245 シニスフォーラの異変
ユスティーツの過去の姿を知り、そのユスティーツが私用でダヴァンティを離れた翌朝、ライ達の元からペルラ王女が一人姿を消してしまいました。薄々彼女の様子からそんな行動に出るのではと懸念を感じていたライは、急いで王女の後を追うべくトゥレンと共に宿を飛び出します。そうしてユスティーツに「絶対に行くな」と言われていたシェナハーン王国の王都へ足を踏み入れてしまいますが…?
【 第二百四十五話 シニスフォーラの異変 】
「――グ、起きて下さい、リグッッ!!!」
「…!?」
メテイエに滞在して四日目を迎えた朝、俺はその切羽詰まったトゥレンの声で目を覚ました。
「レン?どうし――」
俺が最後まで尋ね切る前に、トゥレンは大声で訴える。
「ルラ殿が…ルラ殿が、寝台におりません!!」
「なに…?」
普通なら顔を洗いに出た、とか散歩でもしているのだろうと思う所だが、トゥレンからなにか言われるまでもなく俺は、すぐにずっと抱いていた懸念が現実の物となり、ペルラ王女が近くにはいないであろうことを察してしまった。
――〝しまった!!〟
そう思うと同時に寝台から飛び起きてすぐさま着替え、王女の不在を確かめもせずトゥレンにも荷物を纏めるように言うと、俺達は五分で支度を整えて部屋を飛び出し、宿の階段を駆け降りて慌ただしく会計を済ませる。
王女の口数が減り、ぼんやりと考え事をしてばかりいることには気付いていたのに、ユスティーツが離れた昨夜に限って油断するとは…!!
「リグ…!あの、俺は――」
「いい、言わなくてもわかっている。おまえのことだ、既に周りを探し回って見つけられなかったから俺を起こしたのだろう…!!」
「は、はい…宿の従業員に尋ねても要領を得ず、何時頃ここから出たのかさえ知ることが出来ません。あれほど止めたのに、まさかルラ殿は…」
「ああ、その〝まさか〟だろう。」
宿の従業員に王女を見なかったかと尋ねても、要領を得ないのは当然だ。俺達が身に着けている魔道具は、他者に俺達のことが記憶に残らないよう、『幻視』を見せるものだからだ。
それはそれぞれが見たいように見えるという物であり、外見変化魔法のように〝これ〟という決まった姿を取っているわけではない。
つまりは『ダヴァンティ』という守護者パーティーが泊まっており、客は女性一人と男性三人だった、という所までは全員情報が一致していても、その中の俺がどんな髪色だったとか、背丈はどの位だったとか、そう言った細かいことになると途端に一致しなくなると言う類いの効果なのだ。
それでいて『ルラ』を見なかったかと聞かれても、こちらはこちらで互いに真の姿にしか見えていないため、誰も外見を説明できないのだからまともな答えが返ってくるはずはない。
「行き先はわかっている、シニスフォーラだ。急いで追いかければなにか起きる前に見つけられるかもしれん。とにかく俺達も王都へ向かうぞ…!」
俺はトゥレンと共に宿を飛び出すと、その足で王都行きの乗合馬車が停まっている停留所へと駆け出そうとした。
だがその俺の腕を掴み、トゥレンはいきなり引き止める。
「お待ちください!ですがリグ、ユスティーツは〝絶対に行くな〟と念を押していました。メソタニホブでのことと言い、彼の言葉は単なる警告だけとは思えません!」
俺は掴まれた腕を振り払い逆にトゥレンの服の胸元を右手で掴み返すと、この後に及んでまだ自分の気持ちを抑え、俺の身を優先しようとするトゥレンに顔を近づけて言い返した。
「そうかもしれないが、ならばおまえは彼女がどうなっても構わないと言うのか!?」
「それは…っ」
「今の自分の顔を鏡で良く見てみろ!!俺への言葉とは裏腹に、ルラが死ぬほど心配で堪らないと言う顔をしているぞ!!いつまでも俺を言い訳にして目を背けず、いい加減に腹を括れ!!」
「く…っ申し訳ありません、あなたを言い訳にしているつもりは…ただ俺は…っ」
「うるさい、四の五の言わずに早くしろ!!」
「――はい…!!」
いつまでも煮え切らないトゥレンを見ていると、〝なぜ俺が〟と思わないでもない。
こいつがさっさと思いを告げてしっかり王女の心を掴み、その上で危険を冒すなと引き止めておけばこんなことにはならなかったろう。
ペルラ王女にしてみれば悩んだ末に俺達を巻き込まないよう一人で行くことにしたのだろうが、そこには『トゥレンが俺よりも彼女を優先する』という選択肢が思い浮かばなかったからだとも言える。
つまり彼女は、最悪の場合自分になにかあってもトゥレンは俺を止めるため、自分だけが犠牲になれば済むと思っているのに違いなかった。
――昨夜のユスティーツとの会話も影響しているのだろうな…だがあれはそんな解釈のために言ったわけではない。
早まるなよ、ペルラ王女…!!
