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5.第一歩として‥‥‥

アリエスから話を聞いたのだろう。

ドンドンと大きな音を立ててドアがノックされ、お父様の怒鳴り声が響き渡った。

だけど部屋にはカギがかかっている為お父様でも入ることはできない。

いつまで経っても対応する気配すら見せない私にお父様はやがて諦めていった。その日、夕食が部屋に運ばれなかったことからお父様が使用人にそう命じたのだろう。

お父様は中継ぎの当主で私の方が本当は権利を有しているけどそれでも未成年の私に従ってくれる使用人は誰一人いない。それに今まで私はお父様の命令に従っていた。

そんな私をお祖父様は何度も窘めてくれたのに私は自分から何も動こうとはせずに彼らに搾取され、死んでいった。

でも今世ではそうはいかない。

この邸にはお祖父様の息がかかった使用人がいる。その人がお父様のことや私のことを報告しているはずだ。お祖父様は優しい方でも甘い方でもない。

孫だからという理由では助けてはくれない。それにお祖父様にとって私は愛娘の娘だけど同時に愛娘を苦しめ、死に追いやった男の娘でもある。お祖父様はお母様をとても大切にしていた。そんなお母様のお願いでお父様と婚姻させたことを生涯、最も許されない過ちとして悔やんだことだろう。

少しでもお祖父様の後悔を減らすために、これ以上失望させないために私がお父様と決別してラーク公爵家に有益な存在だとお祖父様に認めさせなければならない。

その為にはまずお祖父様の息がかかった使用人を味方につける必要がある。前の人生では分からなかったけど今は目星がついている。

私が婚約破棄されて、アリエスとワーグナーが婚約した時期から邸から消えた使用人がいた。その人はとても優秀でお父様の補佐をしていたのにある日突然だ。

お父様は血眼になって彼を探したけど行方は遂に分からなかった。その日から徐々にラーク家の経営は上手くいかなくなっていった。

多分だけどその人が当主の仕事をして、お父様はそれに承認印を押すだけだったんでしょうね。

それだけじゃない。

私、ちょっと気になっていることがあるのよね。

それはアリエスが着ているドレスや身に着けている宝石だ。お父様が与えているみたいだけどそのお金はどこから出ているのかしら?

アリエスは両親が死んで、孤児になった。彼女も彼女の両親も貴族なので本来なら遺産が遺されている。でもアリエスにはない。なぜなら彼女の両親は事業に失敗して多額の借金を負った。それを返済すべく功を焦って更に事業を拡大させようとした矢先の事故で死んだのだ。

因みにだが彼女の家はラーク家の分家に当たるのでその借金はラーク家が肩代わりをしている。だから残ったアリエスはラーク家に借金をしている状態なのだ。

そんな彼女にドレスや宝石を購入する為に出す金額はないし、私にかかる費用はラーク家から出ているがそのお金はお祖父様の信頼篤い弁護士が厳重に管理している。だからお父様でも引き出せない。

お父様にも勿論、ラーク家の人間としてお金は与えられているけど毎日のように商人を呼んでドレスや宝石を買う程ではないはず。そんなお金をお祖父様がお父様に与えるはずがないのだ。

そもそもラーク家に関するお金の権利は隠居されたお祖父様が管理をしているが私が成人すればそのままその権利は私に移譲される。お父様に渡るお金は一銭もない。

まぁ、その権利すら前の人生ではお父様に言われるがままお父様に権利を移譲してしまい私は無一文になったけど。きっとあれでお祖父様には見放されたのでしょうね。

本当にどこまでも前回の私は愚かだった。

話を戻すと、考えられる理由は一つ。領地経営の為のお金を横領している。お父様を補佐している彼がそのことに気づかないはずがない。黙認しているのは試す為だ。

私がどう動くのか。

今度こそお祖父様を失望させるわけにはいかない。自分が生き残る為に。もう、搾取される人生は御免だ。あんな惨めな人生は二度と送りたくない。

その為の第一歩としてまずはワーグナーとの婚約破棄。

きっとアリエスはお父様に虚偽の報告をして私を罰させようとしたようにワーグナーにも虚偽の報告をするだろう。怒ったワーグナーの取る行動なんて分かりきっている。

そして明日は私とワーグナーが本来なら一緒に参加するはずのパーティーがある。

そこにワーグナーは私のエスコートをすっぽかしてアリエスをエスコートして登場する。

馬鹿な私はワーグナーが来るのをギリギリまで待ってワーグナーとアリエスよりも遅れて参加して、ワーグナーに怒鳴られて、周囲の人間に嘲笑された。

でも今回はそうはいかない。

ワーグナーとアリエスを利用してワーグナーに私との婚約破棄を撤回できなくさせてやる。



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