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この弓はエクスカリバーである!  作者: 古嶺こいし
第一章・アツィルト
35/50

レベルを上げましょう『一皮剥けました』

 ギリギリで競り勝ち、ディラはヨロヨロとしながら洞窟の外へと戻ってきた。

 なんで87に上がるときに倒した相手ともう一度やりあわないといけないんだよ。と、恨み言を心の中で呟きながら。

 スキル乱用しすぎて頭超いたい。


「…ただいまぁ……」


 外に出るとマーリンガンが笑顔で出迎えてくれた。


「本当に倒しちゃったね。全部見てたけど君んところのモンスターえげつなくない?」

「俺的にはあなたがえげつなくない?です」


 絶対サドだよなと思いながら見回すと、みんな揃ってガタガタしてた。


「嘘だろ、防いだのに衝撃が貫通してきたぞ…」

「……」

「…………折れてない」

「………」

「……死んでしまいます…」


 クレイは未だに信じられないって顔しているし、ジルハは初手で使い物にならなくてショックでしゃがみこんで蹲り、ドルチェットは大剣で防ごうとしたときに折られたらしく、今は元に戻っている剣を入念にチェックし、アスティベラードは無言でうつむき、ノクターンは顔から色が消えている。

 とりあえず感想を聞いてみることにした。


「これがレベル30だけど、どう?」


 むりむりむりと手を振るクレイ達。

 聖戦時のギュレアハは主にディラと功太が相手をしていたから被害は最小だった。しかし、次はそういかないかもしれない。


「ねぇ、普通に個別にレベル上げした方が良いと思うんだよ俺」

「そう?仕方ないなぁ。じゃあメニュー変更しようか」


 ディラの提案の元、ディラの記憶からそれぞれの武器属性においてレベル上げに有効だと言われるモンスターをマネーバ(ビグ・マネーバよりも小型)で作り出した。


 クレイにはスピード重視のガンラゥバット。

 ピョンピョンと素早く跳ね回りながら、口から銃の弾のようなものを発射するめんどくさいモンスターだ。

 それをクレイは盾で防ぎながら倒すというもの。


 ドルチェットはゴーンタートル。

 別名岩亀と言われるモンスターで、その名の通り体が石で出来ていて、やたらに斬ってもこっちの武器が破壊される厄介なやつ。

 ドルチェットは攻撃力の強化と太刀筋の調整。


 ジルハはシャドウダイブ。

 俺も相手にしていてイライラするタイプのモンスターで、好きな所に影を発生させてまるでもぐら叩きをしている気分にさせてくる別名殴り殺したいモグラ。

 何がムカつくってこいつこっちの足元にも影で落とし穴作ってくるし、ランダムで麻痺の咆哮放ってきて目眩を起こさせるんだ。

 ムカつくよね。


 ノクターンは少し特殊なものにした。

 ノーマル・マリオネットに補助魔法を掛けまくってそれでホーンヴォルフを倒すというもの。

 直接戦えない補助魔術師は本を読んで詠唱と式を覚え、それを人形に反映させて戦わせるというもの。

 マリオネットの種類は剣士にしておいた。


 そしてアスティベラードだけど。


「…む」

「うーん…」


 マーリンガンとにらめっこ。ではなく考え込んでしまっていた。

 理由は。


「普通の呪獣使いなら訓練の仕方が検討つくけど、アスティベラードの場合はどうしたら良いのかわからない」


 とのこと。


「何が違うの?」と訊ねると、マーリンガンが腕を組んで体を左右に揺らしながら説明する。


「それがね、色々押さえ込んでしまっているし、封印もされているんだよね。どうしようかなーって感じ」

「封印ってどういうこと?」

「ああ、普通のじゃなくね。簡単に言えば、自分でね、押さえ込んでいる感じ。普通ならこんなヤバいのくっ付けれてたらあっという間に飲まれてしまうんだけど、素質かな?わざと手を抜いていて、長いことそれしているから本気の出し方がわからなくなっている感じ」

