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聖女様はグレてしまいました――荒廃谷に捨てられたら現世の記憶が消えて、オジサンが訪ねてきました――誰?  作者: 赤城ハルナ/アサマ
後編 聖女レーナと皇女レイナと謎の帝国

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10/12

聖女レーナの復活とオジサンからのプロポーズ

【レーナ二十歳、ニコラ三十歳】


* * * * * * * * * * * * *

一年後。

王子時代から病の収束と内政に力を入れていたニコラは、賢王と呼ばれるようになっていた。


一方その頃、『聖王国モラウ!』『オキザリスの小娘ブッコロス!』『ニコラ王シネ!』という呪詛が西の彼方で延々と繰り返され、王宮にもその噂が届いた。

* * * * * * * * * * * * *


見たこともないベッドに部屋、肌触りの良い衣服、身体にフィットした毛布。窓辺には白い花。

――久しぶりだわ、まともなベッドで眠ったのは――まともなベッド? わたくしは今まで何を?


「ここはどこですか? わたくし、どうしてこんな場所に……? 誰かいますか?」


――誰もいない。


「そういえばわたくし、偽聖女と言われて……馬に縛り付けられて谷に捨てられたんだったわ……超絶ヒドイ……こんな、こんな世界、滅ぼしてやりましょう!」


てくてくてく……。


「ご主人様、お目覚めですか」


な、何か来たわ! 黒い何か!


「話す獣? もしかしたら聖獣かしら?」

「ロデームでございます。あなたはわたしのご主人様、何なりと御用をお申し付け下さい」

「それなら世界を滅ぼしてくださる?」

「……人間だけならお安い御用です。まず誰から始めますか」

「王様と神殿長の首を城壁にさらしてくださるかしら」

「以前の王は死に、代替わりしました。また、神殿長は解任され行方不明だそうです。捜し出してご主人様に首を捧げましょう。ご主人様は今や殿方超憧れの聖女様です。結婚したい女性ナンバーワンです」

「いつの間にそんな事に???」


扉を叩く音がした。


「お声が聞こえましたが、もしかしたらお目覚めですか、聖女レーナ様」


今度は誰か来たわ! あのドレスは城の女官だわ。ということは、ここは王宮?


「あぁ、気が付かれましたのですね、皆さま心配しておりました。すぐにでも陛下をお呼び致しますので、このままお待ち下さい」


陛下――代替わりした王?



「レーナ、目が覚めた?」


また扉を叩く音。懐かしい声――誰だったかしら。


「どなたですか?」

「ニコラだよ」

「ニコラ……もしかして殿下ですか?」


扉が開き、面影のある人物が現れた。


――この方は確か――わたくし、夢でも見ているのかしら。


「やっと思い出してくれたんだね……嬉しいよ」


赤髪短髪碧眼の爽やか系イケメンが、左右に護衛を従えて立っていた……でも……。


「……違う人ではありませんか? 殿下はもっと若くて、少年のように儚げなメロウ系イケメンでしたけれど……それに、何だか額が後退していませんか。王族を騙る詐欺師ではありませんか?」

「レーナとレイナは言葉遣いが違うだけで、同じ性格なのかな……その事だけど、説明が必要だよね」


ニコラと言い張る人は当然のようにベッドに腰かけ、ベッドテーブルにミルクと果物を用意した。


「美味しそう。わたくしとてもお腹が空きました」

「今まで流動食だったからね。まともな食事をしていなかったからたくさん食べて」

「確かわたくし荒廃谷に流刑になって……それからの記憶がありません。病気だったのでしょうか」

「そんな感じかな。ここは離宮だよ。一時レーナが聖獣と一緒に滞在していた」

「記憶にありません」

「何回目の説明かな……今から僕が言う事は、全部真実だ……」



荒廃谷に追放されてからこれまでの簡単な説明を、ニコラ殿下――今は陛下――から受けた。わたくしの名誉の回復、世界中で猛威を振るった謎の病、王の死、神殿長様の解任と行方不明、両親の死……。


驚いたのは、わたくしがレイナと名乗り、別人のようになっていた事。


「あれから……わたくしが荒廃谷へ流刑にされてから、何年過ぎたんでしょうか」

「かれこれ七年かな。けれど君はほとんど眠りについていたからか、年取っていないように見える。荒廃谷で眠っていた五年間を引けば、たぶんレーナは二十歳。僕はもう三十歳になってしまった」

「わたくしは別人だったんですか?」

「もう一人の君がいて、レイナと名乗っていた」

「訳が分かりません」


「レーナが聖女として再認定された時、何の力もない女性を聖女とでっち上げ、大神殿の力を独占しようとした西部領は王領にした。前の領主には病で死んだ人たちの共同墓地の墓守をさせている。神殿長は解任した」

