250 風の呪歌<ガルドル> ②
亡国ラ・カーナへ入って一日目、ヘズルを目指して瘴気の中を歩いていたルーファス達は、途中で出会した未知の巨大生物により、見知らぬ森へと転送されてしまいました。その際どこからか聞こえて来た笛の音を辿って行くと、線の細い儚げな印象の男性に出会います。その男性の名前はルーファス達が探しに来た、『クラーウィス・カーテルノ』という人物と同じ姓で…?
【 第二百五十話 風の呪歌 ② 】
「アドロイク・カーテルノさん…?あなたの姓は〝カーテルノ〟と仰るんですか?」
驚いて再度確かめるように聞き返した俺に、目の前の儚げな男性はにこっと優しく微笑んだ。
「ああ、そうだけど…もしかして聞き慣れない姓だから呼び難いかな?」
「あ、いえ…そんなんじゃないです。」
――驚いたな…俺達が捜しに来た『クラーウィス・カーテルノ』という名の人物と、この人の姓は同じだ。これは単なる偶然なのか…?
「そうか…それでどうする?一緒に来るかい?」
再度そう言われた彼の誘いに了解を得るため、俺は一度みんなと視線を交わしてから頷いて、「よろしくお願いします。」と返した。
ここがどんな場所にせよ、とにかく自分達の目で見て正確な情報を集めなければ、元のラ・カーナへ戻ることも出来ないだろう。
近くにあるというヘズルの街へ行くまでの間、俺はアドロイクさんの後について歩きながら、それとなく話を聞くことにした。
「――あの…ヘズルが近くにあると言うことは、ここはラ・カーナ王国なんですよね。」
「他のどこかにラカルティナン細工で有名な同じ街があるんじゃなければ、多分そうだね。」
「?」
多分??
この人、また不思議なことを言うな…今の言葉は深読みすると、亡国ラ・カーナにもう一つ既に滅んだヘズルの街が存在していると知っているようにも受け取れる。
でもそれならそれで俺達はそこから来ているんだから、こんな遠回しな言い方をするかな…?
「ルーファス君…だったな、君は俺より年下に見えるけど気を使わなくていい。Sランク級守護者と言えば、世界中どこへ行っても敬われる最高位守護者だろう?敬語は要らないからもっと気軽に話して欲しい。」
「そうで…いや、そうか、だったら俺のことも呼び捨てにしてくれて構わないよ。」
「うん、改めて…俺のことは『アディ』と呼んでくれ。家族や親しい友人はみんなそう呼ぶんだ。」
「…わかった、アディ。俺の仲間は左からウェンリーにゲデヒトニス、リヴグストにイスマイルだ。」
「よろしくな。」
「よろしく。」
「ふむ。」
「イシーと呼んでくださいな。」
「はは、いいな…賑やかになって嬉しいよ。」
アディはにこにこと嬉しそうに笑顔を見せながら、また気になる言葉を口にする。
「ここは『アルバの森』と言ってね、あそこは元々壊れた家屋が数軒あった廃村だったんだけど、俺が数年かけて片づけて自力で小屋を建てたんだ。」
「え…って、アディ一人でか!?すげえ!!」
数年かけて…一人で?
ウェンリーは感嘆の声を上げていたが、俺は彼の言葉から別の情報を受け取っていた。
最初の言葉から始まって不思議に思えるアディの台詞は、暗に俺達へここには彼の他に人がいないということを事前に伝えたがっているように感じたからだ。
「――そうでもない。有り余る程の時間さえあれば、誰だって同じことはできるよ。」
「そんなことはありませんわ、あなたは細工師さんなのでしょう?専門職でない方が、小さくても一人で木組みの建物を一から作るなんて、中々出来ることではありませんのよ。」
「そうかな…自分ではそう思っていなかったんだけど、イシーからの褒め言葉だと素直に受け取っておくよ。」
「ええ。」
…イスマイルも気がついているな。
「なあなあアディ、ちょっと聞きたいんだけどさ、俺ら『クラーウィス・カーテルノ』って人を探してんだよ。同じ姓だけど、ひょっとして身内にそんな名前の人がいねえかな?」
ウェンリーは相変わらずマイペースで物怖じしない。そのあまりにも直接的な問いかけに、思わず俺は微苦笑してしまう。
それもウェンリーが俺の身体のことを、なによりも最優先に考えてくれているからこそだと言うことはわかっている。
