第一回建国祭執行会議<前編>
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*あらすじ:少し時は遡る・・・
遡る事一週間ほど前の夜、ギルレオン城の会議室にて会議が行われようとしていた。
その会議に出席する面子はかなり豪華、ロイド、ウルスラ夫妻に加え彼らの子どもであるライナス、リグ、ソーニャ、ラガルト、アリナの五人、そして騎士軍長であるリンダとギルレオンの客人であるリュートという堂々たるメンバーが勢ぞろいしていた。
尤もこの場には本来計十人いるはずであった。そしてその最後の一人がヘラヘラと笑いながら会議室に入ってくる。
「へへっ、すいません・・・」
「すいませんではないわバカモンがッ!!時間だけは守れとあれほど言っておるだろうが!!」
リンダが立ち上がりそう叱責を飛ばした。その行き先は魔法軍長ロメオ・アズリア、人を待たせた事に対して一切反省の色を見せないその態度がリンダの堪忍袋をちょん切った訳なのだが、実際彼はその事に対して微塵も申し訳無いなどと思っていない。
そして彼はそういう人間なので仕方ない、リンダ以外の人間はそう考えて彼の更生を諦めてしまっているのである。尤もリンダとてこの態度を改善出来るなどとは考えていなかった。それでもなお挫ける事無く説教を続けているのは彼なりの理由があるのだが、それを知るのは彼と彼の家族だけの限られた範囲であった。
「ロメオ、貴様良い加減にしろよ?」
「はいはい、次から気を付けますよ」
「こいつ・・・」
「まぁその辺にしておけリンダ。そいつの人間性はカス故いくら頑張った所で無駄であろう」
「・・・確かにこいつはクズでしたな。場の空気を乱してしまい申し訳ありません」
「えっ?そこまで言う?」
ロメオが悲しそうにそう言うが誰一人として擁護しようとしない。ロメオの人間性がカスでクズというのがこの場にいる者たちの共通認識だったのだ、現にこの面子の中でも飛び切り慈悲深い精神を持つライナスとアリナですら我関せずと視線を落とす始末であった。
「では会議を始める。執行委員長を決めるまでは我が進行を務めさせていただこう」
ロイドがそう厳かに宣言する。
今回の会議の内容は今までのように鬼気迫る状況、例えば魔人襲来だったりと言った一刻を争うようなものではない。否、必ずしもそうという訳では無いのだが、少なくとも直ぐに手を打たなければ何百何千と言った尊い命が失われる様な深刻な事態を引き起こす事は無いだろう。要は比較的平和な会議である。
「さて、それでは早速執行委員長を決めていこうか。ここに筒が」
「すいません、その執行委員長というのは?」
「あぁ、説明して無かったな。ギルレオン建国祭執行会議の取り纏めをする役職だよ」
「え?それを今から決めるんですか?」
「うむ、執行委員長は代々クジで選ばれてきたのだ」
リュートの発した問にそう返すロイド。
今回会議場に豪華なメンバーが集った訳、それは二ヶ月後に迫るギルレオン建国祭を実行、成功させる為であった。
そしてそのためにはその下準備である会議を取り纏める者が必要だ、団結無くして成功などありえないのである。そしてその会議を取り纏める役職が執行委員長であり、その役職を決め、建国祭のテーマを決めるというのがこの会議の目的であった。
尤もその役職は代々クジで選ばれているらしい、かなり重要な役職なのにだ。
「なんだってクジなんかで・・・」
「まぁ直ぐに分かるさ」
「直ぐに?」
「うむ」
リュートが思わず漏らした問に肯定の意を示すロイド。そして会議室にいる皆に声を掛けた。
「クジを引く前に聞いておこう。この中に自分が委員長になりたいと立候補する者はいるだろうか」
ロイドの問いかけが会議室に響き渡る。然しその発言に何らかの反応を見せる者は誰一人としていない。簡単な話だ、建国祭執行委員長は死ぬほど面倒臭く、大変大きな責任が付き纏う役職だからだ。
「な?誰一人として執行委員長をやりたい者などおらんのだ。だからクジでも使って抽選でもしない限り一生会議が終わらないという訳なのだよ」
「なるほど。その執行委員長とやらはとんでもなく面倒臭い役職みたいですね」
「それに関しては昨年執行委員長だったアリナに聞いてみると良い」
ロイドがアリナに目配せし発言を促す。そしてアリナはそれに首肯で答え言葉を発する。
「執行委員長の主な役職は五つ。一つ、建国祭に当たって使用する土地の計算とそれに掛かる費用の算出。二つ、その土地で使用する食料や材料の管理運搬の計画立案とそれに掛かる費用の算出。三つ、建国祭を確実かつ安全な運営を確保するために必要な人員配置の取り纏め、そして彼らに支払う費用の算出。後の二つは建国祭を行うために必要な会議の取り纏めと、その建国祭で行うその他の催しに係る支出の計算が主な役職です。そしてこの役職は他の仕事と併用、例えば私であれば習い事の合間合間に行う必要があって大変でした。私の場合はラトに手伝っていただきましたが、それでも執行委員長就任中はほとんど不眠不休で働く必要がありましたわ」