俺達はちょうど出発する所だった乗合馬車を捕まえて無理やり乗り込み、不機嫌な顔をする御者へ運賃に加えて多めの駄賃を握らせると、守護者であることを利用して仕事のために急いでシニスフォーラへ向かって欲しいと頼み込んだ。
シェナハーン王国のハンターの場合、緊急討伐の依頼などが入るとこんな風に融通を利かせて貰うことがあるらしい。…そんな話を宿で聞き、少し狡いが緊急事態なのは確かなので方便を使わせて貰うことにしたのだ。
馬車で街道を進む最中も、王女が思い直し途中で引き返していないかと歩く人影にも注意を払う。
だが俺の願いも虚しくそこに彼女の姿はなく、結局俺達はシェナハーン王国の王都シニスフォーラへ足を踏み入れることになったのだった。
「無理を言って悪かったな、急いで運んで貰えて助かった。」
王都の入口から乗り合い馬車の停留所へ着くなり客車から飛び降りた俺は、御者にそう言って頭を下げる。
「なんの、懐も温めて貰ったことだし構わないさ。魔物討伐の方も頑張ってくれよな!」
「ええ、善処します。」
同じように横でぺこりと頭を下げたトゥレンは、然もそれらしく営業用の笑顔を浮かべてにこやかに返事をすると、待つ間も惜しく大通りへ向かって歩き出した俺の後を早足で追ってくる。
「――なにが善処だ。」
そのトゥレンに俺は歩きながらチクリと嫌味を言う。
「す、すみません…」
「ふん。――とにかく彼女を捜すぞ。」
「ですがどちらへ向かわれるのですか?まさか国王殿へ行かれるのではありませんよね。」
「当たり前だ。ルラは最初にここへ来たいと言った時に『知己の友人』と口にしていただろう。俺はその相手に心当たりがある。」
「え…!?」
これでも俺は城にいた間、ずっとペルラ王女を自分の『婚約者』として扱っていた。
もちろんそれはあの男に怪しまれないよう注意深く演技をしていただけに過ぎないが、それでも俺の気持ちがきちんと王女にあるように見せるため、極力会話にも気を使っていたのだ。
そんな中で自分が好意を寄せる女性相手とならどんな話をするかと考え、シェナハーン王国での王女の昔話や親しい友人、知人に関する話題が上がっていたこともあった。
まさかその時の会話がこんなことで役立つとは思わなかったが、ペルラ王女には深く信頼している人間が何人かいることは良く覚えていた。
その内の一人は俺もトゥレンも会ったことのある、魔法闘士の『ログニック・キエス』殿だった。
詳しい事情までは知らないのだが、あのキエス魔法闘士殿は少し前にどうやら亡くなったらしい。
しかしその魔法闘士殿と親しくしていたシニスフォーラ在住の中年女性がいるはずだ。
その中年女性はペルラ王女とも共通の知人であり、城下へ出る際は自宅を訪ねることもあったと言う話を聞いていた。
その中年女性の名前は確か――
――そうだ、『詩』という意味の姓を持つ『ポエム』殿だ。その女性本人が本気で嫌がっているという…
「真っ直ぐ進んでいるようですが、住所まで御存知なのですか?」
「いや…ただ国王殿から離れた南西にある公園の近くだと言っていた。その辺りに行ってから周辺の住人に聞けばわかるだろう。」
「はあ。」
人の行動を心配している暇があるのなら、王女を見つけた後で自分が先ずしなければならないことを考えろ、全く…
…うん?なんだか繁華街の様子がおかしいな…
以前俺とトゥレンがここへ来た際はエヴァンニュの軍用車両で来たため、俺は車窓から賑やかな街並みを眺めただけだったが、ふと気付くとあの頃に比べて随分活気がないような気がする。
おまけに道行く住人達は皆暗い顔をしており、まだ昼前だというのに商店街にはちらほら閉まっている店もあるようだ。
全体的に重苦しい空気が漂っているような…前王夫妻の国葬時でさえ住人の表情は明るかったのに、どうなっている…?