「……もう首都の大神殿には行きたくありません。わたくしが断罪された所だから。あそこへ行くだけで足が震えます」

「そうだね。僕もあれ以来行ってない。呪われた場所は取り壊して公園にし、郊外に新しく大神殿を建てよう。神殿組織は刷新するよ。それから、荒廃谷は聖女所領とする」


「お父様はわたくしの冤罪を晴らしてくれて……亡くなったんですね……母も……もう一度会いたかったのに」

「もう一人の君は、短い期間だったけれど毎日のようにオキザリス卿に会って話をしていたよ。レーナに会えてとても嬉しそうだった」

「お父様……お母様……殿下はわたくしを見捨てなかったんですね。見捨てたと思っていた父も、罪を晴らすために命を削ってくれた。感謝しています」

「謎の病から国民を救ったのは、もう一人の君と聖獣ロデームだ。君の花が瘴気を払ったんだ。病はだいぶ沈静化した。聖女レーナは全国民から慕われている」

「わたくしが眠っている間にそんなにたくさんの事が起きたなんて」

「色々あり過ぎて……できれば時間を戻したいくらいだ。病、人口減少、労働力不足、作物の不作……全滅した街もあった。国はボロボロだ……けれど去年レーナが国中に届けた花が国民を明るくした」


わたしは声を出さずに涙を流した。聞きたい事はたくさんある。でも今は混乱の方が酷くて……これからどうすればいい? 誰もいないオキザリス屋敷へ戻るの?


「レーナとレイナではやっぱり性格が少し違うんだね」

「レイナとはどんな人なんですか?」

「あー、君だけど君じゃないというか……もう一人の君。今まで君の中にいたのはやんちゃなレイナ。今はお茶目なレーナ」

「良く分かりません」

「いずれ全てが繋がるといいね」


色々あり過ぎて頭が追い付かない。それなのに、『聖女復活のお披露目をしたい』と言われた。


今さら?

もう聖女は嫌。大神殿と聞いただけで体が震える。


「大神殿にはもう権力はないよ。一時的に取り上げた。君のお披露目が済んだら大神殿は聖女の管轄にしようと思う。だから聖女復活パレードをしたい」


わたくしは混乱したまま陛下に従った。だって、何をすればいいのか分からないから。


「陛下はやめて。ニコラでいいよ。王という肩書がついただけで僕は何も変わっていない」



これからはここがわたしの住む部屋だと言われ、王宮の一室に案内された。

鏡を見て驚いた。


「あらっ、首が赤く腫れているわ。虫に刺されたのかしら?」

「ええとそれは……コほん! ここは王妃の間だ。これからはレーナがここに住むといいよ」

「えっ、でも、わたくし王妃ではありません。王妃様はいらっしゃらないのですか?」

「今はいない。近々君がそうなるから」

「えっ??」


ちょっと待って。勝手に話を進めてない?



数日後、わたくしたちは王宮の噴水広場を散歩した。そこには聖女の花がびっしり咲いていた。

――聖女の花。この花を見るたびに懐かしさで泣きそうになる。オキザリス屋敷でお父様と一緒に花を育てていたわ。父というよりは祖父のようだった。屋敷は今どうなっているのかしら。


「レーナが谷へ行ってからは、聖女の花は二か所しか咲かなくなった。一か所はオキザリス屋敷、もう一か所は王宮の噴水広場だ。ロデームから聞いたところによると、花を咲かせるにはレーナ成分が必要なんだって」

「何ですか、ソレ。フフフッ!」

「やっと笑ってくれた! 君が神殿で聖女教育を受けていた頃、時々王宮へ遊びに来ていただろう? その時レーナのカケラが落ちたんだと思う」

「カケラって……髪の毛?」


噴水広場はニコラとの想い出がたくさんある。聖女教育に疲れた時、わざわざわたくしとの時間を作ってくれた。もう一度あの頃に戻れたら……。


「どうしてまた泣いてるの?」

「だって、アイドルだったニコラがいきなりオジサンになってしまったから……」

「あっ、その事……レーナは地味に失礼な事を言うよね。僕王様だよ?」

「だって、どうしてこんな事になったのかしら……」

「それは……僕の方が聞きたいし、僕の方が泣きたいよ……ということで、僕たち結婚しよ?」

「えぇ〜、陛下と?」

「陛下じゃなくてニコラ。僕たちここで約束しただろう、僕が王で君が聖女で王妃」

「そう……でしたっけ??」

「君は僕の妃、国の頂点に立つ女性になるんだ。これからは隣で一生君を守るから。それが僕のレーナへの償いだと思って」

「妃なんて償いになりません、断罪聖女は普通田舎でスローライフでしょう」

「……どこからそんな言葉が出てくるんだろう。さぁ、行こう。これから聖女様のパレードだ!」


ガッチリ抱きしめられ、何度も首筋にキスされてしまった。これでは首の腫れが引かない。困ったことになったわ。


虫の正体はニコラだったんだわ!


「ロデーム!!」


挿絵(By みてみん)


実質二十歳(?)になったレーナのウェディングドレス風イメージ画像です。Adobe Firefly(AI)で作成しました。元々二人は王子と聖女時代に結婚の約束をしていましたが、会えない時が長く苦難の時代を経験したので、目も当てられないバカップルになってしまいました。

次回あの帝国軍(?)が現れます。

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