「それはまた大変だな」
「ほんと大変、二度とやりたくないです」
「はははっ、今年はハズレくじを引かないことを祈るよ」
「それは大丈夫。執行委員長はクジで選ばれますが、前年当選した者はそのクジの抽選から外れますの。つまり昨年執行委員長だった私が今年も執行委員長になることは無いという訳です」
「なるほどね」
アリナの発言にそう答えたリュート。そして彼女の説明が終わったそのタイミングでロイドが再び会議を進行させる。
「では早速クジを引いてしまおうか。所でリュート殿も抽選に参加されますか?」
「御免です、絶対」
「承知した。では私が紙を一枚引き抜いて」
「ロイド、ちょっと待ちなさいな」
会議室に響く静止の声。その出処はギルレオン王国の王妃ウルスラ・ギルレオンだ。
「ウルスラか?何か問題でも?」
「あるわ。その紙の引き抜きはリュート殿にやってもらおうと思ってね」
「いやいや、リュート殿の手を煩わせるわけには」
「え?そのくらい問題無いですよ?」
「いやしかし・・・」
「ふん、ロイドは昔から狡賢いからね。大方紙を一枚引き抜くという名目でその筒の中を覗き、ハズレくじの場所を把握しようとしていたと見た。まぁ場合によっては意味も無くなるだろうけど、知らないよりかはマシだもの」
「くっ」
ロイドが悔しそうにそう漏らす。そしてその漏れ出た声は先程ウルスラが言っていたことの肯定となってしまっていた。
それ故次の瞬間ロイドに降り掛かるのは軽蔑の視線である。それは彼の子どもたち五人はもちろんの事、ギルレオン軍の軍長である二人でさえも例外ではなかった。
「あらあら図星だったみたいね。というわけでリュート殿、執行委員長と書かれていない白紙の紙を引き抜いてもらえるかしら」
「分かりました」
「ありがとう。ほらロイド、早く渡して」
「くっ」
悔しそうな表情のロイドから筒を受け取ったリュート。
執行委員長を決めるクジのルールは頗る簡単だ。筒の中には紙が十枚入っており、その内の一枚だけ執行委員長と書かれている。そしてクジを引く順番もじゃんけんの勝者順で決めるため完全にランダム。
かなり重要な役職の癖にかなり適当な決め方なのだが、それを知るのはこの場にいる数人のみであり、建国祭に参加する旅行客や庶民の皆様の知る所では無かった。
「引き抜きました。これで中にある紙は九枚です」
リュートが紙を引き抜きそう宣言する。そして筒は再びロイドの手元へと戻った。
「では抽選を開始しよう。じゃあアリナ」
「分かりましたわお父様」
アリナがそう返事をし椅子から立ち上がる。
「それではじゃんけんを始めます。私に勝った人から好きな番号を選んで下さい。二人同時に勝った場合は、その当事者同士でもう一度じゃんけんを行い順番を決めて下さい」
皆がアリナの発言に頷いた。そしてそれを見た彼女がじゃんけんを始める。
「最初はグー、じゃんけんっ」
「「「「じゃんけんっ」」」」
「グー!!」
出された手はグー。そしてそれに勝ったのは二人、ライナスとロメオだ。
「おっと、どうやら私達は気が合うみたいだね」
「ふむ、臣下としては大変嬉しいお言葉ですよ。ですが私執行委員長だけは死んでも嫌ですので今回の勝負は絶対に勝たせてもらいます」
「勝った所でクジを引く順番を決まられるだけなんだけど・・・、まぁ良いや。じゃあ行くぞ?」
「はい、どうぞ」
そう返すロメオ。そして決める内容の割にはあまりにも熱すぎるじゃんけんが始まった。
「「最初はグー、じゃんけんっ」」
「グー!!」
「チョキ!!」
勝者はグーを出したライナス、拳を強く握ってガッツポーズをした後希望の番号を口にした。
「私は七番で。七は縁起が良いからな」
「あれ?本当に良いんですか?」
ライナスの希望は七番であった。だがそこに何か思う所でもあったのかロメオがそう問いを発した。
「何がだい?」
「いや、本当に七番で宜しいのですか?」
「構わないよ。俗信は実績があるからこそ広まってるんだから」
ロメオの問にそう答えるライナス。そしてそんな彼の意思を察し、先程の発言が撤回される事が無いことを悟ったロメオが不敵は笑みを浮かべた。
「では私は一番を。何てったって一番当たる確率が低いですからね」
「え?」
「おや?なにか?」
「いや、なんでも・・・」
確率をかじっていたリュートが思わずと言った様子でそう漏らしていた。
然しその理由に気が付かなかったロメオ、その後クジを引く順番は順調に決まり、執行委員長を決めるくじ引きが行われた。
次の投稿は四月二十七日水曜日です。