「クラーウィス…?いや…知らないな。俺には母親と二つ下に弟がいるけど、親類にもその名前は聞いたことがない。」
「あちゃ~、そっか…まあそうだよな、そんな都合良くは行かねえか。」
少し打ち解けたと見るや、早々に俺達全員が聞きたいと思っている質問を真っ先にアディへ打つけたウェンリーは、頭の後ろを手で掻きながら笑って誤魔化し、俺と同じように微苦笑しているイスマイル達に向かって舌を出した。
まあおかげで知りたい答えは一番に聞けたけどな。
「人捜しをしているというのは今聞いたけど、君達はどこから来てどこへ行くつもりだったんだ?」
ほんの一瞬、どう答えようかと思い間が空くが、俺は当たり障りのないように且つ正直にアディへ返すことにした。
「俺達はファーディアのツェツハから来て、先ずは徒歩でヘズルを目指していたんだ。その後は今言った名前の人を捜しつつ王都グランシャリオへ向かい、スウェルヘーゼ村を通って最終的にはロクヴィス地方にある『精霊の森』の古代遺跡まで行く予定だ。」
すると彼は俺の話にかなり驚いたらしく、大きく目を見開いた。
「随分具体的な計画だな…しかも徒歩でなんて、下手をすると数ヶ月はかかる道程じゃないか。」
「ああ。色々と事情があってさすがにそこまでの時間をかけてはいられないから、長くても一月から一月半で最東部に辿り着けるようできるだけ先を急ぐつもりなんだ。」
「ンでも予定は未定、って奴で、早速出鼻を挫かれちまってるけどな!」
「ウェンリー!」
「あなたは…もう、一言余計ですわよ。」
ウェンリーにしてみれば、軽い気持ちで冗談めかしていつものようにイスマイルやリヴの突っ込みを誘い、ついでにみんなを笑わせるつもりだったんだろう。
だがイスマイルに続いてリヴがなにか言う前に、アディが真顔で先に声を発し不発に終わる。
「――そうかい?」
「えっ?」
「そういう事情があるなら、案外君らは凄く運に恵まれているのかもしれないよ。」
その含みのある台詞に、ウェンリーの目論見は吹き飛んだ。
「アディ…?」
「どういう意味だよ、それ…」
「…まあとにかく俺の家に向かおう、詳しい話はそれからだ。」
アディの案内で小屋から五分ほどでアルバの森から出ると、俺達は燦々と輝く日の光に照らされた、目に鮮やかな緑の外の光景を見て驚いた。
「これは…」
亡国の〝ぼ〟の字もないな…
「やっぱどう見たって俺らのいたラ・カーナじゃねえよな…ここ。」
ウェンリーはアディに聞こえないよう、極小さな声でぽそりと俺に呟く。
緩やかな傾斜のある丘に広大な草原が広がり、所々に点在する大きめの岩向こうには旧街道と見られる地面の整えられた馬車道が見えた。
遥か遠くまで見渡せるあまり高低差のない平地に、澄んだ空気と抜けるような青い空がどこまでも広がっている。
さらにその奥には西と思われる方角に、遠く薄らファーディア王国との国境壁が霞んだ影のように浮かんでいたことから、ラ・カーナ王国に良く似た場所であることは確かだ。
ファーディアとの国境壁まで見えるなんて…これはさすがに予想外だったな。
もしここが〝亡国〟ラ・カーナであるのなら、どこかしらに黒雲のような瘴気溜まりが見えてもおかしくない。
それなのにあれほど大地に充満していたものが、こんな短時間で跡形もなく消え失せるはずはないだろう。
空気は澄んでいるけど、全く〝風〟がない…澱んでいる感じはしないが、最初に森の中で感じた違和感はまだ続いている…こんなに綺麗な景色なのに、やっぱりなにか足りないんだ。
そこかしこに野花は咲いているが、蜂や蝶と言った小さな虫の姿もなければ空にも一羽の鳥さえ飛んでいない。
足元の植物からは少なくとも霊力を感じるから、全部が全部〝幻影〟だと言うわけじゃなさそうだ。
…本当にここはどこなんだ?
とりあえず五感から少しでも情報を集めようと、アディについて歩きながら注意深く周囲の様子を窺ってみる。
街道をなぞって右から左方向へ目線を動かすと、すぐ目の前に二メートルほどの高さの石壁で囲われた中規模の街があった。
恐らくはあれがアディの言う『ヘズル』の街なんだろう。
あの街、魔物除けにしては随分と外壁が低い…魔法による結界障壁が張られているわけでもないのに、あんなので外敵の侵入を防げるのか?
