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第2話

 夕闇せまる時刻。

 王の第三子であるイフリードは王族の1人として、スフィア召喚の立ち会いに呼ばれ身支度をしていた。


 正装に身を包んでいるイフリードはすらりとした長身で、筋肉質ではないものの剣士として訓練を欠かさなかったせいか、かなり引き締まった体をしている。

 整った容姿は母譲りで美しく、立っているたけでも男女関係なく人を惹きつける魅力の持ち主だった。


 その魅力の1つが瞳だ。

 母譲りの赤い瞳は吸い込まれそうな輝きを放つ。

 視線が合うと、まるで魅入られたようにそらすことが出来ない。


 長くさらさらとした髪は父譲りの金髪で、後ろで1つに紐で結んでいる。

 その紐は瞳に合わせて緋色だ。


 イフリードはメイド達が自分を熱い視線で見つめていることも気にせず、剣を媒体にし魔道力を使うことの出来る剣である魔法剣を素早く腰のベルトにくくりつけた。


 マントをメイドから受け取り、自分で肩の紐に結んでヒダをつくる。

 あとはメイドが細かな場所を整えて支度は終了だ。


 支度が済むとイフリードは神殿に行く前に、自分が所属している軍本部へ行く為、部屋を出た。


 このルーディアで魔道力を使うことの出来る者は少ない。

 魔道力は誰でも生まれた時から備わっているのだが、なぜか力を使うことの出来る者がほとんどいないのだ。

 もし力を使うことが出来き、剣の力を覚えれば誰でも魔道剣士になれるだろう。


 魔道力を使える者は普通、国の軍に所属し魔道騎士になるのだが、イフリードはこの世界中の歴代の王族の中で魔道力を使えるただ1人と言う珍しい存在だった。


 王位継承権は持っているものの継承者としては随分と下の方になるということで、イフリードの希望は聞き入れられ軍に所属する事が許されたが、王族である為に騎士にはなれない。

 だからといって王族に門番や護衛をさせるわけにもいかない。


 よって、イフリードは軍に所属ししているが特殊な立場にいた。


 また、剣士としての仕事よりも何かあれば王族としての職務が優先される為、隊や団に所属する事が出来ず、単独行動の任務しか仕事はない。

 イフリードはそのことに不満を感じつつも王族に生まれた者としてその運命に従ってきた。


 人は運命の前に無力である。

 それがイフリードの考えだ。


 第三子ということで気楽な立場はありがたく、うたかたの夢のごとく人生を楽しみ、今まで生きてきた。


 先日母親である王妃に呼び出され、もうそろそろ身を固めるようにと言われたが、一番上の兄には2人の子供がおり、2番目の兄には3人の子供がいる。


 すべて男の子だ。

 無理に血を残す必要性がないのだが、どうやら女の孫を母親は自分に希望しているらしい。


 せっかく身軽な立場なのだ。

 身を固めればそれなりのしがらみが生じる。


 それに見合う相手に出会えればいいが、今までそういった女性に出会ったことはない。

 しかも、イフリードには身を固めることの出来ない理由があった。


 その理由は誰にも言う事の出来ない重要なもので、その場を濁す意味合いを兼ねて『運命の相手』となら身を固めてもいいと言ってしまったのだ。


 いくら母がもと召喚師だったと言え、自分の運命の相手を召喚できるはずがない。

 そう思っていたイフリードは、その後、自分が言った言葉すらも忘れていた……。



 イフリードが自分の部屋から出た頃、空が闇に覆われ神殿でのスフィアを召喚する儀式の準備が完了し、後は召喚の儀式をするだけとなっていた。

 その同時刻、王妃は穴だらけの書物から『運命の相手』を召喚する儀式と呪文を見つけ出し、使われていない部屋の床に召喚用の魔法陣を描いていた。



 運命が重なり、歯車が回り出す。


 こうしてレジルファン国では女神の娘、スフィアが召喚されようとしていた……。











 立ち入り禁止となった神殿では、極秘にスフィアの召喚が行われようとしていた。


 立会っている者は国の重要人物ばかりだ。


 王や姫はもちろんのこと、3人の王の子。

 大臣達、そして神器を作る造形師までが揃っている。


 神殿にはスフィア召喚用の女神の間があり、床には召喚用の大きな魔方陣が描かていた。

 あちらこちらに召喚に必要な物が置かれ、神官長が魔方陣の真ん中に立っている。


 手にはスフィア召喚の呪文書。


 みんなが見守る中、厳かに神官長がゆっくりと呪文を唱え出した……。






 王宮の一室では王妃が1人、召喚儀式を行なおうとしていた。


 神殿で召還が行われている事を、王妃は王族ではありながら知らされていない。

 スフィアの召喚は、国の重要人物だが、王妃は国の運営に関与出来ない為、極秘事項を知らされることはなかった。


 その為に、王妃は古い書物に書かれている召喚魔方陣を部屋の真ん中に、手際良く召喚に必要な物を置くと、魔方陣の中に入って召喚呪文を唱え出した。


 部屋には王妃以外誰もおらず、王妃を止める者はいない。






 みんなが静かに見守る中、神殿では神官長が召喚呪文を読み進める。


 たった一人、誰もいない部屋で王妃が召喚呪文を唱える。






 神官長はスフィアを、王妃は息子の運命の相手を召喚するために……。


 同日の、同時刻、別の場所ではあるものの王都で召喚儀式が2つ。






 運命の歯車は大きな軋む音を立てて周り始めた……。




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