている」

画面では、赤と黒の世界が広がり、俺視点で敵を射つ場面、ミサイルを堕とす場面が出てくる。これは、シュミレーションだろう。

「リミット・サードは比較的安全な能力だから多様しても害は無い。だが、サード以上のリミッターが問題だ」

パソコンを閉じ、腕を組む。

「お前達には言っていないが、リミッターに番号が付いているのは、能力の強さの順番なんかではない。孝浩の身体に害を与える規模が大きい順番だ」

吹雪とユカは絶句している。ユカは口を押さえて目を開いている。

「サードは使用すれば眠気がするだけ。だが、セカンドとファーストはそんな生易しいものではない。最悪死に至る」

「・・・・・・その、セカンドとファーストの能力って、何?」

「・・・・・・・・・」

「答えなさい、佑寧ッ!」

吹雪が佑寧の胸倉を掴み、睨みつける。

「・・・・・・・・・セカンドは、大規模音波送受信。ファーストは――――紫電操作だ」

「何、それ」

「大規模音波受信は、有効圏内の音を全て受信、目的の音を特定する能力だ。送信する事も出来るから、敵のパソコンやミサイルをハッキングする事も出来る。孝浩にはそういった知識は無いからハッキングは出来ないにしろ、音を受信する事は出来る」

「例えば――――」と、言葉を続けながら手をパン、と叩く。

「10km離れた場所でも、孝浩はセカンドを使えば聞く事が出来る」

「セカンドの能力はなんとなく分かった。ファーストは何?紫電操作?」

佑寧は立ち上がり、部屋の壁を触る。

「紫電操作は、危険極まりない能力だ。この、大きなマンションを一瞬でちりに出来るんだよ」

そう言いながら、目を瞑る。

「・・・・・・・・・は?マンションを、塵に?」

「そうだ。孝浩は、「紫電」という巨大な力を意のままに操れる。だが、リスクも大きい。全身の筋肉、内部構造を破壊、再構築を繰り返し、紫電に耐えうる身体を作る。一度使えば身体が馴染むが、その一度が、大変なんだ。痛みは計り知れない。最悪その場で死ぬかも知れない。それに、セカンドの能力負荷もある。死ぬ確率は非常に高くなる」

