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とある魔王の無双譚  作者: azl
諸外国との交流
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チョウアンにて

 いいねありがとうございました。何らかの形で見てもらえていることが分かると大変な励みになります。


*あらすじ:チョウアン城向けて移動中・・・。

 チョウアン霊峰国はイウラシア大陸の持つ長い長い歴史の中で、何時の時代においてもその中心にいた古代から続く巨大国家である。東にある覇権主義国家ソーン大帝国に飲み込まれることも、戦乱において分裂することも今までに一度も無い、言うなれば不変の国家とでも称すべき国であった。イウラシアの東側とは対極に位置する歴史の流れの中にチョウアン霊峰国は置かれていたのだ。

 無論不変とは言え上位層の腐敗が進むこともあった。だが大抵は二度と犯意を翻されることの無いよう徹底的に叩き潰されている。財産は全て差し押さえ、土地も他の貴族へと分配される。そしてチョウアンの誇る情報部の収集能力は凄まじいものであり、いくら隠蔽を尽くそうとも結局は無駄に終わるのがオチなのだ。


 だからその監視網を潜り抜け、古代から現代まで存続してきたチョウアン二大貴族の隠蔽能力は凄まじいものとなっている。上部では清廉潔白を演じているが、裏側では果たして・・・。

 いずれにせよその超上位層はチョウアンからしてみれば目の腕のたん瘤とでも言うべき物となっていた。不正の欠片や綻びを見つけても、その情報を証拠として調査に踏み出した所で粗を見つけるのは非常に難しい。疑わしくは罰せずの原則に則って中々解体に進みだせないのが現状なのであった。


 とはいえ彼ら貴族達がいなければチョウアンという国が成り立たないのもまた事実である。

 有名な所でいえば酒や紙、特に酒はワインやビールといった多種多様な物が生産されており、そこから得られる収益もずば抜けて莫大な物となっていた。ただしこの酒の生産はほとんどチョウアン二大貴族の独占状態となっている。そこを何とかしたいと考えているチョウアン王朝ではあるが、中々に上手くいっていないのが現状なのだ。


 そして残る下級貴族の領土で生産されているのが野菜や果実といった食料だ。これらの収穫量は凄まじいものであり、自国であるチョウアンへの供給はもちろんのこと、隣国であるペルティーダにも輸出されていた。

 そしてこの食料こそがチョウアンの生命線だ。飢餓を防ぐのはもちろんのこと、ソーンに対する抑止力であるペルティーダを繋ぎ留められている要因がこの食糧なのである。

 ペルティーダは砂漠の国で、食料を自給する手段が無いに等しい。だから約五百年ほど前、彼の国の軍事力と引き換えに食料を提供する契約を結ぶ事が出来たのだ。

 そしてその食糧が基でペルティーダ初代王は血を血で洗う戦乱の世を制定することが出来たのだが、それはチョウアンには関係無い話であった。


 不変の国チョウアン、その繁栄は凄まじくイウラシアの中で最も栄えていると言っても過言ではない。しかしソーンが戦禍を広げ行く現代において、その基盤が少しずつ傾きつつあった。



