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20.既に手遅れだと彼女はまだ気づかない

side.アリエス


あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない。


「見て、ヘルディン男爵令嬢よ」

「まぁ、ご覧になって。あのように指を噛んで。はしたない」

「いい気味ね。彼女、少し調子に乗っていたから」

「元公爵様と仲が良くて、自分も近いうちに公爵令嬢になるからといつも偉そうにしていましたものね」

「ええ。本物の公爵令嬢を蔑ろにして」

「彼女、どうなるのかしらね」

「以前のスフィア様なら哀れな男爵令嬢に慈悲の心から手を差し伸べ、それこそ公爵家の養女にしていたかもしれませんね。でも今のスフィア様はどうでしょう。公爵位を賜ったせいか、なんだか以前よりも頼もしくなった気がしますわ」

「ええ。今のスフィア様ならきっと正しい判断ができますわ」

正しい判断って何よ。

私が、この私がっ!男爵令嬢なんてあり得ないっ!

ワーグナー様も謹慎中とかで全然会えないし、お父様もお姉様の策略に嵌って罪人になるし私はまだ男爵令嬢のまま。

何としても公爵令嬢になってあの女の上に立ってやる。

あんな女よりも私の方が相応しいわ。だいたい初めて会った時から気に入らなかったのよ。公爵令嬢だからって偉そうに、いつも綺麗なドレスを着て、見せびらかして。従妹なのにどうして私が男爵令嬢なのよ。

あんな地味で取柄のない女よりも可愛くて聡明な私の方が公爵家に相応しいに決まっているわ。その証拠にワーグナー様だって私を選んだ。


「ワーグナー殿下は大きな魚を逃したな」

「ああ。大人しく彼女と婚約していれば公爵家がそのまま転がり込んできたのに」

「陛下はどうなさるおつもりだろうか?まさか男爵令嬢と婚姻させて男爵家に婿入りなんてないよな」

「王族が男爵家に婿入りなんて前代未聞だな。それも借金まみれの没落貴族なんて尚更。だが他の王子ならともかくワーグナー殿下ならありなんじゃないか?」

「医者だけではなく陛下も匙を投げられたと?」

「ああ。公衆の面前であのような醜聞劇をやらかしたのだ。面倒を見きれんだろ」

「しかし、男爵令嬢も何を思ってワーグナー殿下を選んだのやら。まともな令嬢ならまず選ばないな」

「ほら、噂をすればだ」

「あれが噂の男爵令嬢か。まぁ確かに可愛らしい見た目はしているな。恋人にするにはちょうどいいかもしれん」

「ああ。妻には向かないがな」


視線を感じる。

私が視線を向けて来る相手に目を向けるとみんな私から視線を逸らす。

なぜ?

しかもちらちらと私を見ながら何やら話している。

ああ、きっと私の可愛さに驚いているのよね。それにもう少しで私は公爵家の養女になれたのに性格の悪いスフィアに邪魔をされた。周囲から見たら私は可哀そうな令嬢だもの。きっと同情しているんだわ。

近づいて慰めたいけど私はワーグナー殿下の婚約者。それでみんな怖気づいたのね。私から視線を逸らすのはその罪悪感からか。気にしなくても良いのに。

まぁ、そんなことよりもスフィアを探して一応媚を売っておこう。

あれに媚を売るとか最悪だけど、背に腹は代えられない。私が公爵令嬢になるまでよ。公爵令嬢にさえなれば、そのまま乗っ取るのも簡単。私が公爵位を代わりに授与されて、それをそのままワーグナー様にお渡しすれば、きっとワーグナー様は喜んでくれる。

ますます私を大切にしてくれるでしょうね。私はスフィアなんかとは違って色んな人に愛されている。愛されるべき人なのよ。

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