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19.物陰から見ていた

side.ヴァイス


俺の色で着飾ったスフィアは美しく、部屋に閉じ込め俺以外の人間の目に触れさせたくないと思った。

切れそうになる理性の糸を何度も結びなおして自制した。

彼女は一人で立つことを選んだ。

女公爵として強くあろうとする姿を見れば俺のだと牽制することはあっても邪魔だけはしないと心に誓った。今後、彼女が手にする功績を俺のおかげなどと言わせてはいけない。

ああ、でも。

「分不相応な蝿共ぐらいは処理しても問題ないよな」

俺のスフィアに視線を向けるのも好意を寄せるのも許せないのに彼女を傷物と貶め、しかも公爵位を手に入れるための道具として婚約を取りつけようなどと到底見過ごせるはずがない。

「処理しろ」

声なき指示にレオンとオズは姿を見せることなく去って行った。

まずはあの男爵からだ。

そして、次は。


「傷物の令嬢なんてヴァイス殿下に相応しくはありませんわ」

「身の程を弁えて下がるべきだわ」


俺から逃げてこんな場所にいたんだな、スフィア。

そんな月明かりに照らされるスフィアは美しいと有名なあのアフロディーテでさえも裸足で逃げ出すほどに美しい。

そんな彼女に群がるコバエが二匹。

「シンシア・オスティナート侯爵令嬢とドーラ・ソヴィール伯爵令嬢か」

俺は記憶を遡る。

「シンシア・オスティナートは確か、使用人の男との間に子どもができていたな。婚約者から莫大な慰謝料を請求され、彼女の両親がなんとか払ったが原因となった彼女は勘当されていたな」

そして彼女と恋仲であった使用人の男は貴族の令嬢を妊娠させたということで侯爵に体罰を与えられ、死んだ。

残されたシンシアが子供を連れたままどのような生活を送って死んだのかは知らない。だが今まで着替えも一人でしたことのない、お金に触れることさえない貴族令嬢が平民になってまともな生活が送れるはずがない。

行き着いた地獄で絶望の中、死んでいったのだろう。

「ドーラ・ソヴィールは、伯爵がギャンブルに嵌っていたな。かなりの借金があったはず」

伯爵は何が何でも娘を良いところの家に嫁がせて、借金を肩代わりさせたいと思っているだろう。伯爵にとって娘は自分の不始末を片付けてくれる道具に過ぎないということだ。それに気づきもせず、与えられるドレスや装飾品を愛情と勘違いするなんて何て間抜けな令嬢だろう。

「‥‥…ヴィッツ・イトワールは保留にしておこう」

スフィアを貶めるような発言の数々には腹が立つが、彼女のことを気にかけているようだし、スフィアの言葉を聞いてあの愚かな父親の呪縛から解き放たれた時彼女は凄まじい進化を遂げるだろう。それはこの国の為にもそしてスフィアの為にもなる。

だってきっと彼女はスフィアに恩を感じてくれるだろうから。

ただ‥…。

「警告はさせてもらおう」

スフィアに手を出せばどうなるか。

「スフィア、害虫は全部俺が排除してやろう。だから君は心おきなく復讐を果たすといい」

アトリは没落した。

「残るはアリエス・ヘルディンと我が愚弟」

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