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この弓はエクスカリバーである!  作者: 古嶺こいし
第一章・アツィルト
24/50

後悔先立たず『正式に結成しました』

 帰路に吐きながらディラは「疲れた……」と溢した。


「怒濤の1日だった」


 なにこの濃密な1日。

 朝皆と依頼に行って、夕方居酒屋行ったら功太とボスみたいなのと戦って、そして全て暴露と。

 3日分位のイベント集中して、ちょっと疲れた。


 こんなに疲れたんだから何かしらの報酬が欲しいところだけど、そんなのあるわけ無いだろう。

 何せゲームではないのだから。


「あ!カウンター付けてたらレベル上がってたかも知れなかったのに!!うわあああ…タイミング…」


 きっと付けていたら物凄い経験値を貰えたに違いないのに。

 とはいえ今さら悔やんだところでどうにもならない。


「まーいいや。明日、きちんと上がっていることを祈ろう」










 翌日。カウンターが帰ってきたが、レベルはそのままだった。


「上がってない、なぜ??」


 普通ここは上がっているべきだろう。

 なぜ上がってないのだろう。

 受付の人が物凄く申し訳なさそうな顔で説明を始めた。


「あの、昨日調べましたところ、あなた様のカウンター初期値が何故かレベル87の基準となっておりまして、不思議なことにいくらリセットしてもこれになってしまうのです」


 頭に過ったブリオンでの俺のレベル。

 何となくだけど、悟った。

 なんとなく、今の姿がブリオンのPCそのままなので、レベルもそうなんだろうなと薄々思いはしていた。


 だけどその説明はクレイには納得できなかったようだ。


「嫌々それはいくらなんでも。せめて30か40ならわかりますけど、80台って。何回限界突破しないと到達できないレベルですか?」

「クレイ。俺今凄い納得しているから大丈夫」


 むしろしっくり来てる。

 一周回って「なるほどそうきたか」という感じだ。

 そんなディラを見てドルチェットが呆れかえっていた。


「凄いなお前。どこが納得できるんだ?自分だったら激怒ものだぞ?」

「あのー、まさかアレが関係するとは思ってなかったから、言ってなかったけどさ。実は俺、前居たところではちょうどそのレベル」

「………」

「………」


 時が止まったかのように黙る二人。

 無言でクレイに頭叩かれた。

 だんだんクレイが容赦なくなってきた


「えー、つまりお前のその頓珍漢な事態は前のところのレベルに引き摺られているという感じか」

「恐らく」


 それ以外考えられない。

 むしろそれ以外だったら驚く。


「これはジョブチェンジに当たるのか?でもジョブは変わってないんだろ?」

「やっていることも同じだし」


 受付さんを見ると、さりげなく男性職員と入れ替わってた。

 この前バックヤードから呼ばれていた人じゃないですか。

 その男性職員が今までの話を聞いていたのか、説明を始めた。


「推測ですが、これは引き継ぎと呼ばれるものかもしれませんね。何かしらのエラーでレベルが1になっていますが、もしかしたらレベルアップすれば本来のレベルから上がった状態になるかもしれません」

「……レベル1の依頼での88のレベルアップは難しいんじゃないでしょうか?」


 多分、死ぬまで上がらない可能性がある。


「そちらの方は上の者に報告して対処いたします。何かしらの連絡を致しますのでこちらか、もしくはこれを持って近くのギルドカウンターへと定期的にお越しください」


 テーブルに変わった模様の入ったタグが置かれた。

 それを首に下げたタグと同じ紐に繋ぐ。


「何かしらの事情がある方にお配りしているものです。カウンターの数値をこちらで計算してレベルをこちらの方に記載いたします。ちなみに現在通常でしたらレベル5です」

「レベル5か」


 まずまず、だな。


「ただ、正式ではないので依頼を受ける場合はお仲間さんの方から同行という形になります。でもレベルが上なので多少の無茶もききますよ」

「なるほど」


 なら全然問題ない。

 というか、ここでもブリテニアスオンライン形式のレベルアップ方法なら恐らくしばらく上がらないだろうし。

 二回チャレンジして失敗したからな。軽くトラウマ。

 とはいえまさか此処でも同じ訳ではないだろう。


「そんな感じで大丈夫でしょうか?」

「あ、はい。大丈夫です」


 問題解決ではないけど、酷い対応じゃなくてよかった。

 ホット胸を撫で下ろしていると、クレイが訊ねた。


「本当にいいのか?」

「意地でも許さない。例外も認めないってのを知ってるから。緩くてよかったなーって」

「お前んところどんだけ厳しいんだよ…」


 うええ、とドルチェットに変な顔された。

 でも仕方ないだろう。

 こちらの世界の相手はNPCだからね。

 融通云々の前にプログラム外の行動は取らない取れない


「他になにかご用はありますか?」


 ディラの用は済んだので、今度はクレイがカウンターに向かう。


「ああ、このメンバーでのパーティー設立をお願いします」


 こうして、ゴタゴタはあったものの無事にパーティー結成できたのであった。







 

 無事にパーティーを設立し、リーダーを決めた。

 皆を誘ったクレイが就任。


「オレがリーダーだ!」


 そう宣言したクレイへ向けて、パチパチと拍手が鳴らされる。

 何だかんだと今までも指揮や指示出しをしていたのはクレイだ。

 異論はない。


 すんなりとリーダーになったクレイが、残ったみんなにジャンケンをして欲しいというのでやったら、なんと勝ってしまった。


「じゃんけん勝ったー!」

「じゃあ、お前副リーダーな」

「いぇーい!」


 まさかの副リーダーに就任。

 掲げたチョキが眩しい。

 副リーダーとはいわゆるリーダー不在時に指揮を取る人である。

 果たして自分に務まるのか不安ではあるが、なってしまったからには頑張るしかない。

 一応功太と二人で組んでクエストしている時は自分がやっている役だし、何とかなるだろう。

 チョキを掲げたディラにクレイが言う。


「とはいえ、元々お前は攻撃担当のリーダーにするつもりだったけどな」

「そうなん?斬り込み隊長的な?」

「的な」


 それはそれで楽しかっただろうなと思ってると、ドルチェットが不満な声を上げた。


「えええー!自分がそれやりてぇ!」

「採用」

「どうぞどうぞ」

「はいはい」

「やったぜ!」


 駄々をこねたドルチェットだが、クレイとディラ、そしてジルハが促しあっさり斬り込み隊長に就任した。

 すんなりと役が決まるのは大変よいことである。


「あとはー」と、クレイが残りのメンバーの役を考えていると、アスティベラードが腰に手を当てて自信満々に言う。


「偵察なら任せよ」

「斥候できます」


 だが、タイミングよくジルハと声が被ってしまった。

 しかも二人とも似たような台詞で、なんとも言えない空気の中、二人は無言で互いを見た。


「……」

「……」


 なんだろうか。ジルハとアスティベラードの間がビリッとなったぞ。

 喧嘩はやめてね。


「ワ、ワタシは…」

「こやつにシャールフの事を教え込むのだ」


 間髪いれずにアスティベラードにそう言われ、ゆっくりとノクターンがディラの方を向く。

 そして頭を下げた。

 慌ててディラも頭を下げる。


「…………よろしくお願いいたします…」

「よろしくお願いいたします」


 毎度毎度お疲れ様です。

 あと無知でごめんなさい。


 役割分担を終えたクレイが満足そうにしていた。


「こんなもんだな。ここでいける限りのレベル上げしていこう」

「賛成!」

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