「…レン、シニスフォーラはこんな雰囲気の街だったか?」
「いえ…以前来た時は夜でしたが、もっと活気があって明るく賑やかな印象でした。」
「やはりそうか…」
あれからまだ半年も経たないのにここまで雰囲気が変わるとは…王女の言う通りシグルド陛下が変わってしまったというのはどうやら本当らしいな。
「リグ、それに守護騎士の姿が見えません。」
「ああ、そう言えばそうだな。前は仕事帰りか休憩中の守護騎士と、住人達が笑顔で立ち話をしている姿も見たような覚えがある。勤務中の時間的なこともあるのだろうが…巡回する騎士すら見えないのは妙だ。」
「…全員国王殿の守備についているのでしょうか?」
「――さあな…確かめるには中央へ行く必要があるが、できれば近付きたくはない。」
「…ええ。」
それとも俺達の到着が間に合わず、既にペルラ王女は見つかって囚われていると言うわけでは…
「少し急ぐぞ。」
「え?は、はい…!」
街地図を見て場所を確かめ、ペルラ王女から聞いていた話の公園と思しき場所まで急ぎ足で辿り着くと、俺とトゥレンは二手に分かれて『ポエム』という姓を名に持つ女性宅を知らないかと道行く住人に尋ねた。
「すまんが知らんな、他所を当たっとくれ。」
「さあ、聞いたこともないね。」
「知りません。忙しいのでもう良いですか?」
「……?」
俺一人で七、八人の住人に聞いてみたのだが、皆一様に口を揃えて冷ややかに知らないと言う。
…となると、俺の記憶違いで全く違う場所を探しているか、目的の女性は転居したかなにかでこの辺りにはもう住んでいないかのどちらかだと思われた。
まずいな…ここで手がかりを失うと王女を探し出すのに時間がかかる。その間にもなにがあるかわからないというのに――
「リグ!」
程なくして手分けしていたトゥレンが焦る俺の元へ駆け足で戻って来た。
「レン!そちらはどう――」
「女性の自宅がわかりました、こちらです!」
「!そうか…!!」
俺の方は空振りだったが、トゥレンの聞き込みでなんとかなったようだと胸を撫で下ろし連れ立って歩き出す。
「良くわかったな。」
「ええ、少し脅しました。」
「…なに?」
「リグの方は空振りだったでしょう?この辺りの住人は意図的に女性宅を隠し、わざと知らない振りをしているようです。」
「!?」
そうだったのか!?道理で――
「先にこちらがハンターであることを明かして、パーティーメンバーが女性宅へ向かったのだと事情を話すと、今度は身分証を見せろと言われ、それを見せてもまだ不審な目を向けるので堪忍袋の緒が切れました。」
「…は、おまえにしては珍しい。」
一刻を争う事態なのは確かだが、下手をすれば守護騎士に通報されてもおかしくない。それなのにそんな無茶をするとは…なんだかんだ言ってこいつもかなり焦っているな。
素知らぬ顔をしてそう言ったトゥレンに微苦笑すると、俺達は早速場所が判明した女性宅へ急いだ。
「ここがそうか…」
王女の話にあった通り、その女性宅は井戸のある公園からほど近い場所に建っていた。
周囲には似たような外観の戸建てが並んでおり、知らなければ正確には訪ねられないだろう。
「扉を叩くのは俺にお任せ下さい、普通では返事をして貰えないそうです。」
「わかった、任せるから早くしろ。」
――随分来客を警戒しているのだな…王女が来たのは今朝だとしても、すぐにここまでの連携は取れまい。…なにか他にも理由があってのことなのか?
トゥレンは事前にそれも聞き出して来たらしく、一定のリズムを刻んだ方法で数回扉を叩いた。すると――
『…誰だい?』
中から女性の声が返って来る。
「パーティー〝ダヴァンティ〟のリグとレンと申します。置物屋のパダタ殿から聞いて来ました。こちらに仲間のルラという女性がいらしていませんでしょうか?」
トゥレンの言葉に暫くの間シンとした沈黙があると、一分ほどのちに鍵の開く音がしてギイッ、と言う軋む音と共にほんの僅かにだけ扉が開いた。
「「…?」」
しかし声の主が顔を出す様子はない。
「これは…勝手に入れという意味でしょうか?」
「…わからないが警戒しろ。」
俺はトゥレンに目配せをし、僅かな音も立てないよう細心の注意を払ってライトニングソードをゆっくり引き抜いた。
扉を開くのはトゥレンに任せ、俺は中からの襲撃に備えて剣を構える。そして俺が頷いたの同時にトゥレンはそっと手で扉を押し開けた。
直後――
はっ…!?
