焦りと空虚
「あれ?」
妙な違和感を覚えた志継は、後ろを振り返る。
――何かがぶつかったときのような音が響いてきた。嫌な予感がする。理由はわからない。何が起こっているのかもわからない。だけど、何故だろう…
『…ここ最近、トラックのスリップ事故が多いから気をつけろよ』
昨日の朝礼で先生が言っていた言葉が頭の中をグルグルする。そして、気がついたら私はペダルをこいで、先輩たちの走っていった方向へと向かっていた。
(先輩‼)
もはや私は、祈る思いで自転車をこいでいた。もしも、神様が本当にいるのだったら私の考えている悪夢だけは、どうか現実にならないで!
(先輩……)
訳もなく、涙が溢れそうだった。むしろ、今ここで泣きたいくらいの思いでペダルを前後に動かす。
こぎ始めて、5分くらいが経った頃だろうか。目の前に、大きなトラックが見えてきたのに気づく。しかしそれは……歩道沿いにある未だシャッターの閉まっている店に突っ込んでいた。
(……!)
同時に私は、何人かの人影を霧の中でおぼろげながらも確認する。それが見知った人間であることはすぐにわかった。
「先輩っ‼」
頭で考えていたことが口から出ていた。まだ伊達先輩の安否どころか存在すら確認できていなかったが、とにかく叫んだ。そこに何人かの同輩・先輩が横たわっているのを見て焦燥感は一層に増した。そして……
「せんぱ…」
「ノゾム…ノゾムぅ……」
探し求めていた人は、思っていたよりもあっさりと見つかった。
「ノゾムゥゥッッ‼」
そこには、私の大事な人が紗緒里先輩に抱えられて横たわっているのが見えた。私は……涙も流れない。そんな空っぽの頭で、私はただただ先輩を見ていた。
「シノブかっ⁉ 救急車を‼」
「……」
「早く!!」
紗緒里先輩の隣にいた円先輩が鬼気迫る形相で私を急かす。私は空っぽの頭をそのままに体だけを動かしていた。
「……………………」




