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鵺の声  作者: たま
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霊弓

「ごめん!遅くなった!」タクシーからヒミコが飛び出してきた。アキラが見波に抱えられてゆっくり近付いて来る。

その指でマントラを唱えながら手印を結ぶが、すぐに消失してしまう。

「クソッ!地霊が邪魔する!何でだ!」アキラがいらだつ。

「良く分からないけど、この京都で家のため犠牲になった女達の怨念が強いんだと思います。

日本と言う国は、女の我慢と忍耐と犠牲で成り立っていましたから。

どうしても幽霊が女が多いのは、そういう歴史を皆が肌身で感じてきたからで…待って!試してみます!」恭子が急に鵺に向かって叫んだ。

「私は、守りたい!私の大事な者を!人を!

あなたのエゴの為、見栄の為、死なせたりしない!」言うなり舌をガリッと噛んだ。

口から血が滴る。

地面がユラユラと揺れ出す。

「…!!!イケる!地霊の力が揺らいだ!」アキラがマントラを唱えながら手印を結び、地面から弓を創り上げる。

「見波、これで鵺を射てくれ!俺は今抑え込まれてるから無理なんだ…」アキラが見波に弓を託す。

「無理!僕じゃ無理だって!

そうだ!頼政!お前、弓道部だったじゃん!国体も行ったし!お前だよ!」アキラから受け取った弓を大急ぎで頼政に託す。

「守る気持ちしか鵺を殺せないよ!鵺は、我が子を家族を守りたい女の気持ちの怨念なの!

アナタの守りたい者を強く心に描いて!」恭子が頼政に叫ぶ。

友美の顔を見る。

鵺のノドが塞がれば、ココに居る皆が死ぬ。

友美も死んでしまう。

いやだ!絶対、絶対守りたい!命にかえても!

頼政は友美を抱きしめる。

「よし!やる!南無八幡大菩薩(なむはちまんだいぼさつ)!」これは頼政の(まじな)いだ。

弓を射る時はいつもこう唱えるのだ。国体出場を決めた時もこれで決めた。

ブインッと弦が弾ける音が響いて、まさに声を発しようとする鵺の胸に刺さる。

アキラが結んだ霊弓矢は清子の鵺の胸を貫いた。

清子の怨念と頼政の願いが、拮抗する。

鵺は藤原詮子の息子を弟を守る気持ちが化した妖怪なのだ。

だんだん鵺の身体が固まっていく。羽根は止まり地に落ちた。

アキラがヨロヨロと直接触れる。煙を上げてその身は小さな小さな鳥のミイラのように固まった。

「死んだの?」見波がアキラの身体を支えながら恐恐(こわごわ)と聞く。

「ああ〜何とか、ギリギリだが。」アキラが尻もちをつく。やっと地霊の圧からも解放されたようだ。

頼政が放った弓矢も消えた。地霊へと戻ったようだ。


「手だけ清めとけよ、鵺神社で。鵺の魂を戻しておけ。また、誰かが呼び覚ますかもしれないがな。」アキラが頼政に忠告する。



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