第5話
長い話し合いの末、やっと開放されたイフリードは疲労感を感じ、自分の着替えを手伝おうとするメイドを下がらせた。
スフィア召喚が失敗し、王宮はかってないほどの混乱で大騒ぎだ。
夜遅くまで今後について審議され、結局答えは出ないままとなってしまった。
とりあえず、もう一度書物を調べ直すということだけが決まり、イフリード達は開放されたのだ。
「ふう」
マントを外し、正装服を脱ぎ出す。
見てみたいという程度ではあったが、イフリードはスフィアに対し少し興味を持っていた。
絶世の美女とも謳われる女神の娘スフィア。
額に花びらのような痣を持ち、白い髪に金の瞳を持つ美女だという。
美女なら見慣れている。
正直に言えば、もう見飽きていると言っていいだろう。
この王都には自分の美貌に自信がある者ばかりが集ってくるのだから……。
それでも創造主である女神の娘となれば話は別だ。
イフリードは下着のズボンを残し、全て脱ぎ終えると、ベッドのある寝室に向かった。
腰に携帯していた剣はまだ手に持ったままだ。
イフリードはどんな時でも、この魔法剣を手放すことはない。
この国で最高の魔法剣ということもあったが、イフリードは王族の一員だ。
いつ何時何が起きるか判らない。
寝室を開けてみれば、ベッドが明かに不自然に膨らんでいた。
この部屋は王宮の中でも、王族の住居ということで、厳重な警備がされて並大抵なことでは入りこめない。
イフリードは魔法剣の柄に手をかけ、ゆっくりと近づく。
もともとの才能もあったのだろう。
イフリードの剣士としての腕前はかなりのもので、大抵の剣客には負ける事がない。
警戒しながらも上掛けに手をかけ、ゆっくりめくってみれば1人の女性がうつ伏せになって、あどけない寝顔ですうすうと気持ち良さそうに寝息をたてて眠っている。
イフリードは王族の式典には必ず顔を出す。
どこかで自分を知り、ベッドに潜り込んできたのかもしれない。
イフリードは細身の短剣を魔法剣の鞘から引き抜き、腰のベルトに差して魔法剣をベッドの横に置く。
そして、イフリードはその女性の横に自分の身を滑り込ませた。
女性はイフリードが体を寄せても、気持ち良さそうに眠ったまま起きる事はない。
この女性が自分の命を狙っているのか、はたまた一時の夢を求めてきたのか判明しないが、どちらだったとしてもこれだけ熟睡するような間抜けさでは警戒する必要はないと判断したのだ。
イフリードは眠っている女性の体を引き寄せてみるが、まったく目が覚める様子はない。
王宮では珍しい短髪。
ふっくらとまるい頬。
ぷっくりとしたピンクの唇。
容姿はそれほどではないものの親しみやすく、愛らしさがあり、保護欲を感じさせた。
「君は何者?」
そう呟き、イフリードは眠りについた……。
・・・ふう。天花ちゃん登場( ̄▽ ̄)