「見えて来ました。あれがチョウアン城です」


 馬車の旅路も終わり、ベア王の指差す先にチョウアン城が見えてきた。

 山を縫うように築かれたその城は、豪華絢爛というよりも質実剛健と称すべき見た目をしていて、俺のイメージとは少しかけ離れている。


「あれがそうですか。馬車がキラキラなのでお城もキラキラしてるのかと思ってました」

「それがそうでもなくてですね、実はあの城は戦国時代に築かれた要塞を再利用したものなんです。とはいっても内装は中々豪華だと思いますよ」


 俺の言葉にそう返すベア王。

 どうもあの城はチョウアンがここまで巨大になるに至った戦国時代の要塞を再利用した物らしい。言われてみると確かに防衛向きの構造をしている気がする。


「後はこの山道を登るだけです。お忘れ物の無いようにお願いします」

「分かりました」


 山道とはいってもショクチェンドゥとは違って滑らかな形状をしている。だから別段酔ったり体を痛める事無く、巨大な石門を潜り抜けチョウアン城下町へと到着した。


「では我々はこの野盗達を然るべき場所へ連れて行きます」

「分かった、よろしく頼む」

「「はっ」」


 そしてそこに到着するや否や、二人の御者さんは捕えた野盗を引き摺りながら何処かへと連れて行った。

 まぁ多分牢獄だろうね、有用な情報が掴めると良いな。


「では城の方へ」


 ベア王の呼びかけに俺達は首肯で答え、彼の後ろに付いて行く。

 事前に聞いていた通りチョウアンの城下町は凄まじいまでの発展を遂げていた。

 特に大衆向けの娯楽がその発展を顕著に表している。街の酒場には溢れんばかりの人がぎゅうぎゅうに詰め込まれており、酔っ払い達の騒ぎ声が街の中に木霊していた。


「確かチョウアンは酒と紙で有名でしたね」

「おお、よくご存知で」

「うむ、チョウアンの酒は美味い事で有名なのだよ」

「そういや宴会の時に持って来られた酒がチョウアンの酒だったな。今思えばチョウアン産が一番美味かったからなのか」


 思い出されるのは魔王就任の際に行った宴会である。

 実はあの時結構な量の情報を集めていたりする。まぁ一々話してたらきりがないので必要に応じて話すとしよう。


「それは有難い話ですね。さて、そろそろ城に着きますよ」


 離れた所から見ても中々の大きさだったがチョウアン城だが、近くで見るともっと大きかった。まさに不落の要塞って感じだ。


「さて、城に着きましたのでまずは」

「よぉ、無事そうで何よりだ。客人を置いてどっかに行っちまった国王陛下」


 そして俺が感嘆の想いに浸っていたその最中、俺達の方にそんな声が掛けられた。

 その声の出処はチョウアン城の中、そしてそれは何処かで聞いた事があるもので・・・。


「ル、ルー。昨日の夜ぶりだな、元気してたか?」

「おい、反省してねぇなテメェ!!」

「ははは、してますとも」


 ベア王に声を荒げるのは魔王の一柱”百獣の王(ブレイブキング)”ルーだった。ライオンみたいな毛も相まってまさに百獣の王って感じの彼だが、その通り名にふさわしくチョウアンの王相手に一切怯まない中々不遜な態度である。

 でも多分仲が良いんだろうね。いくら肝が据わってても仲が良くない人にはこんな態度は取れないだろうから。


「んで、そちらの方がギルレオン王でいいのかな?」

「その通りです。私の名はロイド・ギルレオン、本日の会談が良い物となることを願っています」


 おっと、ロイド王が堅苦しい言葉遣いをしている。なんだかんだ言って久しぶりに見たかもね。

 そしてその言葉を聞くルーだったが、まぁ予想通りというかなんというかそんな態度が苦手だったらしく、少し微笑みながら普段通りにしてほしいと指摘した。


「はは、堅苦しいのは無しにしようぜ。俺ってこんなだから中々難しいんだよ」

「・・・ではそうしようか」

「おぉ、良い感じだなロイド王。そして・・・」

「久しぶりだな、ルー」


 ルーの視線がこっちに向いたので簡単に挨拶しておいた。堅苦しいのは苦手って言ってたし、魔王間は皆平等というルールがあるので固い口調はよしておく。


「あぁ、久しいな。元気そうで何よりだ」

「まぁな、そう簡単に体調は崩さないよ」

「はは、だろうな。んでそこの二人は王様の護衛かい?」


 俺とのやり取りを済ませたルーの視線が俺達の後ろに控えるサノスとリンダさんに移った。その視線は柔らかげな発言とは違い、彼ら二人の実力を値踏みするような物である。


「初めましてルー王。私の名はリンダ、普段はギルレオン騎士軍長を務めさせておりますが、本日はロイド王の護衛として参上いたしました」

「私の名はサノス。リュート様の護衛です」


 だが流石というべきか、そんな視線に屈すること無く二人は堂々とした態度でルーに挨拶を行った。俺ならちょっときょどりそうだけど、やっぱこの二人は凄いね。


「ははは、俺様相手に怯まないとは中々やるな。それに二人とも中々の実力者の様だし、いっぺん手合わせしてみてぇな」


 二人の挨拶を聞いて朗らかにそう返すルー。

 会談前の挨拶も簡単に済ませ終わった。それじゃあいよいよ会談・・・、って思ったけどそれはちょっと早かったらしい。


「今日の会議は会議室で行う予定ですが、まずは来賓用の食堂で昼食を取りましょうか」


 そう言えばもうそんな時間だった。退屈を覚えないと時の流れは早いね。


「おう、じゃあ案内してやるよ。付いて来な」


 そしてこの男は何故人の城を我が物顔で案内しようとしているのだろうか。ベア王に対する態度と良い仲は結構良いんだろうな。


「ここ、俺の国の城なんだけど」

「かっかっかっ、俺はお前よりもこの城との付き合いは長いぜ?こう見えて数百年は生きてるからな」


 そうにやりと笑ったルー。そう言えば獣人は寿命が長いんだったな。二十代前半くらいに見えるルーだけど、実際は相当長い時を生きていたようだ。


「ま、この場はお前に花を持たせてやるよ。とっとと案内してくれや」

「はいはい。それじゃあ皆様、食堂へ案内しますのでしっかりついて来て下さい。迷ったら少し大変ですので」


 ベア王の発言に頷き返す俺達。その案内に従い迷うことなくチョウアン城の食堂に着いたのだった。

 次の投稿は二月二十八日の二十一時です。よろしくお願いします。

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