「!!」
ガキインッ
――相手の姿を確かめる間もなく、素早く動いたその影から強い殺気を向けられ、刀身が空を切るヒュンッという音が耳に届いた。
咄嗟に俺はその攻撃をライトニングソードで受け止めると、そのままサッと身を屈めて室内へ転がり込む。
「閉めろ!!」
「は!!」
バンッ
俺に続いて室内へ滑り込んだトゥレンには、敵を逃がさないよう指示を飛ばす。そうして俺が身を低くした体勢から反撃に移ろうした瞬間、その声は叫んだ。
「待って、リグ!!」
「!!」
戦場で培った経験を元に、一撃で敵を殺そうとした俺は逆手に持ち替えていた剣を寸前でピタリと止める。
「はは、やるじゃないか…ヒヤリとしたよ。」
カララン
すぐさま武器を手放して降参を示すように両手を上げ、不敵にもニッと歯を見せて笑ったのは、頭に三角巾を巻き平民服にエプロンを着けた、焼土色髪の中年女性だった。
「さすが只者じゃないね、合格だ。」
「合格?」
カツン、と靴の爪先に当たった武器へ視線を落とすも、それを見た俺は目が丸くなる。
てっきり短剣かなにかで斬りかかられたと思ったそれは、どこの一般家庭にも当たり前にある調理用の包丁だったからだ。
「…包丁!?」
「ふふ、ただの包丁じゃない、あたし専用の特注刃物さ。もちろん刺客だってちゃあんと返り討ちにしてやれるくらいのね。」
「………」
まだ喉元に刀身を当てているというのに既に殺気は消え、カラカラと笑うその女性に俺が呆れていると、奥へ向かってツカツカと歩き出し、俺の横を素通りして行ったトゥレンは右手を上げてそれを素早く左へ振り抜いた。
直後パンッ、という乾いた音が響き、トゥレンがその頬を引っ叩いたことがわかる。
今さら言うまでもないだろうが、左頬を叩かれたのはペルラ王女だ。
「な…ちょっと!!」
「待て。」
俺は動こうとした中年女性から剣を下ろし、王女を叩いたトゥレンへ咄嗟に目を剥こうとした彼女を左腕で押さえる。
「レ、レン…」
震えながら左手で叩かれた頬を押さえるペルラ王女は、突然のことになにがなんだかわからない様子だ。
「俺がどれほど心配したとお思いですか。リグがあなたとの会話を覚えていて下さったおかげで真っ直ぐにここを探し当てられましたが…もし間に合わず、守護騎士に捕らえられてしまっていたらと気が気ではありませんでした。あなたは俺が勝手な行動をしたあなたがどうなろうと構わない、そう思うような人間だと思っていらっしゃるのですか?」
「そ、そんなつもりでは…!」
「わかっています、俺にあなたを責める資格はありません。ですがこれだけは言わせてください。――いつまでも煮え切らずリグに優柔不断だと叱られるような男ですが…それでも俺にとってあなたは、間違いなく異性の中で最も大切な御方です。本当に…無事で良かった…」
――困惑するペルラ王女にその手を伸ばし、トゥレンは王女をそっと引き寄せると大きな身体で包み込むように抱きしめた。
ここからその顔は見えないが、恐らくは少し驚いてでもいるのだろう。ペルラ王女の手は戸惑ったように空を泳ぐと、やがてトゥレンの背中からその衣服を強く掴んで二人は抱き合った。
この時俺にはわからなかったのだが、後になってペルラ王女から聞いた話によると、トゥレンは王女を抱きしめてすぐ耳元にそっと愛を囁いたらしい。
まあトゥレンにしてみれば、俺と言うお邪魔虫がいたのでは大声で叫ぶわけにもいかなかったのだろうが、あまりにも〝こっそり〟過ぎて嫌味を言う羽目になる。
「あら…あらあら、まあ…そう言うことかい。」
「はあ…『30点』。」
先程とは打って変わり、二人の仲に気付いた中年女性は微笑ましそうにその光景を見てうんうんと頷く。
その横で思わず落第点を付けそう言った俺にビクッと背筋を伸ばし、恐る恐るトゥレンは振り返った。
「さ、30点ですか…?その点数は酷いでしょう、リグ…」
「いくら心配でも頬を叩いて良い理由にはならん。その謝罪もないんだ、当然だろう。」
「あ…!!も…申し訳ありません!!俺はなんと言うことを――」
「いいのです、レン…黙ってここへ来た私が悪いのですもの。」
「ルラ…」
あれで許す王女も王女だが、『愛している』の一言も告げられないとは情けのない奴め。
きちんと思いを伝えたとは知らなかった俺は、ようやくくっついたトゥレンとペルラ王女がいつまでも見つめ合い二人の世界にいるのを無視して、横の中年女性を一瞥した。
「――あなたが『ポエム』殿か?」
そう尋ねた瞬間、女性は物凄くあからさまに嫌そうな顔をした。
焼土色の髪に褐葉の瞳…服の上からは分かり難いが、細腕なのにかなり鍛えられた戦士のような筋肉質の腕をしている。
言わせて貰えばこの女性の方こそ、〝只者ではない〟だろう。
「姓で呼ばないでくれないかねえ…あたしの名前はゲルセミナだ。これでも昔は一端の賞金稼ぎだったんだよ。どうやって堅物の魔物駆除協会から偽名表記のIDやら特別保護制度の資格だのを捥ぎ取ったのか知らないが、あんた…エヴァンニュの元将軍〝黒髪の鬼神〟だろう。」
「…!?」
ペルラ王女が俺のことを喋ったのかと思い、思わずトゥレンと共に彼女を見るも、王女はそれを否定して横に首を振る。
…俺の本当の姿が見えている?
