洗脳
無事に俺達は、件を式神にする事に成功。
井戸から外に出ると、心配そうな顔を浮かべた琴平と紅音が向かってきて、その後ろに雨燕さん。複雑な表情を浮かべている村長の姿があった。
「優夏、無事だったか?」
「うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう琴平」
「闇命様の体に何かあったらたまったものでは無いからな」
「俺の心配もしてほしい……」
いや、闇命君への心配は、同時に俺への心配という事にもなるんだけどさぁ。また、違うやん。違うやん!!!!!
紅音は紅音で、半透明の闇命君へと真っ直ぐだったな。俺の事は素通りしって、悲しい。まぁ、それも別にいいんだけどさぁ。
はぁ……。俺、今回結構頑張ったのになぁ。虚しいよ、くすん。
ん? 頭に暖かい何かか乗っかった? な、なんだ?
「ん? どうしたの琴平」
「優夏も、お疲れ様だ。本当に無事で良かった」
琴平が俺の頭を優しく撫でてくれた。え、いきなりどうしたんだろう。
いきなりの行動に思考が追いつかない。いや、そんなのどうでも良くなってしまう。だって、久しぶりの感覚だから。
まるで、父さんや母さんが撫でてくれているような、声をかけてくれているような。そんな感覚だ。
別に、撫でて欲しかったわけじゃない、甘えたいわけじゃない。それなのに、琴平に撫でられた瞬間、体が暖かくなり、なぜか目尻がじんわりと熱くなる。
「ど、どうしたんだ優夏。嫌だったか?」
「っ、優夏? 大丈夫か、どこか痛いか?」
琴平と紅音が俺の顔を覗き込み、心配そうに声をかけてくれる。そりゃそうだよね。いきなり涙を流してしまったのだから。
涙を拭いながら「大丈夫」と伝えるが、二人は眉を下げ頭を撫でてくれたり、背中を摩ってくれる。
なんなんだろうか。これは、俺の感情ではない気がする。
確かに、暖かくて、優しくて、心地よい。でも、この涙は、感情は、俺じゃない。
よく分からないモノが、俺の心を鷲掴む。一体、この違和感はなんだ。
ふとっ、目線を前へと向けると、俺達を見ている闇命君の瞳と目が合う。
「これ、もしかしてあんっ──」
『とりあえず、件を式神には出来た。僕達の勝ちだよ』
思いっきり話を逸らしやがった。まったく……。素直になりやがれ、糞餓鬼。あーもー!! 涙が止まらない!!
『雨燕。腑に落ちない部分もあったけど、ひとまず件を式神に出来た。これを使い、道満とセイヤの居所を探りつつ、陰陽寮を辿り、それぞれの情報を共有しつつ革命を起こす。僕達の最終目標はセイヤを取り戻し、陰陽寮の規則を改定する事。ついでに蘆屋道満についても野放しには出来ないから、セイヤ奪還する際に何とかするよ。道筋はしっかりと考えているし、今後の動きも件で予測する。陰陽寮の情報と蘆屋道満の足取りなど。手に入れられる情報は安倍家にも仕方がないから共有する。悪い話ではないと思うけど、それでも、邪魔をするの?』
涙を拭いながら闇命君の隣に移動し、雨燕さんを見上げる。
件が手に入った事により、俺達は一歩前進した。ここからは、いつもとは違う事をしなけれは、この世界のルールは変わらない。変えなければならない。
こんな、最低な世界の常識を覆してやるよ。
☆
この村にはもう用はない。それにしても、本当に不気味な村だな。隠れながらやっていたにしろ、まったく気づく気配を見せない。どゆこと?
俺達が上手く隠し続けられたってこと? それにしても、気にしなさすぎじゃないか?
「…………村長」
「どうしましたか?」
今は村長の家に向かい、今後の村について話し合いをしようとしていた。
辿り着くと、どんどん話が進んでしまうだろうし、今のうちに村について聞いておこう。
「なんで村の人達はこんなに平和でいられるの? 平和はいい事だけど、なんか、逆に不気味なんだけど……」
「件が今まで、様々な予言をしてくれており、それを切実に守ってきました。そのため、何が起きても件がいればという思いが皆様の思考を鈍らせているのかと思います。なので、件については、少し伝えるのは待っていただきたい」
「なるほど。事前に件が予言をしていたから、みんなは何か不思議な事があっても、今回も件の言いなりになれば問題ないと思っていたわけか。だから、俺達の行動も野放しにしていたと……。なんとなく納得出来るね」
いや、それでも怖いものは怖いと思うけど。これが所謂、洗脳ってやつなのかもしれないな。
この村にとって、件は神様。だから、その神様に無断に近づいた男性二人は、死刑に近い行為をされそうになったわけだ。納得は出来ないけど、理解は出来た。
「…………宗教心強すぎでしょ……」
もしかしたら、現代の方でよくピンポン押していた宗教っぽい人達も、この村の人達みたいに洗脳されているのかなぁ。ドア開けなくて良かったぁ。
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