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聖女様はグレてしまいました――荒廃谷に捨てられたら現世の記憶が消えて、オジサンが訪ねてきました――誰?  作者: 赤城ハルナ/アサマ
前編 聖王国

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7/12

王様からの謝罪

オジサンと護衛に囲まれ、馬車に揺られて街路を進むと、ひときわ高い丘の上に大理石の城が見えた。


――城かぁ。あそこに役所があるのかな。絵本で見た超古代の都市国家みたいだ。そもそもこの世界自体が超古代文明のようだし。

まさかこんな世界が残っているとは思わなかったなぁ……。


――こんな世界? それならわたしはどんな世界を知っているというの?


パッカパッカパッカ……ガタゴトガタゴト……。


馬車って地面の上を走るからチョット乗り心地が悪いな。緑茶や紅茶じゃなくてカップ入りのアイスコーヒーが飲みたい。ポテチプリーズ。

城に入る跳ね橋にたどり着いたので、オジサンのエスコートで馬車から降りると、何人かの衛兵が行く手を阻んだ。

みんな頭巾をしていた。


「それ以上近づくな!」

「と言われても、ここに用があるんだけど」


「待て、この方は聖女様だ、手を出すな!」

大声で制したのは、黒頭巾を投げ捨てて周りを威嚇したオジサンだった。


「殿下!!!」


うわー、水戸◯◯みたい。カッコ良過ぎ!!


「それは偽聖女ではないのですか!?」

ひとりの衛兵がわたしに向かって剣を抜こうとしたとたん、ロデームが飛びかかった。


ガウッ〜! ピカドシャーン!!!


雷撃をまともに受けた服はズタズタになり、衛兵は全身に火傷を負って倒れた。


ロデーム、君、エグすぎるよ……。


「聞いてなかったのか、手を出すなと言った!」

「で、でも、この娘は……」

「勘違いするな、聖女様だ。聖女レーナ・デ・オキザリス嬢だ!」

「あ……で、では、それは聖獣フェンリル!?」


違うと思うけど……。


そのとたん、全ての衛兵がオジサンとわたしの前で帽子と頭巾を取り、一斉に敬礼した。



「ここまで来たんだから王に会ってほしい。謎の病ではないけれど、最近病気がちなんだ。レーナに直接謝罪したいと言ってるから……」

「お断りします」

「どうして?」

「わたしは家族を捜しにきたの。誰とも会う気はないわ。それに会ってどうするの? わたしはオジサンの言うレーナじゃなくて魔法少女なのよ」

「ハァ……分かった。それなら家族捜しに協力するよ」

「ありがとう」


わたしとオジサンは護衛たちと別れ、王宮の隣にある戸籍本署に向かった。


「ここで何をするんだい?」

「コージとミツコとジンという名前の人を捜すの。わたしの家族だから」

「家族はオキザリス一家だろう?」

「違う」

「疑問は残るけれど、手伝うよ」

「わぁ~い、オジサン親切なんだね」

「……光栄です、お嬢様」



幸運なことに、わたしとロデームは離宮を間借りできた。食事は三食出され、ホットコーヒーも飲めた。古城ホテルのモーニングみたいだ、バンザイ!

不作続きなので大した料理は出せませんと謝られたけれど、今まで携帯食料ばかりだったから、ジャム付きパンを食べられただけでも嬉しかった。

なぜかドレスも用意されていた。

ズボンを履きたいと言ったら、城の女官に『おいたわしや、聖女様……』と嘆かれた。なんで?


「ねえ、レーナ。一度だけでいいんだ、王に会ってほしい」

何度も何度もオジサンにお願いされた。


「もうっ、分かったわ。一度だけよ。王様はわたしの記憶がない事は知っているの?」

「その事は誰にも言っていない。とにかくありがとう。それでホラシオも思い残すことはないと思う」


翌日わたしは寝室で臥せっている王に面会した。

生きているのが不思議なほどやつれていた。


「……罪もないレーナ嬢にあのように残酷な仕打ちをしてしまい、申し訳なかった。西部領に騙されたと言っても言い訳にしかならないだろう。あのような地からよくぞ戻って来られた。誠にレーナ嬢は奇跡の人だ……オキザリス夫人には可哀そうな事をしてしまった……」


わたしが言える事は何もない。


「罪滅ぼしになるかどうか分からないが、レーナ嬢は聖女として国から正式に再認定した。首都のオキザリス屋敷は王宮の護衛が守っている。レーナ嬢の父君には王宮付きの医師を派遣した。