「違う違う、その魔道具はきちんと効果を発揮してるよ。これはあたしの特技でね…いや、固有能力と言った方が分かり易いかい?とにかく色々と『聞こえちまう』のさ。」
「聞こえる?…どういう意味だ。」
なにが聞こえると言うんだ…?まさか俺の心の声とかか?
「うーん、説明するのは難しいね。あんただってなぜ目が見えるのかと聞かれたら、それを詳しく説明するのは難しいだろう?ただ生まれつき〝こう〟なんだとしか言いようがないんだよ。」
「………」
俺が〝識者〟であるのと同じようなことか…
「…まあいい、それが事実なら細かい事情を説明する手間は省けるな。――見つかる前にシニスフォーラを出るぞ、ルラ。ただでさえ俺達はユスティーツに〝絶対に行くな〟と言われていたのにここへ来てしまったんだ、長居をするわけにはいかない。」
「待ってください、リグ…!ゲルセミナ、お願い。リグとレンにログニックの話と、国王殿から聞こえる『声』について話してください。」
「王女…けどね、知った所で誰にもなにもできやしない。国王殿に巣喰っているものの正体がなんであれ、普通の人間に太刀打ちできる相手じゃあないんだよ。ログニックのように正面から挑んでも返り討ちにされ、罪人として晒し首になるなんて望まないだろう?」
罪人として晒し首…?あのキエス魔法闘士殿がか…!?
「わかっています、でもせめて話を聞いて貰うだけでも…お願いです、リグ、レン!兄の状況を知らなければ、いずれなにかしようと思っても考えることすらできないでしょう?五分…いえ、十分でも良いのです、ゲルセミナの話を聞いて下さい…!!」
「はあ…」
戦場ではその僅かな時間が命取りになることもあるというのに…
「――わかった、五分だけだ。それで納得すると誓えるなら聞こう。但し事情を知ってもルラの望むようなことは俺になにもしてやれん。俺は自分にそれほどの力がないことを知っているからだ。それでいいか?」
「は、はい…構いません。」
「…だそうだ。悪いがゲルセミナ殿、出来るだけ簡潔に手短に頼む。」
「……仕方ないね、わかったよ。」
椅子に座るよう促されたが、俺はすぐに動けるよう立ったままで話を聞くことにする。
当然、トゥレンも俺に倣い、ペルラ王女とゲルセミナ殿の二人だけが腰を下ろして話し始めた。
「先ずはログニックのことからだね。時間がないからあたしとあいつの関係については割愛するよ。興味があるなら後で王女から聞いとくれね。」
俺は黙って頷く。
「数ヶ月前のことなんだけどね…国王殿に突然、なんの前兆もなく緑色の巨竜が出現したって大騒ぎがあった。幸いなことにその竜は国王殿の敷地から外に出てくることもなく、すぐに討伐されて被害は殆どなかったんだ。」
――その事件の直後にあったシグルド国王からの公式発表によると、竜を召喚したのはエヴァンニュ王国出身の守護者パーティー『太陽の希望』のリーダーで、キエス魔法闘士殿は彼らを捕らえようとした守護騎士の邪魔をし、逃走の手助けをした罪で指名手配されていたと言う。
「な…馬鹿な!」
「ん?」
「あ…いや、すまない、続けてくれ。」
彼が竜を召喚したなどあり得ない…寧ろ被害が少なくて済んだのは、ルーファスが討伐してくれたからではないのか…!?
俺は思わず口を挟んで話の腰を折りそうになり、慌てて口をつぐんだ。
「同じ頃、アパトの守り神様が消えたという噂が流れていてね、一説によるとその件にもその守護者パーティーが関わっているんじゃないかという話があった。実際、竜騒ぎの間もなくアパトにその連中が現れたって守護騎士の証言があり、それと同時になぜかログニックが別の犯罪者の投降に付き添って一緒に出頭してきたんだ。」
別の犯罪者の投降に…?つまりキエス魔法闘士殿は一度ルーファス達と逃げたのに、指名手配されていると知りながらわざわざ自ら戻って来たと言うことか…
「――とまあ、ここまでが表向きの話だ。…で、ここからはあたしの固有能力で得た情報を言うよ。」
「!…ああ。」
ここからが本番か。
「先ず、さっきあんたが言いかけたようだけど…竜を召喚したのは発表された守護者パーティーのリーダーじゃない。あれは国王陛下がサヴァン王家の秘宝を使ってその連中を捕まえる、もしくは殺そうとしたせいだ。」
「!!」
…なんだと…?