「ふーん」


 ということは、クロイノは本来ならもっと強いはずってことか。

 む、とアスティベラードが頬を膨らませる。

 マーリンガンの言うことが全く理解できなかったからだ。


「貴様の言っていることは意味がわからない」

「ほら、完全に無自覚なんだよ。無自覚ほど直すのが難しいんだ」


 頭だけ出ているクロイノが首を傾けている。

 可愛いな。


「とにかく、むやみに封印解くのも危なさそうだから自力で思い出して貰うしかないんだけど、時間かかるかもだからさ──」


 ほい、と、ビグ・マネーバを渡された。しかも今度はレベル87指定をされているもの。


「──君は自分の訓練しててよ」

「またアイツと戦うの?嫌だー!」

「なんなら君が負けまくっているあの子でも出したら?88(はっぱ)ちゃんだっけ?」

「オーケー!行ってきます!!」


 アイツと戦うよりはマシだ。







 そんな感じで俺が嫌いなハナちゃん(※レベル87)と三回戦を終えたくらいに事件が起きた。


 ハナちゃんに止めを刺した時に鳴り響いた謎の轟音で、ワザワザ俺用の境界線(結界)を敷いた線を抜けてみんなのいる空間へと行けば。洞窟全体にヒビが入っていた。


「何があったの?」


 補佐役として洞窟内にいるマーリンガンの元へと向かう。

 マーリンガンは一番ヒビの酷いところにいて、しかもその近くにはクロイノもいた。

 ひょいとマーリンガンを覗き込むと予想外みたいな顔をしていた。

 面白い。こんな顔はエクスカリバー引き抜いた時以来だ。


「!」


 目の前を蝶が飛んだ。本物じゃない、魔法の蝶々だ。

 光輝く白い蝶が舞い踊る中にアスティベラードがクロイノに抱き付いて歓喜の声を上げていた。


「おおお!!貴様やるではないか!!」


 微笑ましい光景だが、何故だか違和感を覚える。

 それがなんなのかわからないまま、ディラはもう一度マーリンガンに声を掛けた。


「ねぇ、どうしたの?」


 すると、ようやく我に返ったマーリンガンが口を開いた。


「……いやぁ、良い案が全く思い浮かばなくて、最終的にクロイノを猫扱いして遊んでいたんだよ。蝶々で。そうしたら、突然実体化して」


 「こうなった」と、崩壊している洞窟の壁を指差した。

 ヒビが修復されていくが、クロイノの足の跡がくっきり残っているのを見てゾッとした。

 そこでふと先程の光景を思い出し、違和感の正体に気が付いた。

 相変わらずアスティベラードはクロイノを撫で回し、クロイノもアスティベラードにじゃれている。だが、いつもと決定的に違うところがあった。


「透けてない」


 見えているクロイノであっても、実体がなかったように透けていた。

 触ろうとしても手は通り抜け、空を掻く。

 ましてや、あんな風にがっつり抱き締められないはずだ。いつもはだいたい撫でている振りしかできない。


「ふはははは!!貴様そんな感触だったのだな!!フワフワではないか!!」


 羨ましい。

 そう思ったらクロイノがこっちに来た。

 いつものようにジッと見られ、その後撫でてとでも言うように頭を差し出した。


「撫でていいの?じゃあ遠慮なく」


 手を伸ばしてクロイノの頭に触れた。

 絹だ。もしくはめっちゃ手触りのよい毛のクッションとか毛布とか。

 撫でる手が止まらなくて延々と撫で続けられる。


「これで戦いに参加できるね。もうそろそろしたらレベル測ってみようか」

「マーリンガンできるの?」

「もちろん。そんなの朝飯前だよ」











 マーリンガンの魔法具でレベル測定をした。

 残念ながら正規ではないのでタグには表示されないが、確認することだけはできる。


「上がった…」と、クレイが驚きつつ嬉しそうにしている。

 そしてドルチェットとジルハも上がったようで、「自分もだ」「僕もです!」と、二人して大喜びしていた。

 ノクターンは人形を抱えながら嬉しそうにしているからきっとノクターンも上がったのだろう。

 アスティベラードは、


「ムフ、ムフフフフフ……」


 レベルよりもクロイノに触られるようになったのが嬉しすぎるらしい。

 クロイノの体に顔を埋めて笑っている。


「良いなぁ、羨ましい。さっきアレやれば良かった」


 後で頼んでみよう。




皆の現在のレベルはこうだ。

クレイ、レベル28。ドルチェット、レベル32。ジルハ、レベル27。ノクターン、レベル27。アスティベラード、レベル36。


アスティベラードのレベルが急上昇しているのを見て、クレイが呟いた。


「アスティベラードのレベルの上がり方…」


気持ちはわかる。


「マーリンガンいわくエンジュウのレベルが影響するんだってさ」

「へぇー。おもろいな。ところでお前は?」

「…………」


無言で魔法具に表示された数字を見せた。

ディラ、レベル59

(レベル1)


皆がどよめく。ただし、呆れも含まれたどよめきだ。


「お前の上がり方のがヤバい」

「そりゃ、ずっとレベル87と戦ってたらこうなるだろ」

「……そうだな」


 でもそろそろハナちゃんと戦いすぎて慣れてきたし、どことなく作業みたいになってきたから、そろそろ相手を変えようとか思っていたりする。


 それよりも、マーリンガンの回復させる魔法具が規格外過ぎて怖い。

 翳すだけで全回復ってなに?私有地のみ有効っていっても限度があるじゃん?


「はいはーい!みんなこっち見てー!」


 ガチャガチャと色んな道具を持ってきたマーリンガンが戻ってきた。

 アレはなんだ?お玉と鍋か?何故そんなものをここに?


「さて、そろそろ夜も遅くなってきたし、最後にもう一度レベル30のモンスターとやりあったら夕飯にしようか」


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