表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eternity~銀髪の守護者ルーファス~  作者: カルダスレス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

240/275

234 心と力の差

瘴気の魔物との戦闘中に、ルーファスの言いつけにも関わらず自ら戦闘領域を出て行ったウェンリーに、ルーファスは焦り、動揺してしまいます。それでもレインフォルスの諫める声に従い、不安と胸騒ぎに苛まれつつ戦闘を続けますが…?

          【 第二百三十四話 心と力の差 】



「どこへ行くんだウェンリーッッ!!!戻って来いッッ!!!!」


 切迫した状況の戦闘中にも関わらず、なにを見つけたのか、ウェンリーはあれほど言い聞かせたのに戦闘領域を出て俺達から離れ、どこかへ一直線に走って行く。


「イスマイル、ウェンリーはなにを見つけたと言っていたんだ!?」

「わ、わかりません…!わたくしにはウェンリーが指差してもなにも見えなくて…っ」

『ふざけるなよ、こんな時に勝手な行動を取るなんてなにを考えている…ッ!!!』


 頭の中にレインフォルスの怒声が響く。


 ――そうだ、こんな状況なのにあいつが勝手な行動を取るなんてあり得ない…それなのに、それほどのなにを見つけたと言うんだ…!?


「おい、ラムザウアー!!」


 困惑して焦る俺の元へ、戦闘領域の一番外側で戦っていたツェツハのハンターが駆け寄ってきた。


「あの赤毛のA級…ウェンリーだったか、あいつ俺が止めたのに〝逃げ遅れた子供がいる〟とかおかしなことを言って走って行ったぞ!!」

「な…」

「はあ!?そんなわけねえだろう!!ツェツハの住人は全員避難が完了していると言ったはずだぞ!!何度も確認しているんだ、こんな所へ子供が一人で出てくることはあり得ねえ!!」


 ――ツェツハのハンターとアバローナの言葉を聞いた瞬間、俺は全身の血がザアッと音を立てて引いて行くのを感じた。


『馬鹿が…ッ罠だ!!!これだけの騒ぎに乗じておまえが動けないのをいいことに、ウェンリーの命を狙っている犯人が確実にあいつを殺そうとして動いたんだ!!!なのにコロッと欺されて…ッ』

「ウェンリーは…ウェンリーはどこだ!?どこへ向かったか、見ていたか!?」

「そ、それが…途中で掻き消すようにフッと消えちまったんだよ!!」

「!!」

『転移魔法だな。王都ベルンシュタインで攫われたのと同じ手段で、どこかへ連れ去られたんだ…!』


 ウェンリー…!!


『大変だ…今すぐ…た、助けに行かないと…っウェンリーが…、ウェンリーが今度こそ殺されてしまう…ッ!』

『落ち着け、しっかりしろルーファス!!!』


 強烈にレインフォルスが俺を窘める。


『アテナの腕輪は修復し、俺とおまえの魔力を込めて改良した防護魔法石のペンダントと身に着けさせてある!!前々回と異なり、時間をかけても今度はそう簡単にあいつを傷つけることはできん!!たった今おまえは俺になんと言った!?』

『…ッ』

『あの馬鹿一人のために、おまえはこの状況を放棄してまであいつの後を追うつもりか!!!』

『レインフォルス…っ』


 ――目の前が真っ暗になった。


 ディフェンド・ウォールを維持し続け、戦闘領域内にディスペルを使い続ける。それを熟しながらも、レインフォルスの言う通り、俺はこの場を放棄してすぐにもウェンリーを助けに行きたかったからだ。


『冷静になれ、ルーファス!先ずはこの状況を打開する(すべ)を先に見つけるんだ!!』


 レインフォルスの忠告するその声がどこか遠くに聞こえた。





「うああああああーッッ!!!」


 能力上昇のバフ『フォースフィールド』を以てしても、耐え難いほどの痛みがゲデヒトニスの左腕を襲う。

 ミシミシと骨が軋む音は激しくなり、今にもバリバリと皮膚の裂ける音が聞こえて来そうな恐怖に、ゲデヒトニスは恐慌状態(パニック)へ陥った。


「おっほほほほほほ、そうら、もう少しよ…坊やの腕が引き千切れるまで後少し。ああ、ゾクゾクしちゃうわ、もっと叫んで!!泣き喚いてくれていいのよ!!最高だわ!!!」

「嫌だ嫌だ嫌だ!!!助けてーッ!!」


 ――ゲデヒトニスは初めて感じる恐怖に混乱し、冷静になれば見つけられるはずの対抗策も考えられずに、その外見通りまるで子供のように助けを求めた。


 だがその時、その叫び声に呼応するかのように救いの主が現れる。


 シュンッ


「見ぃーつけた♪そうはさせないよ、カオスのオ・バ・さん!!」

「!!?」


 そのどこか軽薄な印象を受ける高めの声と共に転移して来た人物は、鈍く光る漆黒の二枚羽根をバサリと羽ばたかせ、凶悪な獣の口に変化させた右腕で背後から第四柱(テトラゾイレ)へ襲いかかった。