「あたしの方で調べたけど、『太陽の希望』ってパーティーは結成してまだそう経っていないにも関わらず、破竹の勢いで昇格しSSSにも達しそうな凄腕パーティーらしいじゃないか。大方陛下直々に打診してシェナハーンに取り込もうとしたのに、あっさり断られたんじゃないかねえ。守護者の高位パーティーってのは、国の政治に利用されることもあるから。――で、召喚された竜は民間に被害が出る前に、守護騎士じゃなくその守護者パーティーによって倒された。だとしたらあのログニックが守護者側に味方して逃走に手を貸したのも頷けるんだよ。」
「ああ…俺もそれなら納得がいく。」
「私もですわ。」
「…ふむ。俺はそこまで太陽の希望について知らないのでなんとも言えませんが、確かにあのリーダーは人的被害が出ることを良しとするタイプの人間ではありませんね。」
「おまえもルーファスと面識があったのか?」
「何度か話をしたことがあると言う程度です。一度目は軍施設に侵入者があったことで容疑者として尋問したので、恐らくあまり良い印象は持たれていなかったことでしょう。」
ああ、あの時か…あの頃はまだ俺も、ルーファスがレインにそっくりだと知る前だったな。
「続けていいかい?」
ゲルセミナに頷く。
「竜騒ぎの方は推測を交えてそんな感じだったんだけどね、問題はログニックが戻って来た後なのさ。あいつは大人しく守護騎士に拘束されて戻って来たんだが、国王陛下を弑そうとして即日首を刎ねられたんだ。」
「あの魔法闘士殿がか…!?」
「信じられません…!」
「それはあたしも王女も同じだよ。ログニックほど幼い頃からこの国の未来を思い、国とサヴァン王家のために尽くした人間を知らない。そのあいつが陛下を襲うなんてなにかの間違いか、そうしなければならなかった理由があったのさ。…そう思ってあたしは殊更集中して『声』に耳を傾けた。――そして知らなくても良いことを知ってしまったんだ。」
――ゲルセミナは言う。これを知れば俺達は、もしかするとエヴァンニュ王国からだけでなく、シェナハーン王国からも命を狙われることになるかも知れない、と。
だがそんなのは今さらだろう。ペルラ王女を連れて逃げている以上は、エヴァンニュと同盟国であるこの国の両方から追われることは初めからわかりきっていたことだ。
それよりも俺はシグルド王とキエス魔法闘士殿、その件になんらかの形で太陽の希望が関わっているのかということの方が気になった。
「いつ頃からなのかはわからないけど、国王殿には未知の存在が巣喰っている。それが国王陛下をおかしくさせて背後で操っていた。」
「…過去形か?」
「ああ。単に操られているだけだとすると、腑に落ちない点があってね。」
「――例え操られていてもオイフェ兄様がご本人であられるなら、ログニックは決して刃を向けたりはしないと思うのです。」
それだけは確信を持って言えるのか、ペルラ王女は強くそう言い切った。つまりあのキエス魔法闘士殿は、それほどまでに王女やシグルド陛下への忠義にも厚かったということなのだろう。
「…俺もルラ殿の意見には同感です。」
「なに?」
「少なくともあの婚約が整う前までは、シグルド陛下と魔法闘士殿の関係は単なる主従以上に信頼関係を築いておられたように見えました。陛下はキエス殿の助言に耳を傾け、全面的に信を置いている…そのお姿を羨ましく思ったくらいなので間違いありません。」
「………」
いつそんな機会があったと言うのか知らないが、トゥレンはそう言って王女の言葉に同意する。
「――操られていたのは過去形で、魔法闘士殿が斬りかかった。要するに現シグルド陛下は別物が外見を変えて成り済ましているか、俺のように皮は本人でも中味が違うか…そう言いたいんだな。」
「はい、リグ…その通りです。」
そうか…王女は目の前で俺の状態を見たからこそ、そんな考えに行き着いたのだな。
実際、俺の身体は俺の中にあるなにかの『欠片』に乗っ取られていた。それが必ずしも俺の身にだけ起きる現象だとは言い切れないか…
その上でもしそうなら俺のように元へ戻せるかもしれない、そう思っても不思議はない。
「ゲルセミナ殿、あなたはどう思っている?」
「あたしかい?――そうだね…根拠はないが、前者の方かな。」
「確かにそれなら辻褄は合いそうだが…」
だがそれだとシグルド陛下は既に――
「もしそうだとして、国王殿に巣喰っているものの狙いや目的がなんなのかはわかっているのか?」
「…ざっくりとだけはね。」
「ならばそれを阻止すれば…」
「阻止、ねえ…それが単にこの国を害するとかでなく、〝フェリューテラを滅ぼす〟ことでもかい?」
「「!?」」
フェリューテラを滅ぼす…!?
