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憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫  作者: 文月朔夜
第二章 死絡村

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不可思議

 部屋に押し戻され、正座を余儀なくされる。

 横には琴平、目の前には半透明の闇命君。その隣には雨燕さんが腕を組んで座っている。今ここで正座していないのは闇命君だけ。


 膝近くにいる、澄んだ瞳で見上げてくる鼠が、今の俺の唯一の安らぎだ。


『話、聞いてるの?』

「聞いております闇命様」


 いつもは子供特有の高い声なのに、今はドスの効いた低い声。なのに口調だけは柔らかい。


 …………ある意味これが一番怖いんだよね!!!

 こういう怒り方する人!!!

 ガミガミ怒ってくれた方が何倍もましだったかもしれない。


 学校にもいたなぁ、ガミガミ怒る教師。

 あれはあれで怖かったけど。


 結論:どんな怒られ方も怖い


『聞いてないよね?』

「ひっ?! ごごごごごめんなさい!!! 現実逃避してました!!!!」

『へぇ。なんで? 理由、あるの? ねぇ、教えてよ』


 見たことがないほどの笑顔。顔を寄せられ、逃げられない。


「し、んだ……」


 ※


『まったく。本当に馬鹿だよね。少し考えれば、これが僕じゃないって分かるよね。寝ぼけてた、は通じないよ。分かった?』

「ウィッス」


 闇命君の代わりに、雨燕さんが俺の頭にげんこつを落とした。三回。


 多分、今の俺の頭には三段の鏡餅が完成している。

 確認はしない。怖いから。


 しかもこれ、指示したの闇命君なんだよね。


「闇命様の体にっ……」

「指示を出したのは紛れもない闇命だ」


 琴平が拳を震わせる。

 まぁ、複雑だよな。


 一番尊敬している闇命君の指示で、闇命君の体にげんこつが落ちたんだから。


 ひとまず制裁は終了。俺のミスは帳消し。

 ……怖かった。本当に。


「体はもう大丈夫なんだな」

「あ、はい。お陰様で……」

「ならいい」


 ……あれ、ちょっと優しい?

 あの雨燕さんが、体の心配をしてくれた。


 重症の俺を無理やり戦わせた人とは思えない。


「ところで、三人は廊下で何を話してたの?」


 盗み聞きしてたから大体は分かるけど。


「これからのことと、漆家についてだ」

「あ、そうだ。今回の件って、漆家に情報漏れてる? 白虎まで出てきたし」

『確実に知れ渡ってる。でも、この村の態度は変わらない。それが少し不可思議なんだ』


 不可思議?


「情報が漏れているなら、この村の人間の態度が変わらないのはおかしい。多少なりとも距離を取るはずだ。だが、こうして普通に宿にも泊まれている」


 言われてみれば確かに。


「だが、今は何もできん。夜が明けたら調べる」


 琴平が話を切った。


「優夏も休め。まだ夜は深い」

「さっきまで寝てたから眠くないんだけど」

「それでも休め。紅音は別の部屋で寝ている」

「あ、そうなんだ。良かった。……琴平の傷は?」


 琴平は宿の浴衣姿。

 少し開いた胸元から包帯と、無駄に仕上がった胸筋が見える。


 ……くそっ。隙がない。


「問題はない。すぐ治る」

「紅音も?」

「大丈夫だ。ただ、足首を打撲している。しばらく安静だ」

「それ琴平もじゃない?」

「…………何も言われていない」


 嘘だな。目が逸れてる。


 闇命君には嘘がつけないタイプだよな、こいつ。

 いや、中身俺だけど。


「じゃあ明日は二人とも留守番な」

「っ?! なぜだ」

「怪我してるからだよ!!!」


 絶対無理するだろ!!!

 だから置いてく!!!


 まったく……っ、て、あれ? そういえば……。


「……琴平」

「なんだ?」

「地下の看守と村長、今どうしてる?」


 ちゃんと処理したよな?

 そう思って聞いた瞬間、琴平が目を逸らした。


「────え」


 ※


「僕が……この僕が、あんな女に……ありえない……有り得てはならない……」

「無念……」


 三人と一匹で地下室に駆け込むと、牢に縛り付けられた二人を見つけた。


 村長は手足を縛られ、敗北に打ちひしがれている。

 看守は完全にぐるぐる巻きで、身動き一つ取れない状態だ。


 ……顔が痒くても無理だな、これ。

 この状態で放置してたのか、あいつら。


 大怪我はなさそうだが、切り傷や頬の腫れは目立つ。


「…………琴平」

「………………はい」

「これはどういうことか。簡潔に、分かりやすく、正直に答えて」

「……………………はい」


 振り返らずに問いかける。

 察した琴平は顔を青くし、冷や汗を流しながら小さく返事した。


 よし、ちゃんと話す気はあるらしい。


 ……この時の俺、どんな顔してたんだろうな。

 後で雨燕さんに「闇命でも見せたことがない顔だった」と言われた。


 知らん。悪いのはあいつらだ。


 ※


「僕は村長だぞ……負けるなど、ありえん……」

「無念……」


 縄を解いてもなお、村長は頭を抱えて呟き続け、看守はうつ伏せのまま動かない。


 琴平から聞いたが、この二人は相当強かったらしい。

 一技之長まで使ってきたとか。


 村長は氷、看守は影。

 ……影って何?


「ま、まぁいいや。村長さん、大丈夫ですか?」

「…………君達は何者だ。僕達が負けるわけがない。ないんだもん!!」


 もん?!!!


 いやなんで泣きそうなんですか?!


 完全に拗ねてるんだけど?!


「えっと……俺達、陰陽師なんですが」

「服を見ればわかる」


 まぁ、確かに。

 狩衣なのでね、わかるか。


 他になんて答えようと思っていると、村長と目が合った。

 な、なに?


「――もしかして、魔魅(まみ)様の知り合いですか?」


 魔魅様……ああ。


「漆家の陰陽頭か」


 漆魔魅。資料にあった名前だ。

 知り合いではないが、同業ではある。


「その人に会いたいんだけど、どこにいるか教えてくれない?」

「…………教えん」


 うわ、不貞腐れてる。

 頬ふくらませてそっぽ向くな。


 絶対年上だよな、この人。

 ……どうしよう。餌でもいるのか?


「あれ、琴平?」


 琴平が村長に歩み寄る。


「何を言われても教えませんよ」


 少し落ち着いた口調。


「言わないのであれば──」


 え、その先怖いんだけど。

 ちょっ、なんで式神出してるの?!


「ことっ──」


 止めようと手を伸ばした、その瞬間。


「これで勘弁してくれると助かる」

「……これは?」


 琴平の手にあったのは、一輪の花。

 氷で作られたコスモスだった。


 細部まで精巧で、普通に綺麗だ。


「他に欲しい物があれば作る。氷で悪いが」


 差し出された花を、村長がじっと見つめる。


 …………え?

 なんで頬染めてんの?


 しかもその顔、完全に乙女なんだけど???


 いやいやいや待て待て待て。

 そういうタイプじゃなかっただろ?!


 負けんじゃねぇよイケメンに!!!


「話してくれるか?」


 琴平の一言。


 村長が俯く。


 やめろ。耐えろ。

 そこは折れるな。


 いける。お前ならいける。


 だから──


 否定しろぉぉぉおおおおお!!!!


「…………仕方がないから、教えてやりますよ」


 負けたぁぁぁあああああああ!!!!


「そうか。礼を言う。良かったな優夏──どんな顔だそれ」

「ナンデモアリマセン」


 ……………………


 この世のイケメン、全員滅びろ。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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