「性悪ババアは僕の『オムニスオブルーク』に喰われてしまえ!!」


 想定外の乱入者と思わぬ未知の攻撃に回避も間に合わなかった第四柱は、自身のローブに開く巨大な口と同じようなその獣の口に、身体の半分をごっそりと持って行かれてしまう。


「ぎゃああああっ!!!!」


 耳を劈く第四柱の絶叫と共にゲデヒトニスを拘束していた舌が外れ、自由になった彼は驚いてその助っ人に目を丸くした。


「君は――」


 灰緑色(かいりょくしょく)の長い髪に赤味のある栗色の瞳。高身長でどこかぼんやりとした雰囲気を持ち、眠たげに開く目はおっとりとした印象を受け、今のこの緊張した状況にその口調も軽口も酷くそぐわない男性だ。

 ゲデヒトニスは直接会ったことがなく、間違いなくこれが初対面だったが、ルーファスの記憶から彼が誰なのかは知っていた。


「やあ、久しぶりだね。カオスに襲撃されているのを感じたから助けに来たよ。……って、あれえ…?」


 ――有翼人の天空都市『フィネン』の王族で元ル・アーシャラー第八位だったことのある、『ユスティーツ・フェル・フィネン』。

 そのユスティーツは〝助けに来たよ〟と言いながら、ゲデヒトニスを見てキョトンとし、不思議そうに首を傾げた。


「ルーファス様じゃない…よね。君…誰???」

「誰、って…」


 ユスティーツは僕をルーファスだと思って乱入して来たのか…なんにしても助かった…!!


「僕はゲデヒトニス。君のことは知っているよ、ユスティーツ。危ない所を助けに入ってくれてありがとう。説明は後にして良かったらここは僕に協力してくれるかい?」

「うーん、いいよ。君、どうしてかな…ルーファス様と同じ魔力を感じるから、きっと味方なんだよね。」

「助かるよ、感謝する!!」


 ――こうして思わぬ助っ人の乱入で危機を脱したゲデヒトニスは、ユスティーツと協力して負傷した第四柱との戦闘へ再び挑むことになった。


「な…なんなのよ、あんた…!!まさか、有翼人種(フェザーフォルク)なの?蒼天の使徒アーシャルじゃないわよね!?あたくしを喰らったその右腕と言い、アーシャルにはあり得ない黒い翼と言い――」

「カッチーン。あり得ない黒い翼の()()()()(そこまでは言ってない)悪かったね…て言うかさあ、たった今身体の半分以上喰らったのに、なんでまだ平然と喋れるのさ?カオスはゴキブリみたいな存在だって光神レクシュティエル様は仰っていたけど、僕もそれに同感だなあ。」

「キイーッ、なんですって!?あたくしがゴキブリだって言いたいの!?」

「あははは、良くわかっているじゃない。僕からすれば君らカオスは、昔っから目障りな()()だもの。まあ、アーシャルの内側に巣喰う『聖哲のフォルモール』も同じようなものだけどね。」

「ふ、ふざけるな!!この羽虫風情がーッ!!!!」

「あーらら、言葉遣いが変わっちゃってるよ。でもさあ、僕にばっかり気を取られていていいのかい?後ろがすっかりお留守だけど♪♪」

「!!!」


 ユスティーツが第四柱の気を引き付けている間に、ゲデヒトニスは反撃を開始。『セプテム・ディア・アスラハ』を駆使して全力で七つの神器を奮い、第四柱の身体をバラバラになるまで切り刻んだ。


「ギャアアアアアアーッ!!!!」


 これにはなんの対処も出来ずに、再び第四柱の絶叫が周囲に木霊する。だが――


 ――切り刻んだ躯体は緑色の液体を撒き散らしながら地面にボタボタと落下して行ったが、それでもまだ第四柱は首だけの姿となって宙に浮かんでいた。


「はあはあ、なんてしぶといんだ…首だけになってもまだ生きているなんて――」

「ふうん…躯体は作り物で首から上だけが本体なのか。カオス第一柱(モノゾイレ)が頭だけになっても生きていられる暗黒術を生み出したって言うのは本当だったんだね。全く…フォルモールもカオスも、やっぱり頭のおかしい連中ばかりだ。」

『ハッ、そうか…ようやく思い出した。キサマ、遥か昔に行方知れずとなったフィネン王家の王太子だな。』


 首だけの姿となった第四柱はその口調がガラリと変化し、嗄れた老婆のような声で話し、長い紫の髪を獅子の鬣のように逆立てながら本の真上を飛んでいる。


『カオスでも守護七聖でもないキサマが、なぜこの現代に生きている?』

「オバさんには関係のない話だよ。――それより逃げなくていいのかい?僕のオムニスオブルークでそのモサモサ頭まで喰らったら、さすがにすぐには復活出来ないと思うけど。ルーファス様の為にはきっとその方が良いよね。」