「最初に言っただろう。知った所で誰にもなにもできやしない、普通の人間に太刀打ちできる相手じゃないんだよ、ってね。――あれはこのフェリューテラに滅びを齎そうとする、なにかの大きな意志だ。そんなものにどうやって抗えると言うんだい?少なくともあたしやあんたらには無理だと思うね。」
「………」
魔物や災厄のような存在ですらないと言うのか…確かに無理だな。
「ただ…不思議なんだよね。」
「なにがだ?」
「聞こえてくる声からは明確にフェリューテラを滅ぼそうとする意志は感じるのに、なぜか悪意が全くないからだよ。普通は相手を殺すのに、憎しみや殺意なんかの負の感情を少なからず抱いているもんだろう。況してやこの世界を滅ぼそうとするくらいなんだ、人間やなんかを憎んでいてもおかしくないはずなのに…まあだから正体不明なんだけどね。」
悪意のない、フェリューテラを滅ぼそうとする意志…
「!」
俺がゲルセミナの言葉を良く考えてみようとしたその時、彼女がなにかに気付いてハッと顔を上げた。
「まずい…どうしてだ、気付かれた!?『黒騎士』が来る!!」
「「「!?」」」
「なんだ、その黒騎士というのは…!」
「二ヶ月くらい前から単独で街を警邏するようになった、全身黒甲冑で身を固める守護騎士のことさ…!奴は人の命を吸い取る恐ろしい力を持っている。そいつが現れるようになってから、住人達はみんな怯えて暮らすようになったんだ!」
「なんだと…!?」
それで街の住人は皆暗い顔をしているのか…!
「王女、今すぐお逃げ下さい!!国王殿に王女の存在が気付かれたようです!!」
「レン、ルラ、急いでシニスフォーラを出るぞ!!」
「は!!ルラ殿!!」
トゥレンは右手をペルラ王女へ差し出し、椅子から彼女を立たせてすぐに外套を羽織らせる。
その間にゲルセミナも似たような外套を羽織り、魔法石を使って髪色をペルラ王女の元色に変えると、結んでいた髪を解いてわざとフードから垂れ下がらせた。囮になるつもりなのだろう。
「あたしが王女の振りをして黒騎士を攪乱する。黒髪の鬼神、殿下を頼むよ!」
「その台詞は俺じゃなくレンに言ってやれ!」
「もちろん、あんたもだ!!」
「言われるまでもありません!」
「待って、ゲルセミナ!私と連絡を取る方法を――」
準備を終えて外へ出ようと扉前に陣取るも、ペルラ王女はまだゲルセミナと話し足りないのか彼女を振り返る。
「いけません、王女。あたしから王女の所在が知れてしまう可能性があります。無事に逃げ果せたなら、ベルデオリエンスから賞金稼ぎ連盟への依頼を通じて書簡を下さい。その方が危険を減らせます。」
「わ、わかりましたわ…」
「どうかご無事で。」
「…あなたもね。」
ゲルセミナと王女は互いの無事を祈り抱きしめ合った。
「急げ、ルラ!」
別れを惜しむ間もなく俺が急かすと、王女は伸ばされたトゥレンの手を取り、俺は勢いよく扉を開けた。
バンッ
すぐに周囲を確認するも、まだ黒騎士とやらの姿はない。
「あんたらは右へ行け!一度街門とは反対方向へ逃げ、裏通りを大きく迂回してから周りに怪しまれないようゆっくり歩いて外へ向かうんだ!!」
「ああ、恩に着るぞ、ゲルセミナ!!」
――そうして俺達は慌ただしくゲルセミナと別れ、家の前で彼女とは反対方向に駆け出した。
百メートル、二百メートル…と、出来るだけ遠くに向かってそこから離れ、言われた通りに裏通りへと駆け込む。
「リグ、既に気付かれているのなら、門扉は閉ざされているのでは…!?」
走りながらトゥレンが懸念を口にする。だがそうならそうとゲルセミナやペルラ王女が先に言うだろう。
「いえ、それは大丈夫だと思います。シニスフォーラでは街門を閉ざす前に、民に閉門を知らせる鐘を先に鳴らします。その音はまだ聞こえておりませんから…!」
「ルラがこう言うんだ、行ってみるしかない。」
裏通りに入り、ゲルセミナの家から十分離れた所で走るのを止め、ゆっくりと歩き出す。
これ以上は逆に何事かと注目を浴びて目立ってしまうからだ。
「ここからは普通にハンターとして繁華街を抜け、徒歩で街門を抜けるぞ。」
「乗合馬車は使わないのですか?」
「ああ。場合によっては街道から外れ、一旦近くの森へ逃げ込むためだ。強行軍になるが、そのままボレアスへ向かうぞ。」
「了解です。ルラ殿もそれでよろしいですね?」
「……はい。」
王女が返事をするまで間があった。あんな話を聞いては気になるのも当然だとは思うが…ここで俺達が捕まっては元も子もない。
