婚約破棄された私は愛されたい
「ニーファ・アックア! 今日をもって貴方との婚約は破棄させてもらうわ!」
学園にある一室で、怒鳴り声をあげられながら婚約破棄を言い渡されたニーファ・アックアは驚愕の顔をしていた。
婚約破棄を厳しい顔で発言していたのは、ブリトニス・エリエア令嬢である。何を隠そう私の婚約者である。
「な‥‥‥なにをいわれているのですか‥‥‥突然‥‥‥婚約破棄などと‥‥‥!?」
「なぜ婚約破棄されたのか、分かりませんの? 胸に手を当てて思い出してみてはいかがですか!」
令嬢の言われる通り、私は胸に手を当てて、婚約破棄を言い渡されるほどの理由を思い出していた。
だが、どんなに思いだしても、婚約破棄を言い渡されるようなことをした覚えがない。
「あ‥‥‥あの‥‥‥胸に手を当てて、思いだしてみましたが、婚約破棄を言われるようなことはした覚えが‥‥‥」
「ハァ‥‥‥仕方ありませんわ。ならなぜ、あなたに婚約破棄を言いつけたのか理由を言いますわ。 それは‥‥‥」
「それは‥‥‥」
「それは、あなたが下品極まりないからですわ!!」
令嬢からその一言を言われショックを受けた。さらに、その下品だと思われる理由も言われた。
「あなたは、剣術や魔法を鍛えるためとはいえ、恥ずかしげもなく誰彼構わずに教えを請おうとしていましたわ。しかも、汚れても気にすることなく皆のまえで修行をなされていた。さらに、気味が悪い悪いゴブリンに興味を持ち研究をなされていた。わたくしとしては下品極まりない行動ばかりですわ。」
「し‥‥‥しかし‥‥‥それらはひとえに、将来この王国を支えるために、勉強や修行をしていたからであって‥‥‥下品といわれるのはいかがなものかと‥‥‥」
「お黙りなさい。わたくしにとっては下品以外の何者でもないですわ。それに、それだけではありませんわ。」
「ほ‥‥‥ほかにも理由が‥‥‥」
「ええ、ありますわ。それはあなたの性格です。あなたはよく緊張したり様々な不安を抱えていたりと、ナイーブで繊細なところがありますわ。わたくしはそのような性格のあなたを見ていて心底嫌になりましたの。ですから、婚約破棄を言い渡したんですわ。」
令嬢はそこまでいうかと思うくらい、婚約破棄した理由を私に言った。
言われた私はショックと悲しみでとてもつらくなり、かみしめながらただ下を向いて黙っていた。
「なにも言わないということは、了承したと思っていいんですわね。ならもうあなたに顔を合わせる必要もありませんので、ここから出て行ってくださいな。」
私は何も言い返させなかった。言い返したいけど、ブリトニス・エリエア令嬢は私の家よりも階級は上で、しかも、この学園の理事長の娘でもあった。
そのため、言い返すなど到底できず、部屋を出ようとした。
だが、部屋を出ようとしたとき、令嬢が呼び止めた。
「ニーファ・アックア、一つ言い忘れていたことがありましたので、その場で止まって聞きなさい!!」
「他に何か‥‥‥」
「ええ、あります。あなたの学園生活についてです。わたくしとの婚約破棄は全生徒の前でわたくしが言いますので、学園中に婚約破棄のことが知れ渡ることになります。ですので、婚約破棄されたものとあなたは言われながら学園生活を送る必要があります。そんな生活いやですよね。よろしかったら、転校届を作りましょうか?」
「いえ‥‥‥私はこれまで通り、この学園に在籍します。」
「そうですか。まあ、わたくしもこの学園から追い出そうとまでは致しません。どうぞ、この卒業までこの学園で勉学に励んでくださいな」
私はブリトニス・エリエア令嬢から最後にいたるまで皮肉めいたことを言われ屈辱のあまり拳を握りしめた。とにかく悔しくて悔しくて仕方なかった。
ただ、私は我慢して、何もせずただ部屋を出たのだった。
