本心
『白虎』
晴明が白虎の名前を呼んだ時、通じあった何かがあるのを感じた。
彼を守るように白虎が前へと出て、牛鬼の三本槍と陰摩羅鬼の突進を簡単に防ぐ。
見えない壁により、二人の攻撃は白虎に触れる直前で止まっている。
「小癪な」
『神の怒りに触れるつもりですか、道満。やめておいた方がいいですよ。生前のようになりたくなければ』
っ、生前の、ように?
「だまれぇぇえ!!」
っ、体が重たい!! 指一本、動かせない!
これが、道満の、怒りなのか?
怒りのまま、牛鬼と陰摩羅鬼に法力を注ぐ。
力が徐々に強くなり、白虎を押し始めた。
でも、相手は十二神。ただの式神相手に負ける訳がない。
白虎が頭を大きく振り、咆哮。
体がビリビリと震える、立っていられない。
セイヤも立っていられなかったのか、刀を地面に刺し片膝をついている。
今まで表情一つ変えなかったけど、さすがに苦痛に顔を歪めていた。
「……」
セイヤは優夏の友人。記憶が無いと思っていたけれど、先程からの行動も謎だ。
もし、記憶が残っているのなら、まだ話せる可能性はある。
今、道満は晴明に釘付けだ。今なら話せるか。いや、その前に雨燕をどうにかしないと。
……雨燕も晴明と道満の戦闘に釘付けになっているけど……なんか、大丈夫そうだな。
二人の戦闘に目を輝かせているし、子供かよ。
セイヤの元に走り、肩まで登る。
すぐに振り払おうとはしなかったな、ただ見てくるだけ。
『お前、優夏を知っているか? 覚えてるか?』
「…………知らない。そのような名前、聞き覚えはない」
『本当に? 本当に聞き覚えはない?』
「……何故だ」
『あんたが自身の感情を隠しているように見えてね。今は道満もあんたを見ていない。今しか聞けないんだよ。いいから早く、真実を教えろ』
急いで聞き出さないといけない。
晴明は僕の体に影響はないと言っていたけれど、僕自身、十二神なんて出した事がない。法力も思いっきり吸い取られているだろう。
安倍晴明の子孫だからといって、なんでも出来る訳では無い。
体が白虎の力に耐えきれるかも、時間の問題な気がする。
『早く、お前の本心を教えろ』
「…………知らん。俺は、道満様の右腕として、邪魔者は排除する。ただ、それだけだ」
ちっ、やっぱり記憶はないのか。
それか、優夏が嘘を……あんな単細胞が嘘を吐けるわけが無いか。
『それじゃ、記憶がなっ──』
…………そうか。わかったよ。
はぁ、めんどくさいな。
でも、優夏にこれを言ったら、何をしてでもセイヤとやらを守り、奪還しようとするだろう。
今でさえ、それを目的として色々考えているみたいだし。
セイヤは今、悔しそうに下唇を噛み、拳を強く握ってる。
爪がくい込み、血がぽたぽたと流れてる。そして、声には出さずに、僕へと伝えてきた。
『た す け て く れ』
こんな事を言われて、こいつを放っておくほど僕は落ちぶれてなんていない。
何かがあるんだ。セイヤを縛る何かが。
道満はセイヤに何をしている。
何を埋め込んだんだ。
陰陽術か、精神的ななにかか。
それが分からなければ何も出来ない。
『っ、なっ!?』
いきなり掴んだかと思ったら、地面へと落としただと…………。
いきなり、なんだよ、痛いじゃん!!
キッと見上げると、悲しげな瞳を見下ろしてくる。そして、僕を踏みつけようと足を上げた!? なんでなのさ!!
鼠の跳躍力を活かし、その場から横へと跳び回避。
道満に見つかったのか?
でも、晴明との一戦に集中しているみたいだしそれはなさそう。
なら、なぜ、セイヤはいきなり僕を殺すふりをし始めた。
今度は僕ではなく、刀を地面から抜き取り雨燕に刃を向けようとしている。
雨燕はその殺気に気づき、目を細め彼を見つめた。
「若造よ。忘れてはいないと思うが、忠告をしておこう。俺の式神はまだ──生きているぞ」
その言葉の意味って…………。
セイヤの背後に、鬼熊。
気づいたセイヤが振り向いたが、涎を垂らし鋭い爪を振り上げている。避けられない。
「っ!」
避ける事は諦め、セイヤは刀で振り下ろされた爪を防ごうとすっ──いや、鬼熊の力を舐めているのか!! 防げる訳がないだろう!!
――――ガキン!!
「ガッ…………」
鬼熊の力に普通の刀が耐えられる訳もなく、嫌な音を立て簡単に折れた。
避けきれなかったセイヤの胸元から腹部にかけて切り裂かれる。
血が溢れ、鉄の匂いが鼻につく。
痛みで顔を歪め、歯を食いしばっていた。
このままじゃセイヤが死ぬ。
僕的には特に構わないけど、優夏がこれを知ってしまえば、僕の体で何をするか分からない。
いや、こいつは救いを求めていた。
そんな彼を、僕はここで見捨てるのか。
……もう、後の心配をするのはやめよう。
今ここで死なれてしまう方が後味が悪い。
半透明の姿になり、地面に倒れ込んだセイヤに走る。
鬼熊がトドメを刺そうと振り上げられた手は、僕が前に立った事により止まった。
『鬼熊、悪いけど、その振り上げた手を下ろせ』
「なっ、闇命か? いや、しかし……」
雨燕は思った通り、いきなり半透明の僕が現れ困惑している。
晴明の方に目線を向け、その後僕を見た。
『今、あんたが納得いくような説明をする時間はない。とりあえず、鬼熊を御札に戻せ』
「なぜだ。今お主がやっている事は、我々安倍家への反逆とみなされてもおかしくは無い。自分が何をしているのか分かっておるのか」
『分かってるよ。でも、理由もなくこの僕がこんな奴を守ると思ってるわけ? というか、守ってるわけじゃないから。勘違いしないで』
守ってるわけじゃない。守るわけが無い。
ただ──
『今ここでこいつに死なれたら、優夏がうるさいんだ。だから、今すぐ鬼熊をしまえ、雨燕!!!』
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