オキザリス領は聖地としての法律を適用し、聖女の花の原産地として領税を当分の間免除した。我々はオキザリス家の名誉回復に努めている。

レーナ嬢を荒廃谷へ流刑としたのち国の大神殿は混乱したままだから、何か要望があったらニコラに相談するといい。

どうかニコラを支えてやってもらえないだろうか……」


そんな事言われても……。


「……善処します」

「そうか……ありがとう」


「父に会ってくれてありがとう。君についてはこれで思い残すことはないんじゃないかな。あとは……瘴気の事と国の復興は僕たちが何とかしなければ……」

「責任重大だね、同情するよ」

「……」



午前中はオキザリス屋敷へ行って、オジーサンと庭仕事をしながら一方通行な会話をし、午後は戸籍本署に籠り、わたしは大量の戸籍から家族の名前を捜した。


「ふぅ~っ、大変な作業。めまいがするわ」

「謎の病で人口が半減したといっても、国には百万人くらいいるから、手分けしよう。僕は西部と南部地区。君は北部と東部地区という感じで」

「オーケー」

「それどういう意味?」

「了解です! という意味よ」

「……そんな言葉、レーナはどこで習ったのかなぁ……」


一ヶ月後、三人の名前と一致しそうな人と住所をメモし、わたしはロデームと数人の護衛を引き連れて国中を捜し回った。その頃には王宮と役所の至る所で聖女の花が咲いていた。

オジサンは手放せない仕事があるからと言って城へ戻った。


パッカパッカパッカ……ガタゴトガタゴト……しゅ~しゅ~しゅ~。


その結果、わたし――正しくはロデームが訪れた場所の霧が晴れ、奇跡の聖女とささやかれた。


〈フフフ、計画通り!(by ニコラ)〉


(オジサンにしてやられたわ! 策士め!)


結局コージもミツコもジンも、この国では見つからなかった。


違う国にいるのかな。

他の国へ行かなければ……。

行かなければ……。

行か……。



- - - - -

ザザァーーッ


『この子は将来国を救うことになるのかもしれないわ、道を間違えないようしっかり育てなければ』

『もちろんだ。聖女として正しい行いをするよう、神殿に教育してもらおう』

『お父様、お母様、わたしは神殿へ行かなければならないの?』

『通うだけだよ、預けるのは不安だからね。たまにニコラ殿下が様子を見に来てくださるそうだ』



〈ヒジョウジタイ セイナンセイ二クラックハッセイ〉


『皇帝陛下、これ以上は無理です! 退避を!』

『レイナ! 早く魔導車に乗り移りなさい!!』

(……そう……言われて……も)

『時間がない、このまま引き上げるんだ!』

(わたし……もう……だ……め……)


〈セイメイカツドウ テイシ……〉



『レーナ、いずれは僕たちがこの国を背負うことになる』

『責任重大ですね、殿下』

『僕が王で、君が聖女で王妃。見て、君の花。この噴水広場では一年中咲いているよ……』


ザザァーーッ

- - - - -



このノイズは?



わたしは体が動かなくなっていた。どうしてこんなにも体がだるいのか。

「レーナは谷の神殿に預けるよ、どこよりも環境がいいしロデームもいるから。本当なら一時も手放したくはないのだけれど……」

オジサンと護衛に見送られ、わたしは荒廃谷に戻った。


「ねえオジサン、一人ぼっちは寂しいから側にいてくれる?」

「もちろんずっと側にいるよ。ゆっくりお休み……」


神殿の扉が閉まり、わたしは再び眠りについた。


「側にいるって言ったくせに……」



- - - - -

ザザァーーッ


『西南西地区の地盤が崩壊を始めている。陸軍第四師団を派遣するから住民の避難を頼んでいいか、レイナ。俺は救助船を呼んで来る』

『もちろんよ、直接移民船に避難してもらった方がいいの?』

『そうだな、どうせ近いうちに脱出する予定だから』

『オーケー!』


ザザァーーッ

- - - - -



「ジン……お兄ちゃん……」


〈セイ…イ…ジ…マス……〉



* * * * * * * *

ニコラは荒廃谷に野営地を設営し、交代で兵士を見張りにつかせた。


それから数年が過ぎ……。

病で臥せっていた国王が崩御し、王座を引き継いだニコラ王が近衛騎士団を従えて再び荒廃谷にやって来た。谷から遠吠えが聞こえたという報告があったのだ。

円錐形の建物を叩くと、真っ黒な聖獣を従えた少女が中から現れた。

* * * * * * * *


「わたしはウォルフライエ帝国の帝都アルファから来た、皇女レイナ。オジサン、ダレ?」


これで前編は終わりです。

後編はレーナ誕生の秘密から始まります。

少しだけお付き合い頂けると嬉しいです m(_ _)m

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