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元社畜ニート、農民でしたがなんか最強になりました。  作者: 寂しがり屋のサンタクロース
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【第1章 辺境農村の生活】第1話 転生

はじめまして、作者の寂しがり屋のサンタクロースです。

この作品は、「戦うために転生したわけじゃないのに、なぜか最強になってしまった男」が、のんびり農民として生きながら、気づけば世界の中心に巻き込まれていく――そんな、スローライフ系異世界転生ファンタジーです。


チート能力でド派手に暴れまわる作品とは少し違い、主人公は基本「畑が好き」「平和が好き」「戦いたくない」タイプ。

ですが、地道な生活の中で力をつけ、結果的に“規格外”の存在になっていく成長過程を、ゆっくり楽しんでいただければと思います。


本作は、日常・恋愛・ちょっぴりコメディ・たまに本格バトルといった要素を交えながら、長期連載を目指して執筆していく予定です。

気軽に読めてクスッと笑える、でも気づけば熱くなる――そんな物語を目指します!


ブクマ・感想・評価などいただけると、作者の畑仕事(執筆)がとても捗ります

それでは、ゆるくてちょっと不思議な“農民最強ストーリー”を、どうぞお楽しみください!


──暗い。

 何も見えない。何も感じない。

 けれど、意識だけは確かにあった。


 ああ、そういえば俺……死んだんだったな。


 ブラック企業で身も心も擦り切れて、やっと辞表を出して自由の第一歩を踏み出したその日。

 駅前の横断歩道を渡っていたら、信号無視のトラックが突っ込んできて──。


 人生、マジでタイミングって大事なんだな。


 悔しいとか悲しいとか、そんな感情すらもう湧いてこない。

 あるのは、なんとなくの“諦め”と、“解放感”だけだった。


 ――だが。


 ぼんやりとした意識の中、やがて光が差し込む。

 次の瞬間、全身を包み込むような“温かさ”が俺を飲み込んだ。



「……おぎゃああああ!」


 あれ? 俺、今泣いた? いや、ていうか声、高くない?


「生まれたぞ! 元気な男の子だ!」


 ……ちょ、待て待て待て。

 聞き間違いじゃなければ「生まれた」って言ったぞ、この人。


 まさか……いや、まさかそんなテンプレみたいな──。


「この子の名前は……“リンドウ”だ。竜胆の花のように、強く優しく育て」


 ……転生、確定。


 というか、花の名前って。渋いセンスだな、おい。



 それから十数年が経った。


 俺──リンドウは、アーベント村という小さな辺境の農村で生まれ育った。

 父は畑を耕し、母は家畜の世話をし、兄弟たちは畑仕事の手伝いに追われる。

 この世界では、農民というのは決して裕福でも華やかでもないが、村の生活を支える大切な仕事だ。


 そして俺は、転生してなお、また「地味な日常」に戻っていた。


「リンドウ、畑の水やり終わったかい?」


「うん、もうすぐ終わるよ。あとは南側だけだ」


 バケツを持って畑を歩く。

 不思議なもので、この世界に来てからというもの、体を動かすのがそれほど苦じゃない。

 土に手を入れて、作物の育つ音を聞くと、不思議と心が落ち着くのだ。


 ……元社畜だった俺が、農民ライフを気に入ってるって?

 自分でも笑える話だよ。



 この世界──エルダラシアは、魔物がうようよしている。

 迷宮と呼ばれる巨大なダンジョンが点在し、冒険者たちが命懸けで挑んでいるが、俺には関係のない話だ。


 俺は農民。鍬を握って畑を耕す、それが俺の仕事。

 冒険も戦争も関係ない……はずだった。


 ……その日までは。


「リンドウっ! 村の外れにオーガが出た! 子どもが取り残されてる!」


 村の入口まで響く叫び声。

 振り向けば、汗をかいた村人が必死の形相で走ってくる。


「オーガだと……?」


 オーガ。魔物の中でも一段上の脅威。

 冒険者でも中級以上が相手にするレベルの魔物だ。


 農民の俺には無関係──そう言いかけた言葉は、喉の奥で止まった。


 ……子どもが、取り残されてる。


 気がつけば、鍬を掴んで走り出していた。



「うわあああっ!」


「大丈夫か!」


 木の根元で泣きじゃくる幼い子を抱え、俺は巨体の影を睨みつけた。


 ──オーガ。


 灰色の皮膚、鋭い牙、筋骨隆々の腕。

 普通の人間なら、近づくだけで腰を抜かすほどの威圧感。


 だけど──。


「……離れろっ!デカブツっ!!!」


 握りしめた鍬を振り抜く。

 “ズガンッ”という衝撃とともに、オーガの身体が弾き飛ばされた。


 ……え? 今、何が起こった?


「な、なにあれ……鍬で……?」


 後ろで誰かが呟いた声が、やけに遠く聞こえる。


 俺はただ、子どもを守ろうとしただけだ。

 それだけなのに、村人の視線はどこか“異様”だった。


「……俺、もしかして普通じゃない?」


 このときの俺はまだ知らなかった。

 畑を耕すだけで力が伸び、作物に魔力を込めるだけで魔法が進化する──

 そんな“規格外”の存在になっていたことを。


 それは、“最強農民”への第一歩だった。


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