距離
友美は食後お風呂の中でバイクに乗る為しがみついた頼政の背中の感触を思い出していた。
1年の入学式で出会って、本当ならもう付き合っててもおかしくないのに…実際は入学式の日から何一つ変わってない。
「仲良くなりすぎたんだろなぁ〜きっと。」透明なお湯をくるくるとかき回しながら思う。
サークルが同じだし学部も同じなので、何となくいつも一緒に行動してる。
「付き合ってもいないし女の子の友達出来ないし…私これで良いのかなあ〜?」ふと不安になる。
でも、テニス同好会から救って貰ったのは本当にありがたかった。柄が小さいから大人しく見られて初対面の男にかなり厚かましく踏み込まれる事が多いのだ。
女には舐めた態度されて、男には勝手に付き合ってるような話に持っていかれる。
特にテニス同好会は九条家御曹司君が自分の別荘使ってやりたい放題してたらしい。
女の子達は薬盛られて動画撮られて脅されて、それをヒミコが暴露して大事になったのだ。
その後に同好会の男子は警察の手が届かないように入院や留学してほとぼり冷めるまで潜伏してたのに次々と殺されてしまった。
頼政のおかげで巻き込まれずに済んだ。
本当に感謝してるのだ。
でも…絶対踏み込んで来ない。距離は詰めるけど、絶対精神的な距離は詰めない。
それがにこの頃、何だか寂しくなってきたのだ。
さすがに2年生だ、もう。
もしかしたら…本当に友達なだけなんじゃないだろうか?と不安を感じるのだ。
お風呂を上がると母はソファで眠り込んでいた。
頼政がいない。
2階の突き当りの部屋をノックする。
「はい」頼政が中に居た。ベッドで転がり携帯をポチポチしていた。
「お母さん爆睡してるし頼政お風呂入りなよ。今日はさすがに疲れたでしょ?」とベッドに腰掛けながら言ったら、
「う〜ん、そうだよなぁ〜色々あったよな。
頭の中整理してたんだ。
水脈が戻り、鵺が蘇った?
先生が鵺の発生も教えてくれたじゃん。」頼政は宙を眺めて腕を組む。
「私は学童がとにかく嫌だったなあ〜職場でフキハラまき散らす人っているんだね。
給料貰ってストレス発散とか信じられないわあ〜」友美はまだプンスカしながら濡れた髪を拭く。
「ドライヤー早くしなよ〜」と言いながら頼政は友美の濡れた髪の匂いを嗅ぐ。
「もう、何すんのよ!」頼政の頭を叩く。
「痛えなあ〜人間の匂いってこんな感じなんだよ。
脂の匂いが混ざったような。でも鳥とか毛のある生き物みたいな匂いがしたんだよ。あのマダム。」頼政が首をひねる。
「エ〜ッ、私は香水と化粧品の匂いキツくて、そっちが苦痛だったけど。デパコスの外資系の化粧品ってスゴい匂いじゃん。
てか、私の匂いって脂なの?」友美はショックを受ける。
「人間って毛が無いから脂臭が前に出るんだよ。
香水はだから発展したんだよ。外資のは特に脂臭消す系多いんだよ。
俺は好きだよ。豚骨ラーメンみたいな臭いで。」頼政がまた嗅いでる。
「…なんか私はショック。私も香水つけようかなあ?」友美は髪を拭いたタオルを嗅ぐが良く分からない。
「あっ、俺サボンとかリネンの香り好きなんだよ〜
旅館の寝具類も俺提案して保管庫にディフューザー置いてるぜ。」と笑う。
「知らなかった。そんなに鼻良いんだ。今度香水選んでよ。
エ〜ッ、やっぱり良く分からないや。」タオルをクンクンする。