シグルド陛下の身になにか起きたのは確かでも、ただでさえ正体不明の敵にたった三人でなにができる?今の俺達はあまりにも無力だ。
――ベルデオリエンスに行き、王太子に事情を話せばなにかいい手立てが見つかるかも知れないが…それもあまり過剰な期待はできないだろう。
ファーディアとも国境を接するあの国は小さく、それほど力のある国ではないからだ。
それどころか王女を連れて行くだけでも、下手をすればエヴァンニュも絡んで戦争になるかもしれん…あの男ならそのくらい平然とやりかねないからな。
とにかく先ずはここを無事に出るのが最優先だ。
裏通りから繁華街に入り、疎らな人の通りに紛れ街門へゆっくりと歩いて向かう。
ゲルセミナはああ言ったが、特に守護騎士が緊急配備されている様子もなく、ペルラ王女の言った通り門扉も開かれたままで、普通に人や馬車の出入りも行われていた。
それを見た俺はホッと安堵する。
良かった、このまま何気ない振りをして外へ出られそうだ。
――だがそう思った次の瞬間、俺達の後方から住人達のざわめきと悲鳴が上がる。
「きゃああ!!いやあっ、誰か黒騎士に捕まってるわっ!!」
「く、黒騎士だ!!黒騎士の巡回だぞ!!みんな早く家の中に入れッ!!!」
「「「!?」」」
そんな叫び声と共にまるで蜘蛛の子を散らすようにして、住人達は一斉に手近な建物内へと逃げ込んで行く。
通りに残っているのは、俺達のように王都外から来た人間ばかりのようだ。
「なんだなんだ、住人達が逃げて行ったぞ!?」
「なんかわからんが、俺達も逃げた方が良くないか?」
その残っていた外部の連中も慌てたように散って行く。
――ちっ、まずいな…一気に人通りが減った。俺達も外へ出るのではなく、どこかの建物に逃げ込むべきか…!?
下手な行動を取ると却って目立ちそうだ…!!
「リ、リグ…まずいです、あれを見てください…っ!!」
それでも残る人垣の中に身を潜めていた俺達だが、トゥレンがその光景に気付いて青ざめ、通りの先を指差した。
「!」
あれは――
「ゲルセミナっ!!!」
「駄目だ、待てルラッ!!」
それを見て止める間もなくペルラ王女は飛び出し、俺もトゥレンもすぐに手を伸ばしたが彼女の腕を掴み損ねる。
そしてその視線の先には、全身が青黎い甲冑に包まれ、頭部を覆う兜を被った顔の見えない守護騎士に、片手で喉元を掴まれて高く掲げられ、既にぐったりとしているゲルセミナの姿があった。
あれが『黒騎士』…なんてことだ、囮になったゲルセミナは捕まったのか…!!
「おやめなさい!!罪なき民間人になんという真似をするのです…!!我がシェナハーン王国の守護騎士は、サヴァン王家にではなく国と民に仕えるもの!!そなたの行動は騎士にあるまじき行いです、今すぐその手を放しなさいッッ!!!」
ゲルセミナの窮地に我を忘れたのか、自らが追われている立場にも関わらず、ペルラ王女は黒騎士に向かってそう強く言い放った。
「くっ…ルラ殿…!!」
まずいことになった…自ら守護騎士の前に飛び出したのでは、いくら魔道具で姿を偽っていてもすぐに王女だとばれるだろう。…どうする?
――横でトゥレンは俺への忠誠からか、今すぐ自分も飛び出したいのを必死に堪えている。
俺は一度目を閉じ、冷静になって考える。そして…
「…レン、闇の眼であの黒騎士とペルラ王女に見える光は何色だ?」
「え…」
「早く答えろ、何色だ?赤か?」
「い、いいえ、違います…!!」
俺の質問にハッとしたトゥレンはキッパリとそう否定した。
「ならば俺達はここで死にはしない。――行くぞ!!」
黒騎士とペルラ王女に赤い光が見えないと言うことは、この時点で俺が命を落とすことはないと言うことだ。
だからと言って敗北しないとは言えないが、例え捕まってエヴァンニュに送り返されても、生きている限り俺は何度でもあの男の元から逃げ出してやる。
そう覚悟を決めて俺はトゥレンと共にペルラ王女の元へ駆け付けた。
「リグ、レン…!!」
ザッ
王女を二人で挟み込むように立ち、その前へ進み出てライトニングソードを引き抜くと、俺はゲルセミナの首を吊っている黒騎士を睨みつけた。
――絶対に行くなと言っていたユスティーツは、このことをどこまで予測していたのだろうな…
彼がいれば逃げることも可能だったろうが、もうどうにもならん。
すまないな…ユスティーツ。
「デスブリンガーを抜け、レン!!ルラとゲルセミナを助けるぞ!!」
そうして俺とトゥレン、ペルラ王女はこの不気味な黒騎士との戦闘に挑んだのだった。
次回、仕上がり次第アップします。




