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SnipeShot・Eagle《スナイプショット・イーグル》  作者: 檻鷹 鼓路
第一章 アイドル護衛
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~弓道勝負(景品は俺)~

「お前、流石にあれは引くぞ」

「ええ、キャラ崩壊凄かったです」

佑寧とユカが吹雪を囲んで言葉を浴びせる。

学校は遅刻、でも、ボディガードを雇っている身という事で許しを貰った。

そして、今は昼食の時間。食堂で集まって食事を取っている。

「なんで小さな部屋の中で銃を撃つんだ。確かに、孝浩と一緒に寝てたのは許せん。私も奴の首を飛ばしてやろうかと思った。だが、場所が間違っている。ちゃんと夜道を出歩いている所を襲撃しろ」

それはおかしいと思う。

「そうですっ!。私が孝浩君の隣で寝てたのに、気付けばあの女に取られてるんですよ!?許せません、もうファンやめますっ」

いや別に、俺はお前らのでもなんでもないから。俺は俺だから。

「そ、そうね。今度は銃を撃たず、近接格闘で・・・・・・」

いやだから、そういう問題じゃないだろ?

しかし、口に出すと凄い冷たい目で三人から睨まれるので何も言えない。

さっきだって誤解を解こうとした瞬間ユカに張り倒されたし、佑寧にはスタンガンでビリビリされた。

吹雪に限っては発砲しながら追い回してきやがった。恐ろしすぎる。当たらなかった事を幸運と思わなければ。じゃなきゃ今頃背中に穴が空いてる。

「で、でも、元はといえばアンタが悪いのよ?クライアントと寝たりするから」

「それは悪いと思ってるけど、仕方なかったんだよ・・・・・・」

霧崎からそう頼まれたという事を包み隠さず話す。隠し事なんてしたら額に穴が空く。で、スタンガンと柔道の技のオンパレードだ。想像するまでもなく地獄絵図だというのが解かる。

「その、ごめんなさい。孝浩はアタシのわがままを聞いてくれただけなの」

「「「孝浩ォ?」」」

な、なんだ、その肉食獣みたいな眼光は。こっちみんな。

「部屋に居た時は時間が無かったし聞けなかったけど、アンタ、何時孝浩の事を名前で聞くようになったの?」

「昨日の・・・・・・あ、日にちは変わってたから、今日。今日の三時半位?」

「三時半、深夜、ベットの中の男と女・・・・・・これは―――――――」

佑寧が吹雪とユカに目配せをし、

「黒だな」

「黒ね」

「黒ですね」

「え、えええっ!?」

霧崎が声を上げる。俺は上げそうになったが、留まった。声を出すと死ぬからだ。人間だれだって命は惜しいだろ?

「なんで?なんで黒なのっ!?」

「うるさい、質問に答えろ!お前は孝浩に何回股を開いた?何ラウンドファイトしたッ?何回孝浩をイカせたァ!?」

「ちょ、ちょっと、ここ食堂――――――」

「私も気になります!孝浩君と貴方の子供はお腹に宿っているんですか!?」

「何言ってんの!?」

「私も言わせてもらうわ。―――――――名前、決めちゃったのッ!?」

「お前らちょっとストップ!。ストップストォォオオオオオップッ!!」

手を間に突っ込んで会話を中断させる。

肉食獣の眼光を向けられるがこの際気にしない。

「お前ら、色々勘違いしてるぞ。俺達はただ一緒に寝ただけで―――――」

「「「子供が出来たの!?」」」

「一緒に寝ただけで子供が出来るかっ!!」

なにしたら子供が出来るんだよ。いや、子供の作り方は知ってるけども。

霧島がプルプル震えている。これは、怒りだ。

「あ、アンタ達・・・・・・ッ」

おお、爆発するぞ。耳塞いでおこう。

そして、怒りが爆発した。テーブルをバンッ!と叩き、叫ぶ。

「まだ、アタシは処女よッ!!!」

食堂が、一気に静まり返る。今、こいつなんて?

「そ、そうだったか。すまん」

「い、言い過ぎました。ごめんなさい」

「なんだ、処女だったの・・・・・・横取りされたかと思ったわ」

・・・・・・いいのか、お前らそれでいいのかッ!他に言う事色々あるだろ!

