第2章 統計の顔
午前中のスーパーは、棚の補充が多い。通路の端に段ボールが積まれ、店員が無言でそれを片づけていく。私はカゴを持って、必要なものだけを拾った。
レジの前で立ち止まると、表示が切り替わる。
順番は、ひとつ前に進んでいた。
以前は、並ぶ列を自分で選ばなければならなかった。どこが早いかは、だいたい勘だった。今日は、迷う必要がない。空いた場所に立てば、案内が出る。
会計は短く終わった。袋詰め台で、買ったものを入れる。牛乳、パン、卵。余計なものは入っていない。
出口のセンサーが反応し、軽い音がした。
外は明るく、日差しが強い。
病院に寄る予定があった。予約は午後だったが、用事を早めに済ませておきたかった。受付で名前を告げると、端末に視線を向けられ、すぐに番号が表示される。
「少し早いですが、大丈夫です」
そう言われ、椅子に座る。待合室には人が多かったが、騒がしくはない。掲示板には、現在の進行状況が出ている。遅れは出ていなかった。
隣に座った高齢の女性が、書類を落とした。私は拾って渡した。
「ありがとう」と言われ、うなずく。
呼び出しは思ったより早かった。
診察は簡単で、特に問題はなかった。
「次は、半年後でいいでしょう」
医師は画面を見ながら言った。私は「はい」と答えた。
受付で、次回の予定が自動的に登録される。
建物を出ると、風が吹いていた。
歩道の信号は、残り時間を示している。急ぐ必要はなかった。
途中、交差点の角で工事が行われていた。作業員が誘導灯を持ち、車を止める。渋滞は起きていない。遠回りを指示されることもなかった。
自宅に戻ると、ポストにチラシが入っていた。
防災訓練の案内と、生活支援サービスの告知。
紙の下のほうに、小さく説明が書かれている。
対象条件、優先順位、受付方法。
私は特に読まずに、机の上に置いた。
昼食をとり、洗い物をする。水はすぐに温かくなった。
蛇口を閉め、手を拭く。
スマートフォンが鳴る。
通知は、交通情報だった。近くの道路で混雑があるが、影響はない。
私は画面を閉じた。
生活は、滞っていなかった。
誰かが判断してくれている、という感覚もなかった。
ただ、順番が回ってきて、案内が出て、用事が終わる。
それだけだった。
数字や確率は、顔を持たない。
顔を持たないまま、今日も機能している。
それで、問題は起きていなかった。
ありがとうございました。
感想をいただけるとありがたいです。