吹雪の、佑寧の胸倉を掴む力が強くなる。

噛み過ぎたのか、綺麗な唇からは血が流れている。

「アンタは、アンタはッ・・・・・・・・・!なんでそんな危険な物を孝浩に持たせているのよ!!」

近所迷惑極まりない大声で佑寧に怒鳴り散らす。

暴走気味の吹雪をなだめようとユカが吹雪の腕を押さえる。

「落ち着いて、吹雪ちゃんっ」

「なんでアンタは普通でいられるの、ユカッ!!」

佑寧を離し、ユカに矛先を変える。

「普通に見えるんですか・・・・・・・・・?」

ユカが肩をプルプル揺らし、吹雪の顔を両手で挟む。

「今の私が、吹雪ちゃんからは普通に見えるんですかッ!?」

自分の目を見せるように額をくっつける。

ユカは、泣いていた。

目元を赤く腫らし、涙が流れた後が残っている。

「こんな、一気に耳を疑うような事を立て続けに聞いて、普通でいられるんですか!?」

何やら険悪なムードが部屋の中に漂い始めた所で口を開く。

「あのー・・・・・・・・・そろそろ言ってもいいですかね?」

なるべく怒らないように、低めな声で言う。

そう、俺は怒っているんだ。

「・・・・・・・・・なにを」

「わからないのか?クライアントを守るのが俺達の仕事だろうが。俺の事なんかで喧嘩してていいのか?霧崎がどうなってもいいってのか?」

「誰もそんな事―――――――――」

「だったらべちゃくちゃ喋ってんじゃねえ!!!」

ついに怒鳴る。我慢が出来なかった。

「さっさと結論をだせよ。言い合ってても仕方がないだろ」

「でも、アンタは――――――」

「だから、俺はそんなん聞きたいなんて言ってねえだろ!!さっさと命令しろよクソ野郎!!」

部長、吹雪に暴言を吐く。

「や、野郎っ?」

面食らって絶句している。佑寧もユカも。

「んだよ、部下に命令も出来ないのか。使えねえ上司だな。部長やめろバカ」

ガキのような悪口をペラペラと述べていく。ああ、我ながら小物だと実感させられる。

「なんで、すって・・・・・・?」

額に血管を浮かべて俺を睨んでくる。

「聞こえなっかんですか?部長やめろっていったんだ。部下を引っ張っていけない奴は要らない。特に、今みたいな状況ではな」

「黙って言わせていれば・・・・・・好き放題言いやがって・・・・・・」

「おう、好き放題言わせたのは何処のどいつだよ」

ニヤリと口をゆがめ、吹雪の額を人差し指で弾く。

「あっっっっっっっっっったまきたッッッッッ!!!」

そう言って、俺のヘッドバットを食らわせてくる。

「ギャアアアアアアッ!!」

「吹雪ちゃん!?」

「吹雪!?」

「まだまだァ!!」

何発も、同じ場所に、正確に狙いを定めてヘッドバットしてくるので、凄まじい痛みが頭を襲う。

「フンッ、フンッッ!!」

「いだっ、いだいいいいいッッ!!」

なんか、血が流れているような気がする。切れちゃった?

ゴチン、と、額を合わせて睨んでくる。

その時、血が数滴俺と吹雪の間を落ちていった。やっぱ、気のせいじゃなかったか。

「アンタ、この仕事終わった後覚えときなさいよ。それと―――――――ありがと」

お礼ともとれる頭突きを一発貰って吹雪が「ぃよし!」と、気合を入れる。痛いだろうが。

「さっきは取り乱してごめん。さて、さっさと遥を連れ戻すわよ!部下は黙って上司に従いなさい!!」

「偉そうに何を言うか」

「吹雪ちゃんらしい、といえば、らしいですね」

「さっさと命令しろよ、クソ部長」

「アンタ、今日が命日になるわよ。――――――――さて、改めて。クライアントを救出するわよ!!」

「「「了解!」」」





俺達は、完全武装で霧崎の元へ行くための準備を始めた。

ライフルケースは持った、マガジンは持てるだけ持った。

吹雪もM4を持った。しかも二丁。

珍しく佑寧とユカも銃を持っている。佑寧はコルト・デルタエリートを四丁、ユカはシグ・モスキートを四丁装備して準備完了。二人共拳銃は常に撃っているとの事だ。佑寧が撃ってるところなんて見た事ないけど、案外期待出来るかもしれない。ユカは、弓道を嗜み程度にとか言って的の真ん中に全て矢を命中させてるし、射撃も期待出来る。

