ランスイセン島の戦い・決着
彼は、特別戦いを楽しむようなタイプではなかった。今の彼は長い無人島生活によりそれ以外の行為全てが娯楽に感じてしまい戦闘は楽しく感じてしまっていた。
その戦いも終わりを迎えようとしていた。残り時間が迫っておりウイネルが槍をソフィに預けると手から小さな火の玉を出した。
「幻想大爆発」
天に向かってそれを投げ島の中心辺りに落ちるようにコントロールする。
遠近法を知っているだろうか?自分の目線から遠く離れている物が小さく見える事だ。この場合ほぼ真上に投げられた火の玉はやがて裸眼では見えなくなるほど小さくなるはずなのだが、それどころか大きくなっている気がする。
彼が火の玉に気をとられているうちにウイネルはソフィが魔法で張ったバリアーの中に入っていた。
火の玉は徐々に大きくなりながら落下し始めた。
このまま島に直撃した場合この島はどうなるだろうか?最初に消滅する可能性を考える。もし、そうなる場合、彼女達はとっととこの場から離れるはず...それをしないという事は消滅するほどの威力ではないと予想する。
ウイネルが自分を殺すつもりで放った可能性を考えた。これは論外、元々彼女達は捕獲しに来たと言っていた。それを殺してしまえば本末転倒という事でこの可能性もない。
彼の考えは決まった。それは海へ逃げる事だ。そう判断し海へ逃げようと行動しようとするがなぜか足が動かせなかった。恐怖で足が震えて動けない。という訳ではなく、目線を彼女達に向けるとソフィの魔法で砂を足元に纏わせ砂を固め錘のようになっていた。
彼は強制的に火の玉を受け止めざるおえなくなった。逃げる事を諦め、再び目線を上に向けると火の玉はこの島と同等いやそれ以上の大きさになっていた。この大きさを見るとウイネルは殺す気満々なのでは?と不安になる。
やがては彼と火の玉が触れ、その瞬間に大爆発が起こる。熱、風圧などの影響は周りにいる全ての人に与えた。
彼女達はバリアーによって耐えているが、1つだけ誤算な出来事が起きた。バリアーに罅が入り、このままではバリアーが破壊され自分達も巻き込まれる。普段であればこの程度でバリアーに罅が入る事はない。しかし、ソフィはこの島に向かい始めてからずーと、ある魔法を使い続けていた。この島による毒から2人と乗ってきた小舟に毒無効の効果がある魔法であった。
彼女はそれだけでなくこれまで何度もいろんな魔法を使っていた。毒無効、足固定、バリアーなど複数同時に使い魔力を消費し続け、ついには限界が近づいていたのだ。これをたったの1人でしかも小さな子供がやっていたのだ。
この島にいられる時間ギリギリまで戦闘が長引いてしまった事とあり、残りの魔力が少なくなっていた。
しかし、それはウイネルも分かっていた。そもそも幻想大爆発はただの幻。熱さも風圧もそう錯覚するだけでダメージは多少あるものの人を殺したり建物を破壊するような魔法ではない。だが、バリアーの魔力消費が激しい。まるで幻が本物になったかのような...そう感じてしまう。
ソフィは、なんとか粘っていたが、ついには、バリアーが破壊されてしまい彼女達はあっという間に吹っ飛ばされてしまった。2人は石切のように勢いよく跳ね海へ落ちてしまう。
2人共なんとかもがくが2人共泳げなかった。ソフィはそれでも毒無効の魔法だけは解かなかった。小舟の方は解いたため小舟は毒と熱と風圧により腐り砕け散った。
溺れながらも、出来るだけ島から離れようともがき、無駄だ。どうせすぐに死が迫っている。それでも最後まで諦めなかった。
ここから先の事は覚えていない。気がついたらどこか知らない島に倒れていた。空が明るくなっていて太陽がほぼ真上まで昇っていた。今が昼というのであれば少なくとも1日は経っていた。
咄嗟にウイネルの事を思い出し周りを見渡す。ウイネルはすぐそばで眠っていた。ウイネルも無事なようで安堵した。それと同時になぜ助かったのか疑問に思うが今はとにかく自分達が生きている奇跡に感謝した。
2人共着ていた服はボロボロでほぼ半裸姿であった。杖と槍を失くし、ここがどこなのか気になる事もあるがソフィはただただウイネルが目を覚ますのをそばで待っていた。






