呪いの日本人形に毛根を全摘出され、散髪代浮きに歓喜した高校生が抜け毛をフリマアプリ出品する話
部活帰りの高校生・タケシの玄関に転がるのは、ハゲ散らかした不気味な日本人形。
夜ごと夢で追いかけられ、翌朝にはツルツル頭に――。
掃除も散髪も、呪いすらも損得勘定でハックする、高校生のねっとり不条理な日常。
タケシ「……は? 誰だよ、不法投棄。掃除ダル……」
部活帰り、玄関を開けると目に飛び込んできたのは、ドロドロに汚れたハゲ散らかした日本人形。床には黒い毛がねっとり揺れている。
タケシ「おい、そこ。不法投棄禁止……マジで玄関汚れるからやめてくれ」
息を吐き、タケシはコロコロを手に取った。
タケシ「……今日も戦争かよ」
夜の自室。粘着クリーナーを無心で転がすタケシ。
人形は虚無の瞳でじっと見つめ、一本、黒い毛を落とす。
カサッ……
タケシ「あー、もう! 十分前に掃除したばかりだろ! スペアテープ代、一巻き三十円だぞ!」
怪夢――ハゲ人形とルンバ
その夜、タケシは奇妙な夢を見た。
ハゲ散らかした日本人形が血走る目でルンバに乗り、追いかけてくる。
ルンバは無機質な声で告げる。
「対象認識。掃除モード起動」
ウィーーン、と床を掃除する音が部屋中に響く。
タケシ「俺はゴミじゃねえ!」
タケシは必死で逃げ、刷毛が頭に触れた瞬間に目を覚ました。
額には汗が滲み、布団はぐっしょり濡れている。
翌朝――
タケシはゆっくりと起き上がり、自分の頭をさすった。
タケシ「……おい。……おいおいおい、嘘だろ」
鏡に映るのは、ツルツルの自分。髪も眉毛も一本もない。
タケシは静かに電卓を取り出す。
タケシ「カット代四千円×十二ヶ月……あ。年間で五万円以上浮くわ」
にやりと笑うタケシ。人形に向かってつぶやく。
タケシ「お前、意外と腕いいな。散髪も省けて、マジでラッキー。使えるかも……」
数日後――
ベッドに溜まった抜け毛をかき集める。
タケシ「よし、敷き詰めれば……プチプチ代三百円浮くな。地産地消、エコだ」
フリマアプリ『メルカル』で出品手続きを進める。
タケシ「【訳あり】日本人形。植毛済み。散髪や毛根ケアでお悩みの方にオススメ。※返品不可」
出品を終え、タケシは日本人形を見つめて笑った。
「今からお前……新しい飼い主の毛も綺麗に“清掃”してやれよ」
駅のホーム――
売上金の通知を眺め、タケシはほっと息をつく。
ふと前を見ると、一人のツルツル頭の男が大量のハゲ人形を抱え、抜け毛を愛おしそうに撫でていた。
タケシ「……あれ、あの人……まさかな…笑」
二度目の夜――
霧の校庭。タケシの足元にひんやりとした砂の感触。
ひび割れた日本人形が現れ、長い黒髪がセグウェイに絡みつき、回転しながら迫る。
カラ…コロ…カラ…コロ…
タケシ「やめろ……来るなァァァ!」
逃げても背後から追走音が迫る。
ついに転ぶタケシの目の前で、ハゲ人形は止まり、割れた口の奥で髪が蠢き、笑ったように見えた。
タケシは叫びながら目を覚ます。
翌朝――
鏡を覗くと、ひび割れた顔で目と口の隙間から髪を噴き出す“ハゲ人形”の自分が映っていた。
しかし、ツルツルだった頭には確かに髪が戻りつつある。
タケシは鏡をじっと見つめ、不敵に笑った。
タケシ「……掃除も散髪も、これでしばらく楽勝だな」
鏡に映る自分と、ひび割れた人形の表情が交錯する。
日常と非日常がねっとり絡み合う、この奇妙な毎日――
タケシはその不条理な世界を、少しだけ楽しむことにした。
こんにちは、作者のまーです。
本作は「掃除がダルい」気持ちから生まれた、不条理サイコホラーです。
タケシのように合理的に損得勘定をしてしまう人、そして抜け毛に翻弄される人の気持ちを、
ちょっとだけ楽しんでもらえたら嬉しいです。
日常の小さなストレスも、こうして奇妙な物語になる――そんな遊び心を込めました。
読んでくださった皆さん、ありがとうございました。