「なぁ、ここ食堂だから。処女とかでっかい声で言うの、やめよ?」

苦笑いで伝えると、四人がハッと表情を固まらせ、周りを見る。

それはそれは冷たい視線を頂いております。

食堂に居た生徒全員が俺達に体を向けており、非難の視線を浴びせる。

この空気から抜け出したい。そう考えているのは俺だけじゃないはず。

「・・・・・・行きましょうか」

吹雪が立ち上がり、背中に視線を浴びながら食堂から出て行く。

あいつ、今の空気でよく出ていけたな。

背中に視線が集まりすぎて歴戦の勇者みたいになってんぞ。

「アタシ達も行きましょうか。部活の時間だし」

そう言って、霧崎も立ち上がり、吹雪に付いていく形で食堂を出る。

これで、霧崎も勇者の仲間入り、か。

寂しいものだな。俺の周りの奴らがどんどんと勇者になっていく。

見てみろよ。佑寧もユカも、後に続いて食堂を出て行くぞ。

俺も、勇者になれと?馬鹿野郎、なれる訳ないだろ。この死んだ空気の中を歩けと?大馬鹿野郎。

それは、自殺に近い。というか、自殺だ。

なんで、俺が非難されなきゃならんのだ・・・・・・!

周りの生徒(女)がコソコソと喋り始める。

「さっきの聞いた?」

「うん。霧崎さんの処女がどうのこうのって・・・・・・」

「まさか、あのボディガードの男の人に・・・・・・?」

「可愛らしい顔して、やる事大胆なのね。あ、ヤル事大胆なのね」

若干一名際どい所突いてきたが、事実じゃないので無視。

「もしかして、他のボディガードの人と・・・・・・?」

「みんなスタイルよかったもんね。一人幼女だったけど」

「まさか、「ロリコ」で始まって「ン」で終わるやつ?」

「引くわぁ・・・・・・他の二人は―――――――」

それ以上聞いていられなかったので、ダッシュで食堂を出る。もうヤダぁ!!

「なんでここまで、誤解が広がるんだよぉ・・・・・・!」





食堂から逃げ出し、吹雪達に追いつく。

「お、おいお前ら。どこ行くんだよ?」

吹雪達は教室には向かわず、部活棟に歩いている。

「ああ、アンタは保健室で寝てたんだっけ。この学校、午後は授業が無いの。下校時間まで部活。帰宅部の人は昼で学校は終わり」

昼で授業が終わる、というのは中々珍しい。カリキュラムが他の学校とは違うようだ。

「で、アタシは弓道部なの。外に弓道場があるから、付いて来て」

ほぉ、霧崎が弓道部とは珍しい。帰宅部かと思った。アイドルの仕事とかやってるし、部活やってるイメージが全くなかった。

「自分で言うのもなんだけど、結構実力あるのよ?カッコいい所、孝浩に見せてあげる」

ニヤリ、と、意地の悪い笑みを浮かべる。何考えてんのかわからん奴だ。

「・・・・・・私もやるわ」

修羅の面を被った(と思える位不機嫌な顔をした)吹雪が言う。

「アンタ、弓道できるの?」

「的を狙うのは得意よ」

こちらも意地の悪い笑みを浮かべる。こいつら、似てる所あるな。

「じゃあ吹雪、勝負しない?勝ったら孝浩に一つ言う事を聞かせれる、っていう条件付きで」

「望む所よ、遥」

そういって、お互い火花を散らし合う。・・・・・・俺の意見も無しに。

「おい、勝手に話を進めるな。私も混ぜろ」

「そうですっ。何二人だけの話にしようとしてるんですかっ」

何故かチャレンジャーが二人追加される。

「じゃあ、決まりね」

「なにが決まりね。だよ。俺の意見が入ってないんだ、無効に決まって――――おい、おいていくな!」

四人が一斉に弓道場へと走り出す。

部活動は真剣にやれよ・・・・・・。

「道着に着替えてくるから、アンタは先に行ってて」

「あ、はい・・・・・・・・・」

俺、人権すらないの?