まあここが俺の予想通りの場所なら、心配してもあまり意味はないのか。
「…ルー様、西から続く街道上に荷馬車どころか人の姿が全く見えませんわ。」
俺に小声でそう耳打ちして来たのはイスマイルだ。
「ああ。それにここまで近付いても、街からざわめきや人の声と言った生活音が全く聞こえない。」
ヘズルの街とファーディアの国境、そしてアルバの森の位置関係は、ヘズルを中心にして東寄りの北東にアルバの森、西南西に国境壁が見える、と言った感じだろうか。
――俺達が歩いていた旧街道は、位置的にもっと南西だったんだろう。だとすると転送されてヘズルを飛び越えたみたいな感じになるのか。
それとファーディアから続く地形は、瘴気でなにも見えなかったから確かめようもないが、街道周辺もずっとこんな平地が続いていたのかな…
ツェツハで手にしたラ・カーナの地図を思い浮かべながら頭を整理していると、後ろでリヴも具に辺りを見回していることから、なにか目に付く変わったものがないか良く観察しているんだろう。
草地を横切って緩やかな坂を下り、少し回り込んで街道から街門に歩いて行くと、入口に近付くにつれ俺はふとあることに気がついた。
「うん…?」
あれ…?あの街門――
彫刻による装飾の施された左右対称の石柱に、そこから続く石壁には街の名が刻まれた黒曜石の板が嵌め込まれ、戸囲いすらない門には緊急時に閉ざすための扉や格子が全くなかった。
その特徴的な街門を見て俺は首を捻る。
――随分開放的だけど…気のせいかな、俺はこの景色に見覚えがあるように感じる。
馬車などが街道から真っ直ぐそのまま入ることの可能な入口に、停留所こそあるものの、この街には外敵侵入時の戦闘用空間である緩衝広場すら設けられてはいないようだ。
しかも入口のすぐ手前にまで民家が並んでおり、ラプロビスと色彩煉瓦で建てられた『無傷の』美麗な建物が所狭しと並んでいる。
その他国とは若干異なる光景は初めて見るはずなのに、頭が否定しているような気がした。
それはいつもの『既視感』とは違うもっと別の感覚で、視界によって切り取られたそこの風景そのものを、明らかに過去で目にしたことがあるという記憶に触れた感じだった。
「へえ…門に扉もねえ街なんて初めて見たぜ。――あ!街名の石板がある。『ヘ・ズ・ル』…マジでここがヘズルなんだな。」
「ウェンリー、少し落ち着きなよ。さっきからソワソワし過ぎだよ?」
「んー…わかってんだけどさ、なーんか落ち着かねえんだよな…」
ウェンリーはさっきから肌でなにかを感じているのか、指先で鼻を頻りに擦っている。
あれはあいつがなにか、他人に知られたくない心情を隠したい時に良くやる仕草だ。…もしかしてアルバの森で戦ったラプトゥルが幻影だったことに気がついているのか…?
幽霊、お化けの類いが大の苦手なウェンリーなら、俺やゲデヒトニスがなにも言わないのにそのことに気がつけば、認めたくないと言う気持ちが働いて却って口に出せなくなり、落ち着かなくなるのは予想できた。
気づかなければ言わないでおこうと思ったけど、後で教えた方が良さそうだな。
街門から街の中へ足を踏み入れると、俺が感じた直前の感覚はさらに強くなった。
「………」
――やっぱりこの街、見覚えがある気がする。前に来たことがあるのか…?
ヴァハの村を発って、エヴァンニュ王国を出てからも既に数多くの町や村に立ち寄って来たが、ここまではっきりと街並みや風景を見て覚えがあると感じるのは初めてだ。
神魂の宝珠を解放することで、最も重要な七聖と過ごしていた頃の記憶は徐々に戻るからと思い、自力で記憶を取り戻そうとは考えなくなっていたし、千年前よりも今に近い十年前までのことはもう思い出せないんだろうと半ば諦めてもいた。
でも…どうして今まで思いつかなかったんだろう。
俺が記憶を失うほどの大怪我を負っていたのなら、時期的に同じ頃に起きていた大きな出来事として、ラ・カーナ王国の滅亡となんらかの関わりがあったかもしれなかったんだ。
魔法弾の爆撃に巻き込まれでもしたのか?あれにはエーテルが使われていたようだし、それなら俺が酷い傷を負っても不思議はなさそうだ。
ここへ誘ってくれたのはアディだし、先ずは彼の家に行きたいところだけど…この感覚が消えてしまわないうちに、俺一人でこのままヘズルの街を歩き回ってみたいな。
もしかしたらなんらかの記憶が戻るかもしれない。
「――ここがヘズルの街だと言うことはわかりましたけれど…やはり他には誰もいませんのね。」
街中をざっと見回しても、アディと俺達以外に人の気配が全くないと確認したイスマイルは、静かにそのことを指摘した。
「…これだけの規模の街に俺以外の人間がいないのは、やっぱり不自然に感じるかい?」
「当たり前ぞ。別に予らはうぬがなにかしたと思うておるわけではない。だがこの世界は予らの知るフェリューテラと異なり、どこか異質さを感じおる。」
「まあ、それが普通の反応だな。」
続くリヴの言葉に、アディは目線を落として落莫とした表情を浮かべた。
「――アディ、君は僕らがこの街を見てもなるべく驚かないように、初めからここには君以外の人間がいないということを匂わせていたよね。」
