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壁越しの二人   作者: 雄たけび巨人
第5章 壁越しの心音
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現れた泣き虫

 私は、暗闇の部屋の中でずっと一人でいた。

 出来ることは、いくらでもあったはず。

 言われれば、思いつきそうなものだが、もう私には考える余裕がまったく無かった。

 元気なフリをして、実のところは常に綱渡り状態で、自分の心の闇に気付きつつも、否定して……隠して……逃げて。


「もう、限界……なのかな」


 私は、のろのろと腰を浮かせて、今後の準備を進めていた。

 なんてことはない。

 また逃げるのだ。

 少し世界が変わるだけだ。

 一瞬、痛みを味わうだけ。

 それだけ……


―――ドンドン!―――


 緩慢な動作で、視線を由雄くんのいた部屋へと向けた。

 微かな人の気配を感じる。

 由雄くん……?そんなわけがない。

 でも、この期に及んでも彼には期待してしまう。

 期待………………?

 なんで、私が居たいのは此処じゃないはずなのに。


「由雄……くん?」


 恐る恐る、問いかける。

私は、そっと壁に耳をつけ隣の部屋の様子を確認する。


『……………………』


 声は聞こえないが、微かに息遣いが聞こえる。

 由雄くん……じゃないと思う。


「…………誰? 由雄くんなの?」


 私の問いかけに対して、それでも壁の向こうからは返答がない。

 気味が悪くなってきた私は、堪えきれず壁を叩く。


「誰かいるんでしょ? 返事してよ」


 それでも返事がなかったので、私は再三にわたる呼びかけを行おうとした。

 その時だった……


『志継さんだよね……?』


 壁越しから聞こえてきた声は、儚くも芯の通った声。

 私は、その声に聞き覚えがあった。

 たぶん、一番聞きたくない声だったかもしれない。


「なん……で? 志穂ちゃん……?」

『………………よかった。ここじゃなかったら、どうしようかと思ったけど……やっぱりここに戻ってきてたんだね』


 思考がまとまらず、混乱し焦燥感に煽られる。

 なんで?

 どうして?

 歯噛みした私は、彼女になるべく穏便に立ち去ってもらうことを画策する。

 そのための第一声が……


「帰って……」


 ここまで直球な発言になってしまった。

 ああもう、私には言葉を選んでいる余裕もないのかと本気で後悔した。


『嫌です。あたしは、志継さん……あなたを助けに来たんですから』

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