二つ願いをかなえましょう
「はあ・・・」
僕は深いため息をついていた。
僕は今日大きな、人生にかかわるミスを犯してしまった。
僕の職業は自宅警備。いわゆるニート。
金がなくて今日ついに罪を犯してしまった。万引きだ。
万引きはあやまって済むものではない。罰はわからないけどきっと懲役25年とか3億円の罰金とか・・・ なわけないか。でも罰があるには変わりない。
「はあ・・・ これからどうしようかな。やっぱり正直に誤って素直に罰を受けようかな」
「本当にそう思ってますか?」
後ろから声がした。
あまりにも急だったのでついあわてて後ろを向いてしまった。後ろには全身タイツの変なおっさんが立っていた。
「え?」
予想外の変な格好だったので変な声が出てしまった。失礼だっただろうか。
「あなたはこの服におどろいてるんですよね、わかります」
「はあ・・・」
さっきまでのため息とは違うはあ・・・がでた。
「まあ気にしなくていいですよ。いつものことなんで。」
「そうなんですか・・・」
「私はあなたに救いの手を差し伸べようとしているのです。」
僕はおどろいた。このおっさんは僕が万引きをしたことを知っているのか?でも救いの手を差し伸べてくれるのならば・・・ 僕はその手を受け取ろうと考えた。
「ありがとうございます。」
「あなたはまだよくわかっていないようなので説明をさせてもらいます。私はあなたの願いを二つかなえて差し上げます。どんな願いでも二つだけね。」
僕は、救いの手を受け取った。
「僕の一つ目の願いは・・・ 万引きした、という事実を消してほしい・・・です」
「わかりました。その願い、かなえて差し上げましょう」
おっさんがそういった途端、僕が持っていた焼きそばパンは消え去った。
「これであなたが万引きをしたという証拠もすべて消えましたよ」
「あ、ありがとうございます!」
「いえいえ、二つ目の願いはまた思いついたらお聞かせください。あなたがなにかを願いたいとき私はあなたのものへ現れますから」
「わかりました」
僕は自分の家へ帰ろうとした。
横断歩道をわたっているとき、左から何かの音が聞こえた。僕が左を向くとすごい速さで走ってくるトラックが目に入った。よける余地はない、僕は何も身動きが取れなかった。
(たすけッ・・・)
「二つ目の願いをかなえましょうか?」
車はとまっている。なんだか世の中すべてがとまっていた。僕の体もまったく動かなかった。そこにさっきのおっさんが現れる。おっさんは何者なんだろう、そんなことを考える暇はなかった。とにかく死にたくない、その一心だった。
「助けッ・・・てくれ・・・」
「わかりました、そういえば願いをかなえるデメリットを話しておきませんでしたね。願いをかなえたら、歴史は変えられるわけです。一つ願いをかなえるたびにかなえた人にとっての歴史が少しばかり代わります。最初の状態ではあなたがトラックに轢かれるという歴史はなかったのですが、まあ万引きを消したことによってできたのでしょう。それでも願いをかなえますか?」
「か・・・ かなえる・・・ から」
「わかりました。歴史がどうかわるかは私もしらないので、そこのところ理解してください」
時は動き出し、車や周りの人たちも違う場所に移り、トラックも消えた。そして僕の周りに大勢の警察がいた。
警察は僕のことを見ている。そのとき僕はやっと気づいた。僕の手首に銀色の手錠がかけられていた。
「そんな・・・」
「お前が通り魔殺人の犯人だな?逮捕だ」
歴史は変わった、僕がトラックにはねられるという歴史から僕が通り魔殺人の犯人として逮捕されるという未来に・・・
こんなことになるならば万引きなんかしなきゃよかった・・・
そうだ、あのおっさんはなんだったんだ?それが心残りだ。
「あの、全身タイツのおっさんを見ませんでした?」
「そんなヤツいるわけないだろう、ごまかして逃げようなんて考えてもだめなんだぞ」
「そんな・・・」
いまいったそんな・・・には二つの意味がある。一つは警察の答えへのそんな・・・。
もう一つはいるわけない、といった警察の顔があの全身タイツのおっさんを同じ顔だったということへのそんな・・・だった。
いったい、なんなんだ?よくわからない。わからないことはわかろうとしないほうがいい。僕は考えるのをやめ、素直に逮捕された。
「つぎに願いをかなえるのは誰なのでしょうか・・・ あなたかもしれませんよ?」
どうも、これから少しの間短編を書いていこうと考えているNOT筋肉大豆です。
この物語は絶対にバッドエンドにしようと考えていました。
自分の書く短編はバッドエンドばかりだと考えてください。
いや、ぜんぶがそういうわけじゃありませんが。