ゲデヒトニスがそう告げると、ウェンリーは真顔で驚く。
「えっ、そうなのか!?」
「はあ…ウェンリー、そなた全く気づいておらなんだか?…鈍いにも程があるわ。」
「なっ…悪かったな!!」
「まあまあ、落ち着きなさいな。」
ウェンリーだけが全く気づいていなかったことにリヴが突っ込み、向きになるウェンリーをイスマイルが宥めるという見慣れたやり取りが起こると、それを見たアディはふっ、と微苦笑した。
「別に隠したままでも良かったんだが、わざわざそのために〝彼ら〟を呼び出すのも虚しい気がしてね。」
「…彼ら?」
そう言うとアディは持っていたヴィントフルートを唇に当て、徐に森で吹いていたあの曲を奏で始める。
するとその直後――
「「「「「!?」」」」」
アディの奏でる笛の音に合わせ、そこかしこからまるで幽霊が浮き出てくるかのようにして、住人らしき人々が次々に姿を現し始めた。
「うわっうわわわわわっ!!!!ゆゆゆゆゆ、幽霊!?」
ドサンッ
当然、それを見たウェンリーは真っ青になり、その場で腰を抜かして地面に尻餅をついてしまう。
「違う…これは、アルバの森で出会したラプトゥルと同じ『幻影』だ…!」
笛の音の届く範囲に住人達が現れると、それらの人々はまるで本当に生きてそこに存在しているかのように動き始めた。
家の前を箒で掃いて掃除をする人、二階で洗濯物を干す人、買い物袋を抱えて女性同士で立ち話をする人、荷袋を肩に担いで目の前を走って行く人、子供の手を引いて歩いて行く人など、建物の内外に関わらず数多くの幻影は現れ、これまで一切しなかった笑い声や話し声までもが聞こえ出したのだ。
「これって…まさか実体を伴う幻影魔法ですの…!?」
イスマイルの推測にアディは笛を吹くのを止めると、こくりと頷いた。
「ああ、そうだよ。俺がこのヴィントフルートで『風の呪歌』を奏でると、攻撃して壊したりしない限り、効果が消えるまでの二、三日は実際に生きている人間や動物と同じようにして呼び出した幻影が動くんだ。人の場合は簡単な挨拶くらいの会話も出来るし、笑ったり泣いたり、怒ったりと言った感情表現も勝手にする。…まあそれでも所詮は単なる魔法にしか過ぎないから、今ではもう気が向いた時くらいにしか呼び出さないようにしている。」
つまりあのラプトゥルは、アディの幻影魔法で喚び出された魔物だったと言うことか。足りないものの正体がこれでわかったな。
「良かったね、ウェンリー。幽霊じゃなくて魔法だったんだってさ。」
「し、知ってたよっ、そんぐらい――」
「青くなって腰抜かしとる奴がなにを言うか。ひひ…」
ドガッ(ウェンリーが怒りに任せてリヴの足を蹴る音)
「あだあっ!!」
「馬鹿ですの?」
「もう放っておきなよ、イシー。」
現れたのが幽霊でないことに安心して立ち上がったウェンリーは、即座に揶揄ったリヴと脇で揉め始めたが、俺とゲデヒトニス、イスマイルは二人を無視してアディの幻影魔法に目を向ける。
「それにしても高度な幻影魔法だな…ここまでの物はそうそうお目にかかれないぞ。」
「ええ。実体を伴っていると言うだけでなく、会話に自発行動、声まで発するなんてあり得ませんわ…この幻影はアディさんの思い通りの対象を喚び出せますの?」
「いや、俺の記憶にあるものをその時その時で再現してくれているだけらしい。それと感心して貰っているのに申し訳ないが、この幻影魔法は全てこの楽器のおかげなんだ。曲は自作だけどあくまでも俺の魔法が凄いわけじゃないから、そこは勘違いしないでくれ。」
「そうなのか…」
曲は自作…あの曲はアディが作ったのか。ヴィントフルートのことを含め、後でその話は聞いてみることにしよう。
「では結局この街にアディさん以外の人はどなたもいらっしゃいませんのね。」
「ああ。正確には〝この街に〟でなく、〝この世界に〟だけどな。最初に言っただろう?人に会うのは随分と久しぶりだって。」
「――確かに聞いたな。」
「俺の意図を汲み取ってくれて嬉しいよ。さあ、続きは家で話そう。君達には相談したいこととできれば頼みたいことがあるんだ。俺の自宅は東区の職人街にあるから。」
東区の職人街か…時間を貰うなら今だな。
「アディ、みんな…すまないが、一時間ほど時間を貰ってもいいかな。」
「ルー様?」
「どした?」
「少し一人でヘズルの街中を見て回りたいんだ。気が済んだら合流するから、先にアディの家へ行っていてくれないか。」
俺の頼みにウェンリー達四人は互いに顔を見合わせた。
「――なにか気になることでもあるのでするか?」
「いや、そんなんじゃない。――頼むよ、リヴ。」
「しかし…このような場所でお一人にするのは…」
「なにを心配しているのかはわからないが、この世界は安全だよ。――少なくとも俺は一人きりでもう長い間過ごしている。一時間くらいルーファスを一人にしてあげてもいいんじゃないか?」
「ありがとう、アディ。」
「自宅の入口には表札が出ているから、職人街を探してくれ。」
「そうするよ。」
「お、おいルーファス…!」
悪いな、ウェンリー。元のラ・カーナに戻ってからじゃだめなんだ。恐らく亡国の方のヘズルは廃墟になっていて、ここのように記憶に触れる街並みは残っていないだろうから。