吹雪達が着替えている中、俺は一人弓道場へ入る。

「おお、本格的だ」

ここの弓道場は近的きんてき遠的えんてきが両方設置されている。

既に数人が道着を着て矢を放っている。一年生だろうか、先輩が弓の持ち方を指導している。

やはり初心者は近的場で矢を放っている。距離があるし、遠的は難易度が高いんだろう。

先輩らしき人が手本で的に矢を放つ。

足踏あしぶみから残心ざんしんまで綺麗なフォームだ。

「――――――――あら?」

俺に気付いたのか、会釈をしてくる。

こちらも軽く頭を下げる。クソッ、ぼっちの奥義其の壱『端っこで姿を消す』が通用しない。こいつリア充だ。警戒しておこう。

「貴方、キリちゃんのボディガードさんね?」

「あ、はい」

キリちゃん―――――霧崎のあだ名、というか、ファンの間で呼ばれている愛称だ。

「見学かしら?」

「いや、ここで待ってるように霧崎達から言われて」

「達?」

「あ、他のボディガードも来るんです。なんか、勝負?するらしいです」

景品は俺。人権無視ってこの事っすよ先輩。

「へぇ~・・・・・・。あ、君って弓道に興味ある?」

「いや、あまり――――――――うわっ!?」

俺の言葉を最後まで聞くことなくスーツの裾を引っ張られる。

この学校の生徒って、案外強引な人が多いんだな。

「ねね、ちょっとこれ射ってみて。自分の思った感じでいいから」

「はぁ・・・・・・・・・」

渡された弓と矢をテレビで見たまんまの通り構える。

・・・・・・いや、普通に射ってもなんか味気無いな。


「・・・・・・・・・イーグルアイ、起動」


小声で音声コマンドを入力、受信。目が赤く光る。

突如、矢から放物線を示す白い線が現れ、的の中心に留まる。


「そこ――――――――ッ」


弦を引いていた手を離す。すると、矢は放物線を描いて的に刺さる。

「・・・・・・・・・こんなもんすかね」

鷹の目を解除し、軽く息を吐く。

的を改めて見ると、綺麗にど真ん中を貫いていた。これはこれで気持ちいい。スカッとする。

「すごい、すごいわっ!貴方、これ初めてなのっ!?」

「まぁ、はい」

実は、鷹の目は使用者の『射撃能力関係全般』を達人級までに引き上げる。

銃、弓矢、クロスボウ、なんでもいい。遠距離攻撃全てが可能になる。

どういうシステムかはわからない。実際、弓を射つのは今日が初めてだ。

狙撃なら、使わなくてもまあまあ出来る。狙撃銃しか握ってなかったからかな。

「貴方、もっと練習したら上達するわよっ。さっきのがまぐれでも、狙って的を射る事ができるようになるわ!」

手を合わせて飛び跳ね、期待を含めた視線を送ってくる。

「あ、でも、貴方はボディガードだし・・・・・・というか、ここの生徒じゃないしね」

あはは、と、笑いながら手をパタパタさせる。

「部長、孝浩になにか用ですか?」

後ろから声を掛けられる。道着を着た霧崎達だ。

「あ、ああ、弓の事を色々教えてもらってたんだ。ね、部長さん?」

「ええ。私の方をじっと見てたから、気になるのかな~って」

そんな事言っちゃダメですって先輩。

ほら見てみろよ、四人からのジト目。嫌だなぁ・・・・・・。

「・・・・・・先輩、隣の近的場借りていいですか?」

「いいけど、何するの?」

「ちょっとした勝負です。ここの三人と」

「そう、わかったわ。・・・・・・あ、でも、いいの?実力に差があると思うけど・・・・・・」

「私はこういうの得意です。というか、大好物です」

「私の手に掛かればこの勝負に勝つ事が出来る。この事実に変わりはない」

「弓道は嗜む程度にやっています。それなりの自信はありますよ」

全員道着の袖を結び、気合十分といった姿勢を取る。

「じゃあ、始めましょう。ルールは一発勝負、的の中心に矢が一番近かった人が勝ち。それでいいわね?」

すぐに決着がつきそうなルールで、弓道勝負(俺が景品)が始まる。


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