幽冥城へ
エイプリルフールですが特に何もありません。
*あらすじ:ペルティーダの金属加工店へ向かいました。
金属加工店で用を済ませた俺達はルーに念話で連絡を取ることにした。別れてからそれなりの時間が経過しているので、ルーの方も用事は済んでいるはずだ。
『ルー、連行は終わったか?』
『ちょうど終了した。そっちは?』
『こっちもちょうど終わった所だ』
向こう方も用事が済んでいたようで一安心である。色々イレギュラーは発生したがとりあえず解決させられて良かった。
『じゃあ今からそっち行くけど、お前は今どこにいるんだ?』
『ペルティーダ城の前だ。場所は分かるか?』
『あのでかい建物だろ?分からない訳がない』
ルーの住むペルティーダ城は街の外からでも見えるほどの巨体を有している。螺旋を描く巨塔を中心に築かれた白亜のそれはまるで一種の芸術品のようだった。
『分かってるなら良い。俺はそこにいるからゆっくり来てくれ、焦る必要は無いぞ』
『了解。じゃあまた後で』
そう言って念話を切る俺。急ぐ必要は無いとの事なので、俺達はペルティーダの街並みに目移りさせながらペルティーダ城へ向かうことにしたのだった。
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「よぉ、どうだった」
城の前で腕を組み俺達を待ち構えていたルーが、俺達の姿を補足するや否やそう聞いてきた。
「ちゃんと返してきたぞ。場所は・・・」
「待て、分かるぞ。金属加工店だろ」
マジか、ルーがニヤニヤしながらそう正解を言い放つ。
このにやけ顔は本当に癪に障るが、一体どうして分かったんだろうね?
「何で分かったんだよ」
「ラベンダーの匂いがするからな。あそこの花の匂いは強力なのだ」
俺の質問にルーがそう答える。あの花の匂い、結構強力だとは思ってたけど染み付くほどとは思わなかった。行き着く道中でやたら人に見られると思ってたけどそういうことだったんだな。
「まじか、そんなに強力だとは思わなかったよ」
「ははっ、俺もあそこの匂いをつけて帰ったせいで、嫁達に浮気してたんじゃないかと勘違いされた事がある」
「ふん、勘違いじゃなくて事実だろ?」
「失礼な。姉ちゃんに送るプレゼントを」
「してんじゃねぇか!!」
やっぱな、こいつはこういうやつなんだよな。上げた評価をどこかで下げなければならない男、それがルーという人物なのだ。
「カカカッ、まぁ言葉の綾というやつだよ。それじゃあ揃ったことだし魔法陣へ向かうとしよう」
「だな、そういえばサノスって置いて行ったほうが良いか?」
「ふむ、まぁ連れて行く事に問題は無いだろうが置いて行った方が良いかもな。あいつは好奇心旺盛だからだる絡みされるのが目に見えてる」
「まぁ確かに」
サノスは結構特殊な種族のため、フェルシアに会わせると根掘り葉掘り聞かれそうな気がするのだ。そしてその標的は最終的に俺に向かうことが容易に予想できる。
という訳で俺たちはサノスをペルティーダに残し幽冥城へ向かったのだった。
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「お二方、ようこそいらっしゃいました」
魔法陣から目覚めるとユイが懇切丁寧な態度で出迎えてくれた。
相変わらず美しい仕事ぶり、でも魔王就任に際した宴会でこの人の事を結構知ってしまったんだよね。そしてその知識を踏まえた上でこの仕草を見るとどうしても吹き出しそうになってしまう。
「よぉユイ、前の宴会以来だな」
「はい、お変わりなさそうで何より。それで、今回のご要件は?」
「あぁ、フェルシアに用があるんだよ」
「かしこまりました。フェルシア様は会議室にいらっしゃいます、どうぞ私の後ろに」
そう言って歩き出したユイについていく俺達、そして会議室の扉が開かれた。
「やぁユウキ、僕を待たせるなんていい度胸じゃないか」
そこにいたのは肘を付き俺達の方をすっと見つめるフェルシアの姿である。
中々魔王らしい風貌で、久しぶりに気圧されてしまった。
「ふん、よく云うぜ。お前に取ったら大した時間じゃ無い癖にな」
だがその雰囲気に屈することなく、肩を竦めながらルーがそう苦言を呈する。そしてそれを聞いたフェルシアは面白そうに笑った。
「ま、その通りだわな。しかしあの増長野郎がここまで大口を叩けるようになるとは思わなかったよ」
「チッ、蒸し返すんじゃねぇ・・・」
「ハハハッ、くだらない舌戦でもまだ君に負けるつもりはないさ。それでユウキ、ここに来たってことはキルクルス三国と交渉は済ませたってことで良いのかい?」
「おう、済んだ」
「ふむ、じゃあユイ、紙を持って来てくれ」
「かしこまりました」
丁寧な動作で腰を折りユイが紙を取りに行く。
ちなみにルーは書斎に様があったようで、ユイが会議室を出ると同時に彼も部屋を出ていった。何でもソーンについての情報を集めておきたかったらしい。『あそこの書斎には何でもあるからな。コールの収集能力には頭が上がらないぜ』とルー談、彼女を上回る才媛はそうそういないとのこと。
「紙をお持ちしました」
「悪い」
そしてユイも紙を取って帰って来る。今はフェルシアさんの後ろに控えていた、まるで存在感を感じさせない精錬された佇まいである。
そして紙を受け取ったフェルシア、そのまま俺に対して質問を開始した。
「まずは領土について。どこになった?」
「ショクチェンドゥとギルレオンの国境付近にある不帰の森だ。場所は分かるか?」
「当然分かる。で、国の名前は決めたのか」
「セキモで頼む」
「了解した。じゃあ新たなる魔王ユウキが加入、その領土はキルクルスの不帰の森ってことで良いか?」
「構わない。ただ名前はリュートで公開してほしい。普段はこっちを名乗る予定だからな」
「分かった」
フェルシアがそう言って同意する。リュートという名前は珍しくは無いそうなので、魔王と同一人物だと疑われる可能性はないそう。基本的に魔王は人類に危険視されているため、面倒事を避ける目的で人の街では偽名を使っている魔王も多いらしい。
「じゃ、そういうことで」
「分かったよ。で、立ち上がってどこに行くんだ?」
「コールにこの事を話してくる、だからちょっと時間がかかると思う」
「了解、待ってるよ」
「うむ、じゃあユイ、リュートにお茶を持ってくるついでに話し相手になってやってくれ」
「承知しました」
その返答を聞いてフェルシアも部屋から出ていった。
そしてそれを見たユイが口角を三日月のごとく釣り上げる。満面の笑みだった、本当に嫌な予感がした。