記憶を取り戻すのなら、きっと今しかない…そんな気がする。
俺はみんなの了解も得ないまま足早にそこから離れ、特に記憶の琴線に触れる入口正面の通りへと急いだ。
街門から入って左の空き地が馬車の停留所になっていて、それを見ながら正面の曲がりくねった細い通りを進んで行くと、すぐに赤い色彩煉瓦の民家が建ち並ぶ。
そこを抜けると十字路があり、右に曲がって少し行った先に確か守護騎士の駐屯所があるんだ。
そこを曲がらずにさらに真っ直ぐ北へ進むと、地元の住人が普段買い物をする商店街があり、雑貨店に食材店、パン屋やお菓子屋などが続いて、その前には子供向けにばら売りのお菓子が乗せられた手押し車がいつも置いてあった。
通りの左右に様々な種類の道具屋などがあって、ラカルティナン細工で有名なヘズルらしく、細工道具の修理屋や硝子張りのショーウィンドウにラカルティナン細工の飾られた店もある。
俺は先ずそのラカルティナン細工の店が気になり、そこの前で足を止めた。
「この宝飾細工店…」
――そこで不意に、誰かが俺の服の裾をくいくいっと引っ張っているような感覚に襲われる。
「う…」
〝ねえ見て、すっごく綺麗だよ!〟
目元にズキリと走る痛みに、俺は右の握り拳を当てて目を閉じ、聞こえてくるその声と頭に浮かぶ光景に意識を集中した。
――小さな…子供の、手…?子供の手が、俺の服を掴んで引っ張っている…
〝ラカルティナン細工〟〝オルゴール・ペンダント〟
その二つの言葉が思い浮かんだ瞬間、その子供の声と小さな手はすぐに消えてしまった。
「消えた…」
声はしても顔は見えなかったが、どうして子供が思い浮かんだんだ…?
困惑する俺の胸に、どこからかふわりと温かい感情が流れ込んでくる。その感覚は昔まだ子供だったウェンリーに抱いていた感情と、とても良く似ていた。
俺は自分の左手を見つめ、突然思い出した子供の小さな手の感触に戸惑う。
――この通りを…誰か幼い子供の手を引いて歩いたことがある…?
「ルーファス!」
「…ゲデヒトニス。」
その声に顔を上げて今来た方向を見ると、小走りに俺の後を追いかけて来たらしいゲデヒトニスの姿が見えた。
「僕も一緒に行くよ。――なにか感じるんだよね?」
「…ああ。おまえもか?」
「ううん、多分僕のは少し違う。どちらかというと胸騒ぎがするんだ。」
「胸騒ぎ?」
合流したゲデヒトニスと一緒に、再び俺は通りを北へ向かってゆっくり歩き始めた。
「ルーファスは笛の音の方に気を取られていたみたいだけど、僕はアルバの森でアディの小屋を見た時、なんだか凄く嫌な気分になった。――まるで心的外傷級に酷い思い出のある場所へ、意図せず戻ってしまった…そんな風にだ。君はあそこでなにも感じなかった?」
「いや…そう言ったことは全くなかったな。」
「だと思ったよ。」
ゲデヒトニスはあの森小屋を見てそんなことを感じていたのか…
「僕は君の分身だから、本来なら君が感じないことを感じる方がおかしいんだ。サイードと過去を変えて戻ってから、僕らの差違はどんどん酷くなっている気がする。これ以上顕著になると、後になって取り返しの付かないことになりそうで心配だよ。」
「……それは今言っても仕方のないことだろう。」
「わかってる。――それで、君の方はなにを感じているの?」
俺は顔を上げて頭に浮かんでくる光景と、目の前に見えている街並みを重ね合わせるようにして見つめると、目を細めてゲデヒトニスに返した。
「――失っていた記憶を取り戻せそうな気がするんだ。」
「え…」
「俺はこの街…ヘズルを知っている。それも千年前とかそこまで古い記憶じゃない…多分、ヴァンヌ山でウェンリーに出会う直前くらいまでの記憶だと思う。」
「なにか思い出したの?」
「いや…まだ思い出したと言えるほどのことはない。でも次々にここの光景が頭に浮かんでくるんだ。」
「そうか…亡国ラ・カーナではどこも廃墟になっているから、同じような感覚を持てないかもしれないんだね。それなら僕も協力するよ。さっきの感覚を言うのなら、僕の中にも当時の記憶が眠っているはずだ。記憶の同期はできないだろうけど、摺り合わせは可能だよね。」
「そうだな。周囲の景色に集中してゆっくり歩き、なにか気になったり気づいたりしたら立ち止まって教えてくれ。」
「うん、わかった。」
こうして俺とゲデヒトニスは、協力して記憶を辿る試みを始めた。
ラカルティナン細工の宝飾細工店から数十メートル歩いて行くと、民家の塀に掲げられている大きな案内板が目に付いた。
そこには『魔物駆除協会』と『<依頼斡旋>賞金稼ぎ連盟』の文字が並んでおり、それぞれの場所を示すような矢印が描かれていた。
そこで俺はまた目の奥にズキリと強い痛みを感じる。
「く…っ」
ズキズキと痛む目に顔を歪め、浮かんでくる景色に意識を集中する。
――北の方から歩いてきて…この道を左へ曲がり、その先にあるどこかへ向かって何度もここを通っていたような気がする。
「魔物駆除協会の看板か…」
この看板にも見覚えがあるな…記憶を失う前も同じように守護者として働き、ギルドへ頻繁に通っていたとか…?
