表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

残さず食べていますか?

作者: 島猫。

 個人経営の居酒屋さんにお手伝いに行きました。グループからの予約に対応するため、とにかく人手がほしいとのことでした。

 店主は和食料理屋での修行経験があるそうで、新鮮な魚介を仕入れ、仕込み、食材そのものにも料理の盛り付けにもこだわりがあるようでした。

 周囲の店はほぼスナックで、お客様はまずこの店で幾らかお腹に食べ物を入れ、酒も数杯飲んでからスナックへ移動、という感じでした。

 飲食関係でのアルバイト経験は自分には一度も無く、果たして役に立ったのかどうか……という程度のお手伝い結果となりました。ですが、とても良い経験、社会勉強になったと感じています。


 ところで、皆さんは日頃から、提供された食事を残さずに食べていますか?

 今回のお手伝い経験から、自分には飲食関係での仕事は向いていないと感じました。理由の一つ目は、コミュ力の低さ。お初にお目にかかります的なお客様同士でなごやに会話を始めていたり、一緒に手伝いに行った知人がその会話に上手いこと入っていたり。とてもこじんまりとしたお店なので、店主も手伝いの知人もお客様も皆、とても楽しそうにお喋りしていました。よく、ジャンル:異世界恋愛の小説を読んでいると、夜会やお茶会で主人公が「壁の花」になっている場面がありますが、今回の自分がまさにそれでした。タバコを取り出す客にパッとライターを差し出すキャバ嬢のように、自分もせっせとドアの開閉をしたり、おしぼりをサッと手渡したりはしましたが、親しく喋れる気はしないなぁと。そもそも自分は美容院に行っても美容師さんと極力会話をしたくない派だったのだと、壁に張り付いたツタと化しながら思い出しました。

 飲食関係が向いていないと感じた二つ目の理由は、食べ残しを見るのがとんでもなく辛いと感じたからです。パラパラと入店した個人客は注文した品を残すことなく飲み食いしていました。ですが、ご予約の御一行様は、何千円コースといった形で予め提供される量や品数が決まっています。提供三品目辺りから皿の上の料理の減りが悪くなり、恐らくは全くの手付かずだろう、綺麗に盛られた料理がそのまま残っているお皿もチラホラありました。とても気心知れた同僚なのでしょう。酒が進んで話に花が咲き、箸を箸置きに下ろして身振り手振り、食事よりもお喋りに夢中のお客様方。スナックへと御一行様が移動した後、下膳するのが辛かったです。残された料理を一つの皿に移し替え食器を運びやすいように重ねたりするのに、涙が出るくらい悔しかったです。でも、お客様方は自分にとって、とても優しいお客様でもありました。お通しの次にお出しした、人数分の刺し身が盛り付けられた大皿を下げる際、中央に盛られたワカメが勿体無く、「どなたか取りませんか?」と尋ねたところ、数名でワカメを綺麗に取り分けて皿をカラにしてくださいました。また、生ビールのおかわりを出す際、不慣れでお客様を記憶できない私を責めるでもなく、「黒い服の人」「チェック柄のシャツの人」などと分かりやすいよう自己申告してくれ、注文した方は挙手をしてくださいました。

 数ヶ月前まではコロナ渦で、店主によると、店を開けていてもお客様が一人もいらっしゃらない日もあったそうです。店側の利益を考えれば、金額の決まったコース料理を注文してくれて、飲み放題ではないのでお客様が飲めば飲むだけお酒の売上が立つ。また、店側にとって、料理の準備のしやすさや予定の立てやすさからは、コース料理はきっと有り難いのだと思います。でも、店主が手間をかけ、心を込めて用意した食事が箸も付けられないままテーブルに残される……、悲しくて胸の奥がぎゅっとなり、悔しくて奥歯を噛みしめました。お店が始まる少し前、始まったら忙しくなるしお腹も空くだろうからと、店主は先に幾らかまかないを出してくれました。その日のコース料理のメニューに含まれていたエビチリのエビも食べました。家で自分が作るものとは異なり、プチっと口の中で身が弾け、噛みごたえはプリプリとしていて、甘酸っぱさと程よい辛さでとても美味しかったです。カウンターに座った個人客に、店主がエビチリの説明をするのが聞こえましたが、当然のことながらやはり下処理に手間がかかるのだと話していました。

 すぐ階下にあるスナックへと移動した御一行様ですが、まだ提供していなかった残り二品はスナックに運んでほしいとのご要望で、きっと残す人が多いと予想はされつつも、店主は手を抜かず、天婦羅を揚げ、また、汁物を作り、盆に乗せスナックへと運んで行きました。

 最後、御一行様の一人が、全員分の代金を支払いに店に来ましたが、店主に感謝を伝え、また、店主も笑顔でお客様に感謝を述べていました。


 自分は素直には喜べない。

 お客様がお店に入るのは良い事、コース料理は準備面でも収入面でも店側には有り難く、また、お酒の注文、おかわりは売上的にとても有り難いこと。

 でも、テーブルに残された料理の下膳、廃棄に、心が苦しい。

 食材も、調理も、出来上がった料理も、そこにかかったであろう店主の時間と手間も。経験の長い店主は割り切って考えられるから店を続けていられるのでしょうが、自分にはとても辛かったです。

 我が子に対し、食事を残さず食べるよう、日頃からよく言っています。米粒も残すなと言います。残されると片付けに困りますし、食器を洗いにくいです。自分は貧乏性なので、我が子の食べ残しであれば自分が綺麗に食べて片付けます。お腹がいっぱいなら、ラップをしておいて、次の食事の時などに自分が食べて片付けます。自分がまだ子供だった頃、今でも覚えている衝撃の出来事がありました。近所の家に遊びに行き、昼食をいただきました。そして、自分の食べ残しをその家のお母さんが捨てたのです。当たり前だと思いますか? それは当たり前のこと、自分でもそう思います。今だったら、我が家に人を招いてその人が食べ残せば、残念に思ったとしても自分も迷いなく間違いなく確実に捨てます。でも、当時の、子供だった自分には全然当たり前の光景ではなかった。食べ残しても家では母親が食べてくれていたから、まさか捨てるだなんて思いもしなかった。自分が残したせいで捨てられる食事を見て、子供ながらにもの凄くショックでした。

 他人の食べ残しは捨てる、当然だと思います。自分も食べようとは思わないし、仮に自分が残した側だったとして、その食べ残しを他人に食べられるのは気持ちが悪いでしょう。

 だから、残さず食べませんか?

 捨てなくても済むように、食べればいいだけ。

 夏が近付いて、ビアガーデンの季節。

 飲み会も、コロナ前のようにまた増えてくると思います。

 アレルギー、好き嫌いは人によっては当然あると思いますが、出されたもので食べられるものについては、全部綺麗に食べませんか?

 皆さんは、ちゃんと残さず食べていますか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 私は大学生の時超絶貧乏で、バイトの給料日前日はうまい棒五本だけで飢えをしのいでいたなんてこともありましたので、それ以来ご飯は残さず食べるようになりました。 食べられることの有難みを身をもって…
[一言]  もったいないですよね。基本的に全部食べてます。しかも、私は酒が入ると、満腹中枢がおかしくなるようで、普段以上に食欲が増すんです。  昔は、宴会では他の人が手をつけずに残したものは忘れ物チェ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