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創り人の箱庭  作者: サボ
第一章
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1-22『呼び声』

第一章

第二十二話

『呼び声』



 暗い。

 いや、暗いっていうか、黒い。

 目を開けているのに視界を塗り潰すのは黒一色で、自分が本当に瞼を持ち上げてるのかすら自信がなくなる。

 何度か瞬きをしてみた。

 それでもやっぱり、黒は黒のまま。

 足を踏み出してみる。

 地面を歩く感触があった。

 だけど、進んでる実感はない。

 足の裏にぺたぺたと伝わってくる感触はあるのに、目の前が黒いだけなせいか、一歩も進んでないような気がした。

 それでも、先に進む。

 今誰かに『どうして進むんだ?』って訊かれたら、きっと答えられない。

 巧く頭が回らないんだ。

 それでも、そうして進んでいたら、不意に視界の片隅に、白い何かが浮かんで消えた。

 なんだろう、と思って視界を巡らせながら歩き続けるうちに、その白い何かは次第に増えていく。

 真っ黒に塗り潰された視界に、下から浮かび上がってくるような、上から降ってくるような。

 その白いものは、文字のような、記号のような……よく、判らない。

 頭にぼんやりと霞がかったみたいになっていて、巧く像を掴めなかった。

 気をしっかり持とうっていう気持ちも浮かばなくて、ただぺたり、ぺたりと足を進める。

 進んでいる間に周りに浮かぶ白いものが少しずつ増えて、壁の模様みたいになった。

 まあ、動いてるんだけど。


『行っておいで』


 不意に聞こえた、誰かの声。

 誰の声?

 ぐるりと辺りを見回してみても、誰の姿も見えない。


『行っておいで』


 それでも聞こえてくる声は、何処から聞こえてくるのかも、性別もよく判らなかった。


『見付けておいで』


 何を?

 何を見付ければいい?


『そうして』


 そうして?


『戻っておいで』


 此処に?


『教えておくれ』


 何を?


『さあ』


 待って。


『行っておいで』


 待って。

 待って。

 貴方は私を知ってるの?

 自分でさえ、何ものであるのか判らない私のことを。


 手を、伸ばしてみたけど。

 何も掴めなくて。

 何も見えなくて。

 ただ。

 ただ。

 湧き溢れる白い何かに埋め尽くされた。





「まっ……!」

 自分の声で、はっとする。

 え、ええ、と?

 あ、あれ?

 何度か瞬きした先は薄暗くて、伸ばした手がぼんやりとしか見えない。

 うっすらとでも見えるだけ、さっきとは違う……って、さっきって、なんだっけ?

 ええと……一度目を回してから、それでもマダムのお店で軽食を頂きながらだらだらとお喋りして過ごして、いつの間にか結構遅くなっちゃって、帰ってきてすぐ寝て……うん、寝たんだ。

 今もベッドの上で、まだ窓の外から明かりが入ってきてないところを見れば、明け方にもなってない真夜中なんだろう。

 はあ、と息を吐いて、伸ばしたままだった手を握り締めた。

 多分、夢を見てたんだろう。

 内容はよく憶えてないけど、なんか真っ暗な場所で、誰かに何かを言われたような……。

「……なんだっけ……?」

 呟いて、首を振る。

 どう頑張っても思い出せそうにないっていうか、眠くて頭が巧く働かない。

 伸ばしてた手をもそもそと上掛けの中に入れて目を閉じれば、すぐにとろんと頭の奥がまどろみだす。

 よく思い出せない、だけど似たような夢を、前にも見たことがあるような……ああ、駄目だ。

 眠くて……考え事とか……無理……ぐう。



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