一応規定だと半年以上一体も魔物を狩らなければ登録を抹消されてしまうし、無限収納も取り上げられることにはなっているが…あのウルルさんが俺の資格を取り消したり、無限収納を封印したりするかな…?
「ギルドに行ってみるかい?」
「いや…後にしよう。今はこの通りの先が気になる。」
そっちは後でウルルさんに直接尋ねてみればいいか。
頭痛が治まってから再び歩き出し、ゲデヒトニスと思い浮かぶ光景を照らし合わせながら進むと、今度は突然ゲデヒトニスの方がピタリと足を止めた。
「ゲデヒトニス?」
そこは何の変哲もない交差点だったが、ゲデヒトニスは通りの先を見つめて動かなくなる。
「――ここから先に行きたくて仕方がないのに、どうしてだろう…行ってはいけないような気がする。」
「え?」
いきなりそんなことを言い出したゲデヒトニスの表情は強張り、なにかに怯えてすらいるように見えた。
「ゲデヒトニス、どうした?なにが見える?」
「…そうか…わかった、この感情は――〝罪悪感〟だ。」
「罪悪感?」
「うん。ルーファスも僕の横に並んで立ってみて。記憶の同期は無理だろうけど、僕の感じているこの感情を〝感覚共有〟することは可能だと思う。」
「………」
俺は促されるままにそこへ立ち、ゲデヒトニスが差し出した手を取って目を閉じた。
「いいぞ。」
「…行くよ。」
ザアッ…
二人で互いに意識を集中し、記憶の同期を行う時のように呼吸を合わせる。
「…っ」
――するとすぐにまた俺の目の奥に痛みが走り、ゲデヒトニスから胸が苦しくなるような〝悲しくて辛い気持ち〟と言葉通り〝罪悪感〟が伝わって来た。
「どう?感じた?」
「…ああ。」
その直後、また頭に光景が浮かんでくる。
一歩足を踏み出しては迷い、立ち止まって踵を返す。ゲデヒトニスの言うようにここから先へ行きたい、という思いはあるのに、強い罪悪感から先へ行くのを躊躇い、何度もこの場所で引き返していた…そんな光景だ。
「――ここでなにかに迷って、何度もここまで来ては引き返したことがあるみたいだな。…この先になにがあるんだろう?」
「わからないけど…苦しくなるくらいに胸が痛んだよ。これって…本当に僕らの記憶?」
「?…どういう意味だ?」
「なんだかあまり感じたことのない感情だから。基本的に僕らは物や場所、仲間以外の特定の誰かに執着するような感情は抱かないだろう?だけど今の〝思い〟はそれらから来るような心の動きだと思うんだよね。」
「………」
そう言われてみれば…そう、か…?