 再度右手を獣の口へ変化させて脅すように構えると、第四柱はびくっと大きく頭を揺らし、早々に退散態勢に入った。


『チィッ…坊や、この続きはまた今度だよ!!守護七聖主(マスタリオン)に伝えておきな。この世界(フェリューテラ)を滅亡へ導くのは、ディース様だけじゃなく()()()()()()()ってな!!』

「な――」


 キャハハハハハハ、と狂ったような高笑いを残し、第四柱(テトラゾイレ)は逃げるようにして瘴気の中へ消えて行った。


 額から流れる汗を滴らせ、ゲデヒトニスはようやくホッと安堵する。


 ――なんて無様なんだ。僕はルーファスの…守護七聖主(マスタリオン)の分身なのに、ルーファスの記憶による経験だけじゃカオスに対処しきれなかった…


 やっぱり僕は――


「ねえ、大丈夫かい?」


 ユスティーツは気の抜けるようなのほほんとした口調で話しかけ、小柄なゲデヒトニスの顔を覗き込むように身体を横に折曲げた。


「あ、ああ…うん、平気だよ。」


 まだ恐怖に顔を引き攣らせているゲデヒトニスへ、ユスティーツは気遣うようにニコッと笑いかける。


「それで君…君はルーファス様の()()()()()()?見た目は子供だけど、そのままじゃないよね。」


 警戒心を解くためなのかわざと戯けたように見せているが、ユスティーツの目はゲデヒトニスを見極めるかのように冷静な光を宿していた。


「さっきも名乗ったけれど、僕はゲデヒトニス。――こう見えてもルーファスの分身なんだ。」

「分身…」


 一瞬でユスティーツの顔付きが変わり、軽薄な印象も惚けた態度もあっという間に消え失せた。


「――それはどういう意味なのかな…君は初対面なのに僕のことを知っているようだけど、そのこととも関係があるのかい?」


 その答えの真偽を確かめるように、ユスティーツはこくりと頷いたゲデヒトニスをじいっと見つめる。


「君は僕を助けてくれた。それにルーファスは初対面でも君のことを信用して、()()()()()()()()()()()協力したよね。」

「……うん。――なるほど、だから君も隠さずに自分がルーファス様の分身だって教えてくれた。…そう言いたいんだね。」

「そうだ。」

「――いいよ、納得した。そもそも僕はカオスに襲われている君の魔力を、てっきりルーファス様のものだと思って割り込んだんだからね…あの方の分身だと言うのは疑う余地もないんだ。」

「ありがとう…それでユスティーツはどうしてツェツハに?まさか僕がカオスと戦っていたことだけが理由じゃないんだろう?」

「ああ、そうそうそうだった、僕はね…」





 ――俺は馬鹿だ。


 正真正銘の馬鹿だ。子供の頃からお袋に〝この馬鹿息子!〟って毎日のように呼ばれてたけど、今日という今日はもう、大人しくその呼称を受け入れるしかねえ。


«なんで俺…っこんだけ徹底して民間人の避難が終わってるってのに、子供が逃げ遅れてるなんて思い込んだんだろ…――いくら考えてもわからねえ、だって俺には確かに魔物に襲われて泣き叫んでる女の子の姿が見えてたんだ…ッッ!»


 デウテロンとリヴは前衛で大型の攻撃を引き付けんのに必死だったし、プロートンもテルツォも、イスマイルだってみんな戦闘に一杯一杯で他のことに気を取られてる余裕なんてなかった。

 だから俺が…俺があの子を助けなきゃ、って――


 ――救いようのねえ馬鹿だよな…この間のベルンシュタインで転移させられた時みたく、女の子を抱き上げた、と思ったら、いきなり景色が変わってようやく気がついた。

 ああ、欺された。きっとあれは俺にしか見えねえ幻覚かなにかで、ルーファス達が動けねえのをいいことに誘き出されたんだ、ってな。

 案の定、ひとっ声も発しねえこの二人組は、俺がここへ転移して地面に着地する間もなく襲いかかって来やがった。


 最近はすっかり守護者生活に慣れて、よっぽどじゃない限り魔物に怯むこともなくなってた俺だけど、無言で俺を殺そうと強い殺気を放ちながら武器を振り回すこいつらには、さすがに恐怖を感じちまう。


 落ち着け…ルーファスがアテナの腕輪を直してくれたし、レインフォルスと一緒にルーファスが新しく改良してペンダントにしてくれた、ディフェンド・ウォールの魔法石だってあるんだ。


 こいつらがどこのどいつか知らねえが、そう簡単には殺られねえはずだ…!


