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この弓はエクスカリバーである!  作者: 古嶺こいし
第一章・アツィルト
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聖戦開始『ギュレアハ』

 皆でタワレアルを駆除しつつ進んでいると、ドルチェットが「……自分もスキル発動?ってのしてみたい」と言った。

 そういえば出来るのだろうかと、ディラはドルチェットとジルハの方に耳を傾けた。


「やってみればいいじゃない?」


 ジルハの回答に「そりゃそうだな」とドルチェットは早速やってみたが、よく分からなかったようだ。

 眉間に皺を寄せながら首を傾けている。


「…出来そうな気はするんだけどなぁ」


 不満げなドルチェット。

 同じくドルチェットの様子を見ていたクレイが言う。


「じゃあ、今んところディラだけ出来るんだな」

「みたいだね」


 皆もできたら楽しかったろうに、残念だ。


 ドルチェット羨ましそうにディラを見ている。

 ジルハがさりげなくフォローに回ってくれた。


「まぁ、ほら。得意不得意とかあるし」


 というが、これは得意不得意の範囲内なのか。

 よくわからないが。


「やっているうちに出来るようになるんじゃない?」


 とりあえずドルチェットにそう言ってやったら。


「よーし!やったるぞ!」


 やる気を戻してくれた。

 此処で士気を落としてもらいたくなかったから良かった。


 ノクターンがおずおずと「あの…」と困ったような顔で小さく手をあげる、


「うん?」

「あの、小さいのがたくさん向かってきているみたいですけど…、大丈夫ですか…?」


 ノクターンが示す方向から大量のタワレアルが飛んできていた。


「ありゃ、全然大丈夫じゃないね」


 即座に処理しようとすると、私がやるとアスティベラードが前へと出てきた。


「  退け  」


 黒いのが背後から身を起こし、尻尾一薙ぎでタワレアルが全滅した。


「援護は任せろ」

「わお」


 凄い頼もしい。

 黒いのの印象が更に良くなったディラの後ろで皆がどよめき、


「なんだその真っ黒のはー!!!?」


 ドルチェットの驚愕の叫びが辺りに響いた。




 なぜだか他の皆にも見えるようになっていた。

 しかし予想外の事が続いたお陰でそこまでの拒絶反応はなかった。

 むしろアスティベラードのジョブがテイマー(猛獣使い)疑惑が浮上したほどだ。

 実際は違うらしいが、肩のトクルといいもうテイマーで良いんじゃないか??

 どちらにしても凄く助かる。


「人は食べたりしない?」

「食べぬわ戯け」






 住人の姿が無くなり、代わりにタワレアルの数が増えていく。

 それらを黒いのの尻尾によってあっという間に蹴散らし、遂に大きなマーカーの姿が目視できる場所へとやってきた。


「うわ、なんだあれ」


 家は消し飛び、更地になった場所の中心点にあるそれは、とてつもなくでかかった。


「でっか…、巨人??」


 それは巨大な人の形をしていた。

 天まで届くのではないかと思うほどの巨体を持つそれは静かにそこに鎮座していた。

 女性のような出で立ちに、しかし顔は翼で覆われて口以外確認できない。

 腕もなく、その代わりに腹部が異様なほどに膨れていた。

 何故これ程大きなものがこんなに近くに来るまで気が付かなかったのか。

 こんなの此処に着いた時点で見えてないとおかしいはずなのに。

 何かのスキルだろうか、【気配遮断】とかか?


「あれがこのタワレアルとか言う化け物を産み出している元凶か?」


 クレイの問いにディラが「うん、多分…」と返す。

 本来であれば、此処がブリテニアス・オンラインであればタワレアルのボスはグランバエノという、顔が赤子で体が蠅、頭には王冠という5メートルはある怪物なのだが、目の前にいるこれは明らかに5メートルを優に越していた。

 100メートルはありそうだ。


「見よ。腹が…」

「あ」


 アスティベラードが巨人の腹部を示すと、膨らんだ腹部が裂け、内部から鳥かごのような構造が露出した。

 その鳥かごから排出されるのはタワレアルだ。

 やっぱりあれが元凶だったのか。


 ゴゴンと地面が揺れる。

 なんだと思う間もなく腹が閉じ、巨人が足元へと視線を落とした。

 なんだ?


