新しい死者
「本当に良くなるなんて!信じられない…ありがとうございます。」平安神宮裏の京大附属病院の入り口で娘さんに頭を下げられた。
「いえいえ、撮影協力までさせて申し訳ありません。」友美は遠慮する。
ヒミコはホクホクと撮影した映像を確認しアキラは見波に支えられてグッタリしてる。
お父さんは謎の高熱と衰弱で医者にも見放されていたらしいが、
個室だったので娘さんの許可だけで撮影が出来た。
アキラが旦那さんの腕を持ちマントラを唱えだすと身体が何度もバタンバタンと跳ね、それまでたまにしか心電図の波形が動かなかったのに、普通の波形になりだんだん顔色も肌色に戻り、最後は寝息まで聞こえるほどに変化していった。
看護婦さんに知らせると驚いて医者まで駆けつけたのでヒミコやアキラ、見波、頼政、友美は部屋を出てきたのだ。
「旦那さんの身体はどういう状態だったの?」ヒミコがアキラにボイスを録音しながら聞く。
「身体の上にデカい天邪鬼が乗ってたから祓ったんだよ。小さな邪鬼を引き連れて旦那さんの身体を食らっていたんだよ。」アキラが本当に具合悪そうだ。
「大丈夫なの?」友美が心配する。
「具合が悪いと言うより、地霊に抑え込まれてるんだ。自分の身体がめちゃくちゃ重く感じる。
10歳で植物人間から目覚めて歩いた時みたいだ。」見波が肩を貸してるが辛そうだ。
「じゃ、私達はタクシーで帰るから。何かトラブルあったら呼んでね。アキラ連れて行くから!よろしく!」と呼んだタクシーに乗ってヒミコ達は帰ってしまった。
「アキラ君、大変だね。歩くのもままならない感じ。」友美が見送ってると、頼政が急に友美の手を引く。
「エッ!?」驚く友美に「俺らもバイクで帰ろうよ。」と目を見ず頼政が不機嫌そうに歩いていった。
少し手が痛い。
こんな余裕がない頼政は見たのは初めてだ。
「俺がバイト言ってる内に頼んじゃうんだもん。ひと言相談して欲しかったな。」ヘルメットをかぶりながら独り言みたいにグチる。
「ごめん!タイミングがあって。
ちょうどヒミコさんがインフルエンサー目指してる女子に狙われてて、その話するついでにアキラ君が実はまだ霊能力あるとヒミコさんがバラしてしまって…」と言い訳する。
「でも、私達が走り回って調べた事を伝えられなかったら、多分アキラ君には動いて貰えなかったよ。」友美が必死で頼政に伝える。
「分かってるよ!お前は、先生の旦那さん助けたかったんだろ。娘さんにすごく同情してたし。
お前らしいよ。」そう言いながら、まだ頼政は機嫌が治らない。
「俺にはアキラみたいな力無いからさ。
お前が、娘さんを心配してるの分かってても何も出来なかった。
とにかく情報集めることしか…クソッ」アクセルを強く踏み加速する。友美は頼政の背中にギュッと捕まってるしか出来ない。
『ずっと一緒に居ても、頼政がどうして不機嫌なのか良く分からない。
私って頼政の何なんだろう?』自宅に戻ったら、もう8時だった。
友美の母も帰っていた。ソファにもたれてグッタリしてる。仕事がキツかったのか?
「どうしたの?お母さん。」友美が心配すると母のミキが抱きついてきた。
「もう、嫌!今度は施設長が亡くなったの。心不全だって。淀川さんと一緒の。
もう訳が分からない!」