「まあもう少し先に行ってみればきっとわかるよ。」
「…そうだな。」
頷いてまた、俺達は歩き出した。
ここから先は左に大きく曲がる、緩やかな上り坂になっているようだ。
「――不思議だな…」
「うん?」
「この世界のヘズルには、今〝風〟が全くないのに…俺の記憶から浮かんでくるこの街には、優しくてとても穏やかな風が吹いているんだ。だから目を閉じると頬を撫でる空気の流れすら感じるような気がする。」
「…現実と記憶の境界が繋がっているような感覚だね。」
「ああ。」
目を閉じると名前も思い出せない人々の顔が浮かぶ。――彼らはみんな笑顔で、俺はその人達に〝受け入れられている〟と感じており、とても幸せな思いに満たされていた。
それは自分が『何者』であったかも忘れ、普通の人間のように日々を過ごし、平穏で穏やかな日常に溶け込んで、長い間欲していた『帰る場所』を手にしたような幸福感だ。
――俺がヴァハの村でゼルタ叔母さん達のそば以外には得られなかった、温かな居場所…それがこのヘズルにはあったんだろうか。
「あ…!ルーファス、見て!!あの丘の上――!!」
「…!」
街外れに近い場所まで来ると、続いていた建物の街並みが途切れ、曲がりくねった坂道の先に大きな建物が見えた。
周囲は青々とした草地が広がり、小高い丘の上に葉の生い茂った枝を雄大に伸ばす、一本の大木が立っている。
瞬間、俺とゲデヒトニスは、二人同時になにか鈍器のような物で横から頭を殴られたような、強い痛みを感じた。
ガツンッ
「うっ…!!」
「あっ…!?」
俺達は堪らずその場に頭を押さえてしゃがみ込む。
こ…れは…っ、初めてキー・メダリオンを起動した時と…同、じ――ッ
――それは次々に雪崩れ込んでくる『記憶の奔流』であり、丘の上に建つその建物を見た瞬間に、怒濤の如く蘇った。
これまで神魂の宝珠の封印を解いただけでは思い出せなかった過去の記憶や、星の数ほども知り合った既に世を去った人々の記憶。
千年前当時のフェリューテラにあった国々の名前やその勢力図に、今ではすっかり変わってしまっている地形と、俺が神魂の宝珠を封印した場所などまで…
その膨大な記憶が一度に蘇り、凄まじい量の情報となって頭に流れ込んで来たのだ。
その中で荒ぶる海に押し寄せる波音のような雑音が響くと、急にその場面だけが抜きん出て頭に浮かんだ。
『ルーファス様…私、子供が大好きなんです。』
薄い橙色の髪を肩よりも少し長めに伸ばし、エバーグリーンの瞳を細めて笑顔を見せる町娘のような装いをした見覚えのある女性が出てくる。
『知っているよ、ラナ。だから君は、俺にそのことに関する頼みごとがあるんだろう?』
〝ラナ〟…〝ラナンキュラス〟――
『この国は伝承と精霊、神々への信仰を尊び、ここに暮らす人族は皆善良で、見えざる者にさえ敬意を払う信心深き清らかな心を持っています。ですから、この地に光神レクシュティエル様と神界の三剣を祀る、教会を兼ねた孤児院を建てて頂けませんか?』
『孤児院教会か…』
『既に〝ソル・エルピス聖孤児院教会〟の名前で届を出して――』
『坂の下に街並みが見え、他よりも小高くなっているので結界障壁も張り易いのでは――』
〝ソル・エルピス聖孤児院教会〟――
「ハッ…――!!!」
ブツンッ、と不気味な音を立て、目まぐるしく流れ込んでいた記憶の奔流はいきなり途切れた。
見るとすぐ横でゲデヒトニスも地面に四つん這いになり、苦しそうに荒々しく息をしている。
「ゲ、ゲデヒトニス…大丈夫か…?」
「はあはあ、だ、大丈…夫…情報量が凄まじくて、頭が破裂するかと思ったよ…」
俺達はよろよろと身体を起こし、動けるようになるまでの間地面に座って休むことにした。
「記憶、今ので大分戻ったみたいだね。目論見と違って殆どが千年より前のものだったけど…」
「ああ。」
やっぱり十年前の記憶は取り戻せないのかな…この街にいたらしいことは確かなのに、あれほどの情報量の中に俺が怪我をした原因と関係しそうなものは断片的にでさえ出て来なかった。
直近というほど最近ではないにせよ、どうしてその頃のことは思い出せないんだろう。
完全に頭痛が治まると、俺達は立ち上がって坂上の建物を見上げた。
本体はヘズルの街並みと同じラプロビスと色彩煉瓦で建てられ、藍色の三角屋根に風見鶏と太陽を示す二重輪の付いた十字架が乗っている。
その後ろに鐘楼塔と思われる背の高い塔と吊り下げられた鐘が見え、裏手にも大きめの建物があるようだ。
記憶の中にも見えた、聖堂の正面入口に掲げられている表札には〝ソル・エルピス聖孤児院教会〟の文字が読める。
「…昔ラナに頼まれて建てた孤児院教会の場所はここだったんだな。」
「うん…」
過去のインフィニティアで出会った竜人族のクリスに、そのクリスを守っていた有翼蛇竜ケツアルコアトルのヴァシュロン・オーサと娘のラナンキュラス…
オルファランがあんなことになり、ヴァシュロンは死を覚悟した後にラナを騙してフェリューテラへ逃がしたと言う。