「誰かいるぞ!」


 ドルチェットが指差す。

 瓦礫を乗り越え開けた先に、巨人に攻撃を仕掛けている人物がいた。

 明るい金髪で、青と金が目立つ装備を身に付けた青年。


「功太!」


 なんであいつも此処に?

 疑問に思うのも束の間、巨人がこちらに気付いたのかゆっくりと体の向きを変えた。


「ん?」


 ジルハが巨人の頭上を注視し始めた。


「誰かいる」

「え?」


 あんな高度に人なんかいるわけがないだろう。

 そんな事を思いながらジルハが見ているだろう位置に【千里眼/遠見】を発動して見てみると、巨人の頭部付近に人が浮いていた。

 え、嘘だろともう一度見直すが確かに人。

 それも女性である。


 その女性がこちらを向き、目が合った。

 途端に背筋に走る寒気。


『おや?おかしいな?この聖戦には勇者とその仲間しか参加資格がないはずだが。貴様、一体何処からこの閉鎖空間へとやって来た?』


 ゴクリと生唾を飲み込む。

 ただの勘だけど、あの女性。

 なにかおかしい。


『まぁ、良いか。見るところ、資格の一部を所持しているようだし、特別に参加を認めてあげる』


 今すぐに逃げないと不味いんじゃないか?

 そんな言葉が頭を過るが、それに反して体は動かない。


「なぁ」と後ろでアスティベラードがノクターンに話し掛けるのが聞こえた。


「今、聖戦といったか?」

「…いいましたね……」

「聖戦というのは、あれか。シャールフの」


 なるほどこれはシャールフ関連、というわけか。

 少し頭が冷静になってきて、功太へと視線を移す。

 攻撃がうまく通らずに苦戦しているようだ。

 立派な装備なのに土ぼこりにまみれてしまっていた。


 功太のすぐ後ろには自分の事を殺そうとしてきた“くのいち”、もといアサシンがいる。

 少し離れてガムキー先輩とやりあっていた戦士の姿もある。

 それに見知らぬ顔も増えていた。

 女性で、何となく聖職者のような雰囲気の女性だ。

 三人とも功太よりもずたぼろにされていた。


 新入りは分からないが、正直あの二人は好きではない。

 アサシンに至っては嫌いの枠に入っているが、ここは緊急事態。

 好き嫌いしていてはあっという間に全滅してしまうだろう。


『では改めて……』


 女性がこちらと向かって胸を張る。


『吾が名はクリフォト・トロフィセ、この聖戦を仕切る者だ。あいにく吾が事細かにルールを説明することはしないが、一つだけ確かな事を教えてやろう』


 メキメキと女性、クリフォトの足元から根っ子のような蔦が伸びていく。


『この使者どもを倒してみせよ。もし、万が一倒せなければこの空間は消えることなく広がっていき、最後の審判の日までそれぞれの使者が降臨して世界を蹂躙するだろう。

 なに、そう怯えずとも良い。単純な話だ。“倒せば良い”だけなのだから。

 仮にも神具に選ばれた者なのだ。こんな初戦で全滅した、なんて…


 吾を失望をさせてくれるなよ?』


 クツクツとクリフォトが嗤う。


『では、初戦だ。このギュレアハを倒してみよ』


 視界の巨人を示していたマーカーに名称が表示された。


 第1の使者、ギュレアハと記載されていた。


『ではな、楽しみにしておるぞ』


 勇者ども、と、いい終えると同時にクリフォトの姿は足元から伸びた蔦によって覆い隠され、まるで溶けるように消えた。

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