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この弓はエクスカリバーである!  作者: 古嶺こいし
第一章・アツィルト
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新米冒険者誕生『初顔合わせである』


 翌日、クレイに言われた通りの時間に入り口近くの噴水へと向かった。

 この世界で初めての仲間はどんなのだろうかとわくわくが止まらない。

 途中、急いでいる風の男と肩がぶつかって吹っ飛ばされ掛けたけど、それを差し引いてもいい気分だった。

 スキップ混じりに目的の噴水広場へと到着すると、早速ディラはクレイを探し始めた。


「何処にいるんだろう」


 朝方の噴水前は思ったよりも人が多かった。

 見つかるだろうかと少し不安だったが、目を凝らして端から端まで流し見ると、変わった形のガントレットを着けた緑髪を見つけた。

 クレイだ。

 すぐさま直行すると、到着する寸前にクレイが気付いて振り反った。


「よ!ディラ!時間通りだな!」

「おはよーございます」

「お前、けっこー律儀だな」

「挨拶は基本って口酸っぱく言われたもんで」


 ナッツ村のおばあちゃんに。

 元気かなと思いを馳せていると、クレイが「なるほどな」と頷いていた。

 ところで、と、ディラは思考の海から帰還して辺りを見回した。


「他の人はまだ来てないんですか?」

「いや、いるぞ」


 ほら、と、クレイがある方向を指差す。


「まずあそこにいる二人だ」


 ディラが指差す方向に目を向けると、そこには二人の美女がいた。

 一人は褐色の絶世の美女で、あまりにも美女過ぎて謎の圧がのし掛かって呼吸困難になりそうな──何いってんだと思われるようだが、それくらい謎の圧を持った美女だった。

 ついでに言えば、肩に止まった猛禽類も睨んできてて怖い。

 そしてその隣にいるのはフードを深く被った、とても変わった服装の人物だった。

 こちらも同じく女性で、露出している肌は同じく褐色。

 同郷なのだろうか。だとしてもだいぶ服に差がある。

 フードの女性は一瞬踊り子、もしくはピエロなのかと思うほどに不思議な服装だった。

 思わず見ながら分析していると、「おい」と不機嫌そうな声がした。

 褐色美女がディラをこれでもかと睨み付けていた。

 ただ睨み付けているわけじゃない。

 なんというか、虫けらを見るような目で睨み付けていた。

 ただでさえ圧が凄いのに、思わず腰が引けそうになる。


「何をジロジロと私を見ておる。この無礼者め」


 物凄く昔風な話し方の人だなとディラは思った。思いながら頭を下げた。

 確かに初対面の人をジロジロ見るのはかなり失礼だったかも。


「ごめんなさい。つい見てしまいました」

「ふん」


 完全に機嫌を損ねてしまったようだ。

 何事も初めが肝心なのに失敗した。


 そんなディラと美女の様子を見て、クレイが冷や汗流しながらフォローに入ろうとしてきた。


「ま、まあまあ…。ディラはさ、凄く町から外れた辺鄙な場所から来たんだ。悪気は無かったと思うから許してやってくれ」


 だが、美女は笑顔で「そうですね」と流してくれるタイプではなかったらしい。

 圧がクレイの方へと向けられ、凛とした声でこう言い放つ。


「許す許さないを決めるのはこの私だ。人に言われることではない」


 あはは…、そうですよね…、と苦笑いするクレイ。

 そんな中でディラは「そりゃそうだ」と納得してた。今後気を付けよう。

 気を取り直してクレイに向き直る。


「これで以上?」

「いや、後4…いや、2人来る予定」


 何かあったのだろうか。


「人数が減ったのは何かあったの?」

「二人が何でも急用が出来たっぽくてな、今朝がた慌てて町を飛び出していった」

「ふーん」


 すんでで予定が変わってしまうのはたまにあるけれど、何かやらかした感が否めない。

 気にはなるけれど、恐らく二度と会うことは無いだろうから早々に忘れることにした。


 クレイがそわそわと宿が並んでいる通りを見て、残りの二人を探していた。


「後の二人ももうすぐ来るはずなんだけど…」


 まさかそっちも急用とか無いだろうなと思いながらのんびり待っていたら、人混みの奥の方から騒がしい二人組がやってきた。

 片方は白銀の髪をポニーテールにした女の子で。


「キャベツ!遅れてすまん!!ちょっとトラブってな!」


 もう片方は少年。


「痛い痛い!!もう少し握力弱めて!!」


 なのだが、なんだろう。女の子の方が断然男らしい感じだった。

 現に今も頬についた赤い汚れをぐいっと腕で拭っていた。

 ちょっとワイルドすぎない?