サイードから聞いた話によると、ラナは現在アヴァリーザ民主国で孤児達と元気に暮らしているらしい。
予め無事なことを聞いていて知っていたから良かったが、彼女はラ・カーナ滅亡時に亡国にいて、孤児院の子供達を必死に守りながらどうにか戦火を逃れたんだろう。
肝心な時に俺はなんの手助けもできなかったのかと思うと、胸が痛む。
アヴァリーザはかなり遠いが、クリスと合流した後で折を見てラナに会いに行こう。ヴァシュロンのことも伝えないとな…
俺にはまだまだやらなければならないことが多い。
「ラナのことを思い出した時にユリアンの名前が出て来たけど…あれってリヴもイスマイルもまだいない七聖が揃う前の話だった?」
「そうだ。でなければここには二人とも一緒に来ているんだ、すぐに気づいて俺に教えてくれただろう。」
ラナの強い希望で暗黒神と俺達の戦いにこの地を巻き込まないよう、ユリアンを除く守護七聖達にはこの孤児院の場所を敢えて教えていなかった。
二人が七聖になる前の話だったこともあるが、その後も知らなかったのは当然なんだ。
「一応聖堂も見てみるかい?記憶通りなら神界の三剣と光神レクシュティエルの神像が祀られているはずだよね。」
思い出した記憶が正しいかどうかを確かめるためにも、念のため俺達は孤児院教会の聖堂の中にだけ入ってみることにした。
正面にある両開きの扉を開けて中に入ると、左右対称に六列ずつ並べられた木製の長椅子があり、祭壇中央に置かれた書架台と、その後ろには三本の形が異なる剣を掲げた光神レクシュティエルの神像が建っていた。
「記憶通りだね…この世界がなににせよ、こんな細部に渡ってまでの再現度はかなり高いよ。」
「そうだな。そのことからしても元のラ・カーナを相当良く知る存在が構築したか、ヴィントフルートのようにアディの記憶を元に再現されているかのどちらかだと思っている。」
「――誰がこの世界を作ったのかな?」
「それはまだわからないが…創造主はなにか余程の理由があって、唯一の住人であるアディのために用意したんだろう。」
「じゃあやっぱり僕らをここへ転送したのはあの装甲亀じゃなかったんだね。…もしかして喚ばれたの?」
「多分な。」
ギシギシと軋む木の床を歩き、神像に向かって近付いて行く。
ところがその途中、俺はまた誰かに服を掴まれたような感じがして足を止めた。
「どうしたの?」
再びズキリと目の奥が痛み、手で押さえて意識を集中する。
〝いやだ…いやだよ、置いて行かないで…っ〟
――また子供の声だ。…酷く泣いている…
再び服を掴む小さな手が見え、俺はその子の顔を思い出そうとして目線を上に動かした。
プツンッ
瞬間、そこでその光景が消えてしまい、俺は大きな溜息を吐く。
「………はあ。」
「ルーファス?」
「…繰り返し俺の服を引っ張る小さな子供の手が見えて、声が聞こえるんだ。」
「え…子供?」
「ああ。握った手の感触まで思い出せるんだけど…顔が見えない。なにか心当たりはあるか?」
「え?え?いや、あるわけないよ…!!」
「…そうか。」
俺はその子の手の感触が残っている左手をじっと見た。
――本当は放したくないのに、その気持ちを抑えて手を放した…あの子供は誰なんだ?俺となんの関係がある?
どうして顔を思い出せない…
俺は無言のまま光神の神像前まで行き、過去に見たレクシュティエルそのものの顔を見上げて掲げられている三本の剣を具に観察した。
「光神レクシュティエル…この神像は他と違って本人にそっくりだ。」
「僕ら、千年前とかそれ以前にも会ったことがある?」
「…その記憶はないな。それとこの神界の三剣…『守護神剣』だが、俺が実際に見たことのある〝マーシレス〟と〝グラナス〟の二本は、装飾から生体核まで実物そっくりに再現されている。」
「と言うことは、残る一本が光の守護神剣『レクシャスソード』なんだね。」
――光神ルシリス・レクシュティエル…今、どこでどうしているんだ?
遥か昔はあなたが蒼天の使徒アーシャルを率いてカオスや暗黒神と戦っていたんだろうに、そのあなたが消えたことでフェリューテラは千年前、混沌と化していた。
もしどこかにいるのなら、俺に手を貸してくれと頼みたい所だよ。…まあ、あの嫉妬で敵意剥き出しの状態じゃ、俺の話なんかとても聞いてくれそうにはないけど…
「だめだな…ここではもうこれ以上、なにも浮かんで来ないみたいだ。」
俺は踵を返し、ゲデヒトニスと一緒に聖堂を出ることにした。
「この後はどうする?そろそろアディの家に行くかい?」
「いや…もう一箇所ここから見えた景色に気になる場所があるから、今度はそこへ行ってみる。」
「うん?どこ?」
「――あそこだ。」
俺は外へ出てすぐの坂上から見え、こことは反対側の街外れに当たる、東の崖上に建っている二階屋を指差した。
「了解。あんまり遅くなるとウェンリーが騒ぎそうだから、少し急ごうか。」
「ああ。」
遅くなりました。次回、仕上がり次第アップします。




