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第10話

 『姫』の住む建物から出てから、天花はイフリードによって王宮内を案内してもらう事となった。


 とは言っても王宮なのだ。

 全てを回る事が出来ない為、天花にとって必要となりそうな場所を選んで案内された。


 案内された先の随所で歴史に絡め、スフィアに関係する内容などもイフリードが判り易く説明してくれる。

 そのおかげで天花は現在の大体の状況を把握することが出来た。



「ここは?」



 イフリードが最後に案内してきたのは、王族の住居のさらに奥にある離れの建物だった。

 ドアの模様は6枚の花ばかりがあしらわれている。



「花金鳳花の館。たぶん君の部屋だよ」

「え?」

「どの大国にも必ず王宮には花金鳳花の館がある。方角的にスフィアの力を倍増させる位置だとか憶測があるようだけれど、実際のところはわかっていないが、必ずスフィアの部屋が用意されているんだ」

「へえ」



 部屋の中は常に清潔に清掃されている。

 そこは確かにスフィアの部屋ではあるが、部屋の主であるスフィアがいない時は、最も重要な人物が使う部屋として使われていた。

 天花がスフィアとして認められれば与えられるはずの部屋だ。


 室内をきょろきょろしつつ天花は部屋を見て回る。

 そんな様子を面白そうに見ているイフリードに来客がやって来た。



「イフリード? ここにいるのですか?」



 声が聞こえて2人が振り向けば、部屋の扉に萌えるような緋色の髪と赤い瞳のイフリードそっくりな美しい女性が立っていた。



「母上?」

「今、あなたの部屋に行ったのだけれど、ここにいると聞かされたの」



 イフリードの母親、つまり王妃は天花の姿を認めると、とても嬉しそうに笑った。



「あら、私はジルベール・レレジルファン。イフリードの母親です」

「あ、始めまして、天……」

「母上!」



 うっかり自分名前を名乗ろうとした天花の言葉をイフリードが遮る。

 それに気づいていない天花は、驚いて言葉を止めた。

 イフリードは天花がこれ以上おかしなことを言わないように、少し斜め後ろに隠す。



「姿は伝えられたものと異なりますが、彼女はどうやらスフィア様のようなのです。先ほど姫がお認めになりました」



 そう言われ、今度は王妃が困惑した表情に変わった。



「スフィア様?」

「ええ、ほら」



 そう言ってイフリードが天花の額の痣を見せる。



「まあ、では、あの方は女神様でいらっしゃったのね」

「? 何の話です?」

「いいえ、こちらの話ですよ」



 天花がスフィアと聞いて喜んだ王妃とは対象に、今度はイフリードが困惑した表情に変わった。



「それで、私に御用ですか?」

「あ、ええ、そうなのよ。前に、もうそろそろ身を固めるように話したら、貴方は私に『運命の相手』なら身を固めてもいいと言ったのを覚えているかしら?」

「そんなことを話した覚えがありますが、今は……」

「まあ! ちゃんと覚えていたのね。それは良かったわ。貴方の横にいるスフィア様こそ私が召還した貴方の運命の相手ですよ」

「は?」



 イフリードは突然の告白に、停止してしまう。

 王妃はそんな息子に構わずに話を続け出す。



「私が召還師だったことは忘れていないでしょう? 貴方の運命の相手を召還したら彼女が召還されたのです」

「ちょ、ちょっとお待ちください! では、私の部屋にテスフィア様を寝かせたのは」

「私です。運命の相手なのだからかまわないでしょう?」

「母上!」



 咎めるようなイフリードの声に、王妃は不思議そうにしている。



「母上が先にスフィア様を召喚していたのですか? 神殿にて召還儀式を行った際、スフィアが召還されなかったことでどれ程混乱が起きたことか!」

「そのようね。ですが、私には極秘事項は教えていただけないのですもの。知りようがないでしょう? とにかく、貴方の運命の相手を召還したら彼女が召還されたのです。それがたまたまスフィア様だっただけということ」

「ですが……」



 余裕の笑みを浮かべ、さらりと衝撃的なことを言う王妃に、イフリードは思考を整理することが精一杯な状態だ。

 そんなイフリードを尻目に、王妃は天花に近づいてその手を取った。



「スフィア様、私には3人の息子がおります。しかし、この子だけが落ち着こうとしなかったので、少し話をしたところ、『運命の相手』となら結婚しても構わないとの事だったので、私はこの子の運命の相手を召還することにしたのです。そしてその召還に応えてくださったのがスフィア様なのですわ」

「は、はあ……」

「私の息子をよろしくお願いいたします」



 王妃に優しく微笑まれるが、突然よろしくされても天花は戸惑うばかり。

 天花だって混乱しているのだ。

 とにかく、天花がイフリードのベッドに眠っていたのは、この王妃のせいだということだけは理解できた。



「えっと、具体的にどうよろしくすれば……」

「君も真面目に返さなくていい!」

「イフリード?」

「まあ、イフリード。なんて事を言うのです」

「いい加減にしてください、母上」



 事態はますます絡まるばかりなのに、いきなり始まった親子ケンカに天花も口を挟むことが出来ない。

 結果、迎えに来た『姫』が事を収めた。




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