 ワイルドなのはそれだけじゃない。


 視線を女の子の背中に向ければあまりにも大きい剣の柄が飛び出していた。

 大剣少女。ゲームでは良く目にするソレは、実際に見ると凄い迫力だった。

 それに比べて隣の少年は何の特徴も無い一般男子。

 金髪の少年の体を見ても何の武器なのか解らないし、はっきり言って間違って紛れ込んでしまった人といった感じだ。


 パンと手を叩いてクレイが注目を促す。


「よし!これで揃ったな。じゃあ、改めて自己紹介といこう!

 オレはクレイ。ジョブはシールダーだ。ジョブチェンジとリセットでレベルは1だが、元々はアーチャーだったから見極めが使える」


 次、とクレイに指名された。


「えーと、俺はディラ。ジョブはアーチャー。冒険者初心者だけど、一応前から弓を使っていたからそれなりに動けると思います!」

「アーチャー?にしては腕細くね?」

「まぁ、あの、特殊な弓でして」


 ドルチェットの質問に思わず言い訳したが、間違ってはない。間違ってはないぞ。

 けれど確かにこんなモヤシ腕がアーチャーっていっても説得力無いか。と思いつつ隣のクレイの腕を見た。

 筋トレでもしてみるか。


「あの…、わ、ワタシはノクターン…ジョブは魔術師です…。隣のこの方はアスティベラード…ジョブは……」


 フードの女性が褐色美女をチラリと見る。


「……その…、まだ秘密と言うことで……。…鳥はトクルと言います…」


 気まずそうにそそくさと切り上げたノクターンにクレイが「なるほどサプライズか」と変に納得した。


「そんなんで良いの」


 ならば自分もふざけた自己紹介すればよかったな。

 ジョブはアーサー王ですー、的な。

 エクスカリバーなだけに。


 そんな下らないことを考えていると、ずいっと白銀の少女が前へと出てくる。


「よーし!次は自分の番だな!」


 元気一杯に腕を組み、口を開いた。


「自分はドルチェット。ドルチェット・レッドジュエルだ!見た通りの剣士で、得物は背中のコレだ!よろしくな!

 んでもってぇ、こっちが──」

「ジルハ・ビースターです。ジョブはアサシン」


 少年のまさかの職業にディラのテンションが一気に上がった。


「アサシン!?」

「うおビックリした」


 クレイがディラの大声に吃驚してた。すまんと思いつつもディラのテンションは上がりっぱなしだった。

 思わず少年、ジルハにアサシンならばと質問をしてみた。


「すっげー!クナイとか持ってる!?」

「えーと、まぁ、はい…クナイ?とかではありませんが…投げナイフなら…」


 困惑したジルハがきちんと答えてくれた。

 パッと見武器なんか持っているようにも見えないのに何処に隠しているのか。暗器と言うやつなのか。


「へぇ!ちょっと見せ──」


 言っている途中で脳内に功太との遭遇した瞬間に浴びせられた攻撃を思い出す。

 痛かったな、あれ。あ、なんでか悪寒と頭痛が。

 急激にディラのテンションが戻り、変わりに刺されて痛かった箇所を思わず擦った。


「──いや、やっぱり止めときます。ごめんね、急にテンション上げてしまって…」

「??? いえ…大丈夫です」


 ジルハに変な人だなと思われただろうな。

 仕方ないじゃないか。忍びって、それだけでテンションが上がるんだよ。

 急にテンションの下がったディラにジルハは首を傾けながらドルチェットと目配せをしていた。


 そんな中、アスティベラードが不思議そうな顔でドルチェットに訊ねた。


「レッドジュエル?なぜレッドジュエルの者がこんな所におるのだ?」

「なんだ、お前さんうちを知ってるのか」

「むしろ知らぬ方が少ないだろう」


 知らないなぁ、と、この世界出身ではないディラは思う。

 貴族とかなんだろうか。それとも芸能人か政治家か。

 クレイにそれとなく聞こうとしたが、クレイも分からなさそうな顔をしていた。

 なんとなく察した。

 多分、ある一定の家柄がないと通じない的なものなんだろう。

 とするとこのアスティベラードも貴族っぽいではある。

 喋り方も古風だし。


 当然のように言われたドルチェットが「あー…」と良いながら頭を掻いた。


「その、まぁ、色々あったんだよ…」


 本当に何があったんだろうな。

 気にはなるけれど、もしかして強制リセットと関連があるのかもしれない。


 ごほんと、クレイが咳払いして気を取り直させた。


「これで一通り自己紹介が終わったな。んじゃあ、早速だけど仕事に取り掛かろう!」

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