俺も、サブでスプリングフィールドXDを二丁を腰のホルスターに押し込む。

「じゃあ孝浩。頼める?」

「おう」

耳にシュレイドを装着、起動。

起動アナウンスをスキップし、待機状態スタンバイモードにする。

「佑寧、やるぞ」

「・・・・・・・・・ああ。絶対に、死ぬなよ」

「フラグ建てんなバカ・・・・・・・・・じゃあ――――――鷹の目、発動」

視界が赤く染まる。それと同時に、瞳の色が赤くなる。

「――――――――リミッター、サード、セカンド、ファースト、解除!」

ピンが連続して外れるような音が頭に響く。

『了解――――――神経加速、大規模音波受信、紫電操作、開始』

アナウンスが流れると、身体が鉄のように動かなくなる。

これは――――――全身の筋肉を破壊しているんだろう、力が入らない。

壁にもたれながら集中する。

『リミット・ファースト‐ライトニング――――――――発動』

突如、肉が切れるような痛みが全身を駆け巡る。

「ああああああああああああああああッッッ!!!」

喉が裂け、口から血を吐き出し、フローリングを汚す。

『ライトニング適正筋繊維構築中‐50%』

「こんなに、痛いなんて、聞いて、ない、ぞ・・・・・・!ごほッ・・・・・・うぁ・・・・・・」

これ以上口に血を貯めていられなくなった俺は、盛大に血を吐き出す。

カーペットに血を付けないように、フローリングの上に倒れる。

徐々に痛みが引いていくが、それは破壊と再構築を繰り返しているだけ。立て続けに痛みが俺を襲う。

「た、孝浩っ・・・・・・・・・」

佑寧が俺の背中をさする。

「汚れる、ぞ・・・・・・・・・」

血で汚れた手で軽く佑寧を押す。

が、力の加減が分からずに佑寧の小さな身体をソファーに押し倒してしまう。結果的には佑寧の服を汚してしまった。黒だから目立っていないが。

「はぁ、はぁ・・・・・・・・・」

『ライトニング適正筋繊維構築終了。ライトニング‐能力付加開始』

少し、首元がヒリヒリしてきた。それを感じた途端、次は全身が痺れて動けなくなる。

「うぐっ!?うあっ、・・・・・・ああああッ!!」

両手が強く痛み始める、それを堪える為にスーツの袖に強く噛み付く。

無様な姿を見せまいと、背を吹雪達に見せて顔を隠す。

「早、く・・・・・・霧崎の、所に、行かなきゃ・・・・・・・・・」

血を吐きながら、痛む腕を壁に叩き続ける。

「う、ああああ、ああああああああああああああああッッッ!!!」

痛みを掻き消す勢いで叫ぶ。すると、フッと痛みが消え去る。

「あっ―――――――――?」

何が起こったか分からず、その場に倒れ込む。

『能力付与―――――――完了』

やっと、終わったのか・・・・・・・・・。

倒れたまま足元に目をやる。そこには、おびただしい量の血の溜まりが出来ていた。

「・・・・・・・・・俺、生きてんの?」

「ええ、残念ながらね」

酷い事を言うが、顔は笑っている。怒りの笑顔では無く、本物の笑顔だ。

「さてと、早速だけど、遥の居場所、探してくれる?」

「あいよ―――――――っと」

重りを背負っているような感覚の身体を無理矢理起こし、ユカに支えてもらう。

「すまん」

「いいですよ」

ニッコリと笑うユカ。この笑顔には何度も救われる。・・・・・・あまり必要性は無いが。

「よし・・・・・・・・・やるぞ。リミット・セカンド‐エネイブル、受信開始ッ!!」

『リミット・セカンド‐エネイブル――――発動』

一瞬、何も聞こえなくなる。が、すぐに音を拾い始める。

『記憶捜索――――対象、霧崎遥の音声データをスキャン―――――完了。近辺、捜索開始』

一気に雑音が混じる。これは、人の足音だろうか。

頭の中に近辺の地形、建物の形が音を元に構築、データとして処理される。それを、タキオンで加速しながら高速でデータを構築していく。

『周辺マップ、データ化完了。―――――開示』

すると、網膜に地図が表示される。

地図と言うより、防犯カメラと言った方がしっくりくるだろう。

『霧崎遥の音声を収集、音声データと照合―――――終了、データ無し』

「クソッ――――――――――」

俺は、捜索範囲を更に拡大する。

『警告、捜索範囲拡大、影響計算不可』

構わない、警告を無視して捜索を始める。

『半径3km内の霧崎遥の音声を収集、音声データと照合―――――――終了』

これに期待するしかない。それ以上離れていれば、もう手も足も出ない。

『データ、一件』

「ッ、当たった!」

場所は!?、更に検索する。

マップを構築していき、霧崎の居場所を特定する。

『マップ構築完了、記憶捜索、霧崎遥の身体データをスキャン―――――完了、マップ内から霧崎遥の身体データを照合―――――――終了。データ一件、マップ拡大』

「・・・・・・・・出た。――――――ッ!?」

「ど、どうしたんですか?」

「・・・・・・・・霧崎の居場所が分かった。戻るぞ」

「戻るって、何処に?」

「居場所は何処なんだ?」

「ああ、霧崎の居場所は―――――――」

シュレイドを操作、網膜ディスプレイに映っているデータを三人のシュレイドに送る。

それを見た三人は言葉を失う。

霧崎の居場所は、俺達の良く知る場所だった。


「―――――――姫宮学園、体育館だ」




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