その後、私は学園で勉強に励んでいたが、周りのものらの私に見る目が変わってしまった。
その原因は、ブリトニス・エリエア令嬢が全校生徒の前で私との婚約破棄を言ったためである。
その出来事いらい、私は女性に婚約破棄された情けない男と言われ、下賤なものを見るような目で見られるようになった。
いままで話してくれた生徒たちは、私に近づきもしなくなった。さらに、罵られるようなことを言われ続けていた。学園で勉学に励むのが難しいほど私は追い詰められ、部屋にこもるようになった。
部屋にあるベットに横になりながらニーファ・アックアは泣いていた。
「クソ‥‥‥なんで‥‥‥なんでこんな目に合わなくちゃいけないんだ。私は皆に何も悪いことしていないのに‥‥‥クソ‥‥‥これもすべて令嬢のせいだ‥‥‥婚約破棄されたせいで私は‥‥‥しかも婚約破棄されたのも令嬢がただ私の性格を嫌っていただけじゃないか‥‥‥なぜここまでの仕打ちを受けないといけないんだ‥‥‥」
なんとか、この学園生活をよくしたい。しかし令嬢に婚約破棄されて以来、誰からも愛されず、ただ一人ベットで泣いているだけであった。
今の生活を変えたい。そして、人から愛されたい。そんな思いが強くなっていた。
また、あの婚約破棄した令嬢に復讐したい。そういう思いも日に日に強くなりそれらのことばかり考えるようになっていた。
そんなことを考えていた時、ふとあることを思い出した。
そういえば、昔、父上にこの球を飲み込んではいけないと言われたことがある。その球は真っ黒なのだが、その球を飲み込むと、なんでもとんでもない力が手に入るらしい。
私は愛されるため、そして復讐したいという思いから、その力を何としてでも手に入れたくなった。いてもたってもいられなくなった私はその球のある実家に帰った。
実家までは2日ほどで着いた。そして、実家に帰ると、母上がお出迎えしてくれた。
母上はとてもやさしいかたなので、なぜ帰ってきたのか理由を知っていても何も言わず出迎えてくれた。
母上の気遣いにとても癒されながら私は部屋に入り、荷物を床に置いた。そして、母上が去ったのを確認して、球のある財宝部屋に入った。
ある木箱の中に入っていたのを思い出して探した。そして、時間が経たずに球の入った木箱を見つけた。
私はその木箱をすぐさま開けて、中に入っていた球を取り出した。木箱の中に何やら紙みたいなものが入っていたが、気にせず球を飲んだ。
すると、飲み込んだすぐあとに体中に激痛が走った。
(な‥‥‥なんだ‥‥‥これは‥‥‥体中が‥‥‥とても‥‥‥とても‥‥‥痛い‥‥‥痛すぎる‥‥‥誰か‥‥‥助けて)
私はあまりの痛みにもがき苦しみ、助けを求めたくなった。しかし、助けを呼べば私が球を飲み込んだことがばれてしまう。私はとにかく声を出さず我慢していた。
その時、私は木箱の中にある紙を思い出して、木箱をなんとかして開けた。そして、中に入っている紙を取り出した。
私はつらいのを我慢して、紙に書いてある文字をみた。すると、この球を飲み込むと、何の力が手に入るのか書かれていた。
その力とは、ゴブリンを使役する力だった。しかも強いゴブリンは倒さないと使役するのは難しく、仲良くしかなれないとかいてあった。
私は、学園で無双できる力が手に入るとばかり思っていたので、思わず叫んでしまった。
「ふざけるな―――――――!! なんでよりによってゴブリンを使役する力なんだよ!! 最悪だ―――――――!!」
私は心の底からふざけるなという気持ちで怒鳴った。
だが、どんなに怒鳴ろうが、もう飲み込んでしまっていたので、手遅れだった。
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