 二人ともどこにでもいる茶系の短髪に民間人の着るありふれた衣装。武器もごく普通の銀製短剣に双剣…外見にこれと言った特徴がないわりに、恐ろしく魔法の扱いには長けてるみたいだ。

 狙われてんのがルーファスならあのカルト教団ケルベロス関連かも、と思わなくもねえが、俺があいつの親友ってだけでここまで執拗に何度も襲ってくんのはさすがに妙だ。


 じゃあ、他にどこの誰が、なんの理由があって俺を殺そうとすんだ?――さっぱりわからねえ…!!


 両方ともの顔に全く見覚えはねえし…改良後のディフェンド・ウォールがなけりゃ、引っ切りなしに撃ってくるこのド派手な魔法を一発喰らっただけで、俺なんか即死しちまうだろう。


 ははは…レインフォルスの馬鹿、阿呆、間抜け、って罵る声が聞こえて来そうだわ。


 ガキインッ


「うわっ!!!」


 防護魔法石のペンダントが自動で魔法を発動して、こいつらの様々な攻撃から徹底して俺を守ってくれる。

 ――けどこいつらからはなんとしても障壁を破壊して、今日こそ俺を殺すっつう鬼気迫る強い意志だけは感じた。


 ガガガガガガガンッ、ズドドドドド、と武器攻撃と魔法攻撃が何十、何百と障壁に打ち込まれ続ける。


「ふ、ふっざけんなよ!!!てめえら一体誰なんだよッッ!!!俺はおまえらなんか知らねえのに、なんでここまで俺を殺そうとすんだ!?ああ!?人の命を狙うからにはせめてその理由ぐらい聞く権利は俺にもあんだろうがッッ!!!」

「「………」」

「チッ、やっぱだんまりかよ…!!馬鹿にしやがって…ッッ!!!」


 エアスピナーとルーファスの魔法石で反撃はしてるけど、こいつら多少の怪我なんか気にも止めちゃいねえもんな…実は不死族(アンデッド)生きた死体(ソンビ)かなんかかよ。


 俺が転移魔法かなんかで移動させられてきたこの場所は、壁に埋め込まれた発光石の明かり以外真っ暗だから…多分どこか地下深くの古代遺跡みたいな所で、この部屋はその中のやけにだだっ広くて扉も窓もないボス部屋みたいな一室だ。


 逃げ出そうにも出口がないんじゃ出られねえし、どうすりゃいいんだよ…!!


 ツェツハの戦況も悪くて苦戦してたし、ルーファスは転移魔法が使えねえ…追跡魔法を仕込んでくれてたゲデヒトニスは前線に行ったまま、まだ戻ってなかったよな。


 これ…俺の自力でどうにか出来んのか…!?……ちょっと無理じゃね?


 ハッ…そうだ、ウルルさんの…『黒鳥族(カーグ)の戻り羽根』!!あれがあった…!!


 こう言う時の非常手段として、ウルルさんがルーファスに贈ってくれたノクス=アステールへの転移魔道具。

 それがあったことを思い出した俺は、すぐに腰に下げたウエストバッグから黒鳥族の戻り羽根を取り出した。だけど――


 ザアッ…


「あっ!!!――うっそだろぉ!!?」


 バッグからそれを取り出した瞬間に、戻り羽根は砂と化して崩れて消えちまった。


『――無駄ですよ。』

「!」


 喋った…!?


『この古代遺跡には、転移魔法系の魔道具を無効化する封印が施されています。手元へ取り出した瞬間にそれらは全て砂と化して消えてしまう…残念でしたね。』

「残念って…」


 魔法かなにかで声も変えてんのか、異物を通して話してるようなくぐもった低い声…もちろん俺にはその声にも全く聞き覚えはなかった。


『その上に外からは転移魔法を使っての移動手段でしか入ることもできません。おまけにこの大広間には扉がなく、ここは地下一キロメートルほどの深さに人知れず埋もれていた、凡そ一万年は前の建造物です。要するに、あなたにはもう逃げ場はないんですよ。』

「はっ、だから大人しく殺されろって言いてえのかよ…っ」

『………』


 感情の籠もらねえ、死んだ魚みたいな目で人を見やがって…!!


「おい、喋れんなら理由を聞かせろ!!てめえらホントに誰なんだッッ!!!」


 俺がもう一度怒鳴ると、最初に口を利いた方じゃないもう一人の奴も口を開いた。


『――どうせ死ぬのなら、と言いたい所だが…貴殿はなにも知らないまま逝った方がいい。我々だとて、他に方法があればこんなことをしたくはなかった。だがもう…()()()()()。…悪いが今日こそはここで、なんとしても死んで貰う。』

「……っ」


 なんでだよ…こいつらが誰なのかもわからねえまま、なんで死ねなんて言われなくちゃならねえんだ…ッ


「俺が…ッ俺がおまえらに、なにをしたって言うんだよ…ッ!!!うわああああーッッ!!!!」

「「!!」」


 ――無性に腹が立って腹が立って仕方なかった。


 これまで生きて来た二十三年間の殆どで、自分のことしか考えてねえような生き方しかして来なかったけど、それでも俺にだって初めて好きになった女の子ができたし、努力してルーファスの隣でそれなりに自信を持って魔物と戦えるようにもなって来たんだ。


 守護者として魔物と戦い、人を守って命を落とすんならともかく、理由も知らないまま見ず知らずのこんな奴らにみすみす殺されてたまるか!!!

 俺を守ってくれてんのはアテナの腕輪と防護魔法石のペンダントだけど、どんなにみっともなくったって、自分の力だけじゃ届かなくったって、俺は絶対にここで死んでなんかやらねえ…ッッ!!!!


 弱いなら弱いなりに、魔法が使えねえなら使えねえなりに、死に物狂いでこいつらに抵抗してやる…ッッ!!!



 ――理不尽に命を狙われたことに激しい怒りを抱いたウェンリーは、全力で襲撃者に抗うことを決め、死に物狂いの戦いを挑む。

 敵との間合いは中から遠距離で維持することを徹底して心がけ、エアスピナーでの攻撃合間にルーファスから渡されている数多くの攻撃魔法石を全て使い切るつもりで投げつける。

 ウェンリーが『ボス部屋みたいな』と思った通り、この大広間は天井が高く、三人が走り回って激しい戦闘を繰り広げても十分な強度と広さがあった。

 反響する攻撃魔法の震動と爆音は大地を揺らすほどの轟音となるも、遺跡の頑丈な壁は崩れるようなこともなく、防護障壁さえ破壊できれば難なく殺せるだろうと踏んでいた襲撃者の二人も容易には近づけなくなる。

 文字通り、〝窮鼠猫を噛む〟の如くウェンリーの激しい抵抗に遭い、攻め倦ねた上にルーファスの魔法石で徐々に負傷し始めた襲撃者達は、苦渋の決断、とばかりにここへ来てその方針を変えることにする。


『あの御方のディフェンド・ウォールは、損傷無き攻撃なら通してしまうという欠点がある。状態異常は守りの力で効き難いが、暗黒属性魔法の〝()()〟なら――』

『……やむを得ん、どうせ我らはもう――』

『…ああ。どの道彼を手にかければ終わりなのだ、奪った命の代償は命を以て償うべきもの。――それでも間に合うかどうかは賭けだが…()()()()()。』

『――…そうだな。いいぞ、心は決まった。…共に暗黒の地獄へ落ちよう。』


 必死に戦うウェンリーの耳にそんな襲撃者達の会話など届くはずもなかったが、意味ありげな会話の後、二人は一定の間隔を空けてウェンリーが二等辺三角形の頂点へ位置するように素早く陣形を整えると、寸分違えることなくピッタリとタイミングを合わせ、二人同時にその魔法詠唱へ入った。


『『――万物の死と混沌を司りし暗黒の神に、我らが魂を供物として捧ぐ。』』


 ブオンッ


「は…うわっ!?」


『『我ら取るに足らぬ矮小なる生命は、されど貴神へ切実なる願いの代償として是を差し出すものなり。』』


 足下に…魔法陣!?


「な、なんだこれ…、急に身体が…ッ」


 動かねえ――ッ!


 襲撃者達がその呪文を唱え始めると、陣形の頂点に当たる位置にいたウェンリーの足下へ漆黒の魔法陣が出現し、ウェンリーは突然金縛りにあったように動けなくなる。


 ――やべえ…なにしてやがんだ、あいつら…!!なんかわからねえけど、途轍もなくやべえ感じがする…!!


「畜生、動け…っ動けよ、俺の身体――ッ!!」


 アテナの腕輪で状態異常は効き難いはずなのに、なんで動かねえんだ!?


 硬直した身体を動かそうとウェンリーは必死に踠くが、その身体は石にでもなったかのように、どうやってもビクともしなかった。

 そうこうしている内に襲撃者達の身体から、炎が立ち昇るように目に見えて漆黒の魔力が高まって行く。


『『我らが望み貴神へ願うは、祭壇の頂点に立ちし者たる器の死と魂の解放なり。在るべき者は在らざる者への回帰を望み、在らざる者は在るべき者へと回帰を望む。これより(くれない)の雫がオリフィスを通る時、死の天秤は在るべき者へと傾くだろう。我ら、ここに誓う。〝ファトゥン・ウータリオン・フォーテストゥ〟!!』』


 襲撃者達の呪文詠唱が完了すると同時に、それはウェンリーの前に現れた。


 え…なんだよ、なんか…浮かんで――


 ――どこまでも昏く黒い眼孔の空いた巨大な髑髏。霊体のように薄く透けた髑髏の、その孔の奥に赤く光る細く縦長の邪悪な瞳。

 曾てどこかで見たことのあるような、その禍々しい両目がウェンリーを視界に捕らえて凝視する。


「あ……ああ……」


 例えようのないあまりの恐怖にガタガタと全身を震わすウェンリーは、自分の身体の全ての細胞が、なにか見えない力で別のものへと変化して行くような悍ましさに襲われて絶叫した。


「う…うわああああああああああーーーーーーッッ!!!!!」


 シュシュシュシュンッ


「ウェンリーッッッ!!!!!!」


 ――直後、その声と共にルーファスが仲間と転移魔法で現れ、漆黒の線で結ばれた陣形に割って入ると襲撃者の二人を衝撃波で吹き飛ばした。


 ゴオッ…


「「!!!」」


 ドガガガンッ


「ぐあっ!!」

「ぐおっ!!」


 それはルーファスの怒りが爆発したことによる単なる魔力の暴発に過ぎなかったが、魔法詠唱が終わった直後の無防備な襲撃者達が吹っ飛ばされて壁に叩き付けられるのには十分な衝撃だった。


「あああああーーーーッ!!!!」


 なにもない目の前の空間を凝視して恐怖に目を見開き、震えながらただ叫び声を上げ続けるウェンリーへ駆け寄ると、ルーファスはしゃがんで腰を抜かしながら後退るウェンリーの両肩を掴み、正面から呼びかけた。


「ウェンリー!!ウェンリー、俺だ!!!なにがあった!?ウェンリー!!!」


 ルーファスと一緒に転移して来たのはゲデヒトニス、ユスティーツ、サイードの三人で、その内のゲデヒトニスとサイードはルーファスに続いてウェンリーへ駆け寄り、ユスティーツだけはその場で壁に叩き付けられて気絶している襲撃者の方をちらりと見やった。


 ルーファスが何度も繰り返し呼びかけるが、ウェンリーは余程恐ろしいものを目にしたのか、錯乱状態になって暴れ出しルーファスの手を振り払おうとする。


『酷い精神錯乱状態だ…!すぐに鎮静剤を打つか、魔法で意識を失わせるかしないと気が狂ってしまうぞ!!』

「!!」


 ウェンリーに呼びかけるルーファスの横で、すぐさまウェンリーの身体を調べたサイードはウェンリーがなんの怪我もしていないことをルーファスに伝える。


「大丈夫です、ウェンリーはどこにも怪我はしていません!!」

「そうか…!ウェンリー…ウェンリーもう大丈夫だ、一旦休め…!」


 両耳を手で塞ぎ、俯いて首を左右に振るウェンリーにそう言うと、ルーファスはサイードを横目で見て続けた。


「錯乱状態だ、俺の魔法でウェンリーの気を失わせる。――怯えた意識を閉ざせ、『コンシアンス・スタンヒュプノス』…!!」


 ルーファスが瞬間詠唱で魔法を発動すると、すぐにウェンリーは虚ろな目になってピタリと叫ぶのを止め、やがてふうっと眠るように意識を失った。


『すぐに連れ帰って休ませた方がいい。身体は無傷でも精神の方はわからない。』

「ああ。悪いがサイード、ゲデヒトニス。ウェンリーをツェツハに連れ帰ってすぐに休ませてくれるか?俺は襲撃者を捕獲してからユスティーツの転移魔法で帰るから。」

「ええ、わかりました。」

「了解だよ。ルーファスが戻るまで僕がついてる。絶対にウェンリーから目を離さないから、心配しないで。」

「ああ、頼んだ。俺もすぐに戻る。」


 ルーファスはこれまでに誰も見たことのないほど険しい顔をして頷き、ゲデヒトニスが気絶したウェンリーの身体を座った体勢のまま支えるような形でしっかり掴むと、サイードの転移魔法で直ぐさま消えて行った。


『ルーファス、気持ちはわかるが――』

『ああ、心配しなくても大丈夫だ。ウェンリーは生きていたんだし、理性を失ってまたあなたに迷惑をかけるようなことはしない。』

『……そうか。』


 立ち上がったルーファスは、気を失っている襲撃者の前に立って見下ろしているユスティーツへと歩いて近付いて行く。


「ありがとう…ユスティーツ。カオス第四柱(テトラゾイレ)からゲデヒトニスを助けてくれたことと言い、あの瘴気の魔物も…君が手を貸してくれなければ、俺はいつまでも身動きが取れないままだった。」

「気にしなくていいよ、()()僕の方も用事で近くにいただけだし。でもお役に立てたなら良かった。――それより…この二人、変化魔法で外見を変えているよ。」

「……そうだな。」


 ゴッ…


『おい…!!』


 ルーファスは地べたに足を伸ばし、両手をだらんとさせ壁際で気絶している襲撃者を見下ろすなり抑えられなかったのか、身体から怒りの闘気を発した。


「わお…見事な白銀と黄金のオーラだ、相当怒っているね。」

「ごめん、これでも随分抑えているんだよ。」


 この連中がウェンリーを…



 ――ウェンリーが突然戦闘領域外へ走り出し、再び犯人の転移魔法でどこかへ攫われた後、動揺した俺はレインフォルスに叱られながらディフェンド・ウォールを維持し続け、それと並行し周囲に散らばる魔核にディスペルを放ち続けた。


 いくらアテナの腕輪と防護魔法石のペンダントがあるとは言え、犯人の正体がわからない以上、ウェンリーが絶対に無事であるとは言いきれない。

 押し寄せる不安と胸騒ぎに冷静さを失い、俺は太陽の希望(ソル・エルピス)のリーダーなのにどうすればいいのかわからなくなって、なにも考えられなかった。


「ルーファス、ごめん!!今戻ったよ!!!」


 程なくしてそんな声と共に、ゲデヒトニスが前線で戦っていた四人のSランク級守護者を連れ、見覚えのある人物と一緒に戻って来た。

 鈍く光る漆黒の二枚羽根を広げ、空を駈けながら一足先に俺の元へ飛んで来たのは、有翼人種(フェザーフォルク)のユスティーツだったのだ。


「君は…ユスティーツじゃないか!どうしてゲデヒトニスとここに――」

「やあ、今度こそルーファス様だ、久しぶり。その説明は後にして、とっととあの化け物を倒しちゃおうよ。」

「あ、ああ、そうしたいのは山々なんだが、魔核がどこにあるのか見つからなくて…!」

「大丈夫、あいつの魔核はね、あのギラギラ光っている両目がそうなんだよ。」

「目!?」

「眼球に覆われて巧妙に隠されているから見つけにくいよね。もちろん、普通なら地上からだと破壊するのも中々大変なんだ。でも僕が上空からオムニスオブルークで外殻を喰らいつつ露出させるから任せて。五分…ううん、三分で決着を付けよう。」

「そうか…頼もしいな、ありがとう!!――ゲデヒトニス、ディフェンド・ウォールとディスペルは任せていいか!?俺も攻撃側に加わる!!」

「え…うん、それはもちろんだけど――」

「ウェンリーがまた攫われた。」

「え…ええっ!?」

「急いであれを倒し、すぐに助けに向かわないと…!!」

「り、了解…!!」


 ――フェリューテラでは既に御伽噺の中にしか登場しない、有翼人種(フェザーフォルク)であるユスティーツを初めて目にしたアバローナ達はかなり驚いていたが、そののほほんとした雰囲気と俺の知り合いであることを察してからは、この状況を打破出来るのならと当たり前のように受け入れていた。


 ゲデヒトニスの合流とユスティーツの参戦、そして前線では急に瘴気の魔物が消えたらしく、中央広場での魔法光が見えたことからこちらへ向かっていた四人のSランク級守護者達が加わってくれたことで、苦戦していた戦況はあっという間に覆る。

 そうして一刻も早くウェンリーの元へ向かいたかった俺は、過剰とも言える魔法攻撃で大型の瘴気の魔物を駆逐し、初対面の守護者達と挨拶を交わす間もなく、追跡魔法でウェンリーの位置を割り出したゲデヒトニス達とサイードの転移魔法でここへ来たのだった。



 壁際で気を失っていて下を向き顔の見えない襲撃者達は、デウテロンやユスティーツの言う通り、確かに外見を変化魔法で変えていた。

 その証拠に俺の真眼では、二人ともが特徴的な『緑髪』であると見えていたからだ。


「この緑髪…まさか彼らは有翼人で蒼天の使徒アーシャルの…?」

「うん。――ルーファス様…彼らの顔を見る前に先に言っておくけど、この二人はフォルモールに操られているわけじゃないんだ。再び戻って来た狂信神官(あいつ)にフィネンが完全掌握される前に、既に姿を消していたからだ。」

「……?」


 顔を見る前に…?


「良くわからないが、フォルモールがウェンリーを襲わせていると言うわけじゃないんだな。」

「そうだね、この件には全く関係ないと思う。まあ、だからこそ僕がずっと行方を追っていたんだけど…とにかく尋問したいこともあるし、気がつかれる前に拘束してしまおうか。」

「…ああ。」


 ユスティーツの言葉に頷いて無限収納から拘束用のロープを取り出すと、それでまずは目の前の襲撃者を縛ろうとしたその時だ。


 バチンッ


「うわっ!!」


 魔法による簡易盾が発動し、俺の伸ばした手が弾かれた。


 シュンッ


「しまった!!」


 その一瞬の隙を突いて目の前の襲撃者が、少し離れた位置に気絶しているもう一人の襲撃者の元へと瞬間移動する。

 そして気付けの覚醒魔法で意識を取り戻させると、二人は少しふらつきながら立ち上がり、俺の方を振り返った。


「え…」


 そこに並んで立つ見覚えのある顔に愕然とする。


「……ス、スカサハ…?それに、セルストイ……」


 ――忘れもしない、それはリカルドの下に付き従っていた有翼人種(フェザーフォルク)で、蒼天の使徒アーシャルのスカサハとセルストイだったからだ。


「「!」」


 俺が彼らの名前を口にし驚愕していると、二人は驚いたようにバッと腕で顔を隠そうとする。


「ルーファス様には『真眼』という固有技能があるんだ。変化魔法が解けたわけじゃないよ、()()()()()。」

「――ユスティーツ様…」


 ユスティーツにそう言われ今さら隠しても無駄だと悟ったのか、スカサハとセルストイは短く溜息を吐くと、諦めたようにその場で変化魔法を解除した。


 彼らはメクレンなどで俺の前に姿を見せる時は、常に純白の二枚羽根を隠して人族に見えるように偽装していたのだが、服装こそそのままでも今はどちらもその背中に真っ白なあの大きな翼が畳まれた状態で見えていた。


「このような形での再会は不本意だったのですが…お久しぶりでございます、ルーファス様。」

「数えるほどしかお目にかかっておりませんでしたが、我らのことを覚えておいでだったのですね。」


 冷静で罪悪感すら滲ませずに、彼らは淡々と俺にそう挨拶をした。


 ――信じられない…だが目の前にいるのは、間違いなくスカサハとセルストイだ。


「どういうことだ…?どうしておまえ達が、ウェンリーの命を…?あいつは俺の大切な親友であり、おまえ達にとっても全く知らない人間ではないだろう…!!――いったいこれはどういうことなんだ…っ、説明しろッッ!!!!」


 あまりのショックに俺は感情に任せて二人を怒鳴った。


 どこの誰がウェンリーの命を執拗に狙っているのかと、不安に夜も眠れないほど悩んだ。

 ウェンリーは俺と出会わなければ、あのまま平穏にヴァハで暮らしていただろうから、俺がカオスや暗黒神を倒すための旅に巻き込んだ所為に違いないと自責の念にも駆られ、何度もエヴァンニュのラーンさんとターラ叔母さんの元へ帰すべきなんじゃないかと考えたくらいだ。


 それなのに…ようやく俺の目で犯人の顔を拝めると思えば、それが知り合いだったなんて…最悪だ――!!!


 全くの見ず知らずの相手であり、この手で捕らえたらファーディア王国のハイレインに突き出して、それが人であろうがなかろうが、この国の法で裁いて刑に服して貰えばいいくらいには思っていた。

 だがこれは…事と次第によって、到底許すことは出来ない。フォルモールのことで警戒はするつもりでいたけど、俺の仲間に手を出すのなら、蒼天の使徒アーシャルは敵だと認識を改めなければならない必要も出て来るからだ。


「答えろ、スカサハ、セルストイ!!!」


 自分でも、腹の底から怒りを含んだこんな声が出せるのかと、少し驚いた。室内の空気がビリリと震える、そんな俺の魔力を含んだ怒声だ。

 ところが肝心なスカサハとセルストイの二人は、俺の怒りを受けるのは当然、と言わんばかりにただ黙って目を閉じる。


「なんとか言え!!!」


 二人のその態度が、さらに俺の怒りを増長させた。


『落ち着け、ルーファス!!それ以上怒りに感情を支配されるな!!』

『…っでも…ッレインフォルス、こんなのは…っ』


「――元よりルーファス様のお怒りを受けるは覚悟の上。ですが申し上げることはなにもありません。」

「なっ…」

「我らがお目にかかることは恐らくもう二度とないでしょう。…失礼致します。」

「ま…待て!!!スカサハ、セルストイッッ!!!」


 結局二人は俺になにも教えてくれないまま、転移魔法でまた掻き消すようにいなくなった。



「………」


«ふうん…そう言うことか、なるほどねえ…»


 二人に尋問したいことがある、ずっと行方を追っていた、とルーファスに漏らしたユスティーツだったが、拘束に失敗し逃げられたにも関わらずすぐに後を追うでなし、その場で両腕を組んで思案に耽ると右の靴の爪先をトントントンと鳴らした。


«――ま、これは確実に()()()()かな。»


 須臾後、顔を上げるユスティーツは、遺跡の地面に微かに残るスカサハ達の施した魔法の残滓を一瞥し、俯くルーファスに横から話しかけた。


「ルーファス様、一度ツェツハに戻ろうよ。」

「ユスティーツ…」

「今の段階で僕が知っていることも少し話しておきたいし、あの二人がなにをしにここへ来たのか知れたから、ルーファス様にお願いしたいことができたんだ。」

「お願いしたいこと?」

「うん、詳しい話を聞いてくれるよね。」

「…わかった。」


 酷くショックを受けた表情のまま、ルーファスはユスティーツの転移魔法でツェツハへと戻って行ったのだった。





 

次回、仕上がり次第アップします。今年も一年、ありがとうございました!!年内もう一話上げられるかな…?無理ならまた来年、です。皆様、良いお年を!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