10年以上同じキャラで連載して気づいたこと。
私はかれこれ10年近く前から同じ世界観と同じキャラクターで作品を作り続けています。
読者の皆様からは「同じキャラクターばかりでは読者の敷居が高くなり、作風が狭まってしまう」と助言してくださるありがたい方もいました。
数年前まではまだキャラ達を充分に書ききったとはいえない時期でしたから、もう少し続けさせてほしいという思いもあり、その時は同じキャラを使い続けることに抵抗は少なかったのです。
それが今になってようやく「このままでいいのか?」と思い始めたのです。
きっかけは何かといいますと、長編を完結させたあとに新作を書こうとしてピタリと筆が止まってしまったのです。
全く書けなくなってしまったのです。
新しいキャラクターを試しに短編で書いてみて、人気が出たら長編に進出してみようかといくつかの短編を投稿しましたが、それで満足してしまい、先へ進めることができなくなってしまいました。
あまりにも長くひとつの世界観で物語を展開してしまい、それ抜きでは話を書くことができない体質になってしまったのです。
私の作品のキャラクターに「闇野美琴」というキャラクターがいます。
私は彼女を超えるキャラクターを創造すべく試行錯誤したのですが、どうしても彼女を超えるキャラクターを生み出すことができない。
自分の理想とする要素を全て詰め込んでしまったために、これ以上となると思い浮かぶことができなくなったのです。
たまに「自分の限界を決めるな」という人がいますが、他のキャラクターが作れないというのは多分に感覚的なものだと思うのです。
思考が止まり、身体が固まり、それ以外では創作ができなくなる。
たとえが適切かはわかりませんが、大ヒットした漫画を描いた漫画家さんが、看板キャラクター抜きで新作を生み出す状況に近いかもしれません。
そのまま描き続けたら安定した人気と名声を保てる。それらを全て捨てて、まったく違う作品を書けば新規開拓できるかもしれない反面、今までの人気を失うかもしれない……といった感じでしょうか。
身も蓋もない言い方をすると「保身」です。
守りを固め、攻める姿勢を失ってしまうのです。
これが最も恐るべきことなのです。
私は自分のキャラクターは目に入れても痛くないほど大好きな反面、停滞し錆びついてしまっては作家としての成長は見込めないとも思っているのです。
もっと成長して更なる実力を磨きたい。けれど、自分のキャラ達の愛着も捨てられない。
矛盾した状態といいますか勇気が出ない状態で執筆を続けております。
今確実に言えるのは長く連載を続ければ続けるほどその物語から抜け出せなくなるということだけです。
私のような作家が増えないことを願っております。
おしまい。