詮子の死
「先生、何でしょう?」友美と頼政は日本中世史の藤田教授に急に呼び出された。
「ああ、すまん。家で藤原詮子の事で気になる話が書いてる本があったの思い出してな。」とかなり古い本をテーブルに置く。
「これは冷泉家の書庫あったものの写しでな、気になる記述を昔読んだ気がしてたんだ。」とそのページを開いて見せて貰ったが…漢文で全く2人は読めない。
「あの、まず冷泉家が良く分からないのですが…すいません。」頼政がペコッと頭を下げる。
「おいおい、横に藤原家の姫が居るだろ?
冷泉家も同じ藤原の古い家柄だ。
藤原詮子に関して気になる記述が藤原家に残ってたらしい。」藤田先生が声をひそめる。
「表向きは膿が出て止まらなくなり弱って亡くなったとされてるが、この中では、道長の政敵を亡きものとする為、詮子が鵺となり政敵の庭で鳴いていたが、だんだん鵺から人間に戻れなくなってしまい、
終いに心まで鵺となり、どこかに飛んでいってしまったとなっている…
まあ、ヨタ話だろうとは思うが、わざわざ藤原家の書庫に書き残したのが気になってな。」藤田教授が不安そうに2人を見る。
「新聞を見たよ。多分君等が言ってるのは、東山小学校の学童の話だろ?鵺の声を聞いたと亡くなった女性の夫が話してると。」藤田教授は切り抜きまでしていた。
「…あまり深入りするなよ。京都は魑魅魍魎の世界だ。私達が住んでる地面には、沢山の人の血が苦しみが染み込んでいるんだ。
私達は何百年も地層になった墓場の上で生きてるようなもんなんだ。
無理しちゃダメだぞ。」藤田先生にまで釘を刺された。
「そうかあ〜後年藤原詮子が東三条院こもって人に姿を見せなくなったのは一条天皇と道長のために暗躍して元に戻れなくなっていったのかあ〜」友美は弟と息子を案じる母の想いに涙する。
「本当に藤原家の為に身を粉にした人なんだ。」夜空に飛んで消えた詮子を思う。
「きっと道長は一条には知らせていなかったのかもしれないなあ〜詮子を看取り弔ったのは道長だと先生言ってたもんな。」頼政は神妙な顔をする。
「道長の望月の歌は、姉に向けたものかもしれないね〜」友美も月夜を見る。
「後年、一条天皇の元に鵺が現れたのは母としての無意識だったのかもしれないなあ〜」藤田先生の言葉が胸に痛い。
一条天皇は亡くなった定子を想い、母は息子を想い、報われない想いのまま一条天皇の元に鵺は現れたのか?
まっすぐ帰る気がせず、王将で夕飯を食べゆっくり東山の坂を登る。人気のないはずの玉姫大明神、鵺神社から人が出てきた。
思わず2人は隠れた。
「清子さん!」友美は思わず声が出た。
2人に気付かないようで清子さんは、まるで鳥のように首をグインとひねり東山の豪邸へと戻って行った。
翌日、友美が学童のバイトに母と出ると聖子さんが受付で電話を取っていた。横には恭子さんも心